Market Hack

ロンドン銀行間取引金利の上昇とドイツ銀行救済について

最近、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR=「ライボー」と発音します)がじりじり上昇しています。

1

LIBORは銀行同士が短期の資金を融通し合う際の金利であり、金融機関が相互不信に陥っていないか? のひとつのバロメーターと言えます。

このところドイツ銀行(ティッカーシンボル:DB)の経営危機が伝えられていることもあり、てっきりそれが銀行間の貸借金利の上昇の一因になっていると思う投資家も居るでしょう。しかし事情はもう少し複雑です。

実は10月14日からマネー・マーケット・ファンド(MMF)を巡るルールが変わります。これは金融危機が連鎖することを防ぐことを目的としたルール改変です。具体的には「緊急時にはMMFは解約をストップしていい」ということがルールに盛り込まれます。

これをイメージしやすいように最近の例で示すと英国でEU離脱の国民投票が実施され、離脱派が勝利した際、不動産関連ファンドに解約が殺到し、それらのファンドが相次いで解約請求に応じることをストップする事件がありました。

あれと同じような感じで、MMFに解約が殺到したら、それを拒否できるようになるわけです。

一見すると、これはルールの改善どころか改悪のように見えます。なぜこのような「スピードバンプ」を設けるのでしょうか?

その理由は、これまでは「MMFはいつでも解約でき、流動性が極めて高い」という先入観があったので、余資を100%、MMFで運用することが多く、それが咄嗟のときにMMFへの解約が殺到することを招いてきました。ところが「いつでも解約できるとは限らないんだよ」という釘を刺されれば、余資の100%をMMFに突っ込むのは無謀ということになるわけです。

このようにMMFの魅力が減るとファンドへの資金の流入も若干減り、CD(譲渡性預金)やCP(コマーシャル・ペーパー)を発行することで短期市場から資金を調達することが少しやりにくくなるわけです。

このやりくりが少し難しくなっていることがLIBORの上昇の主な原因です。

ただ、結果としてLIBORが上昇しているということは警告シグナルと取られても仕方ないわけで、今後の動きには注意を払う必要があると思います。

欧州では今後、イタリアやドイツで選挙があるし、英国のEU離脱も「乱暴な離脱」になるリスクが言われ始めています。

先日、メルケル首相が「ドイツ銀は、救済しない」と言ったのは選挙前の政治的配慮に基づく発言で、驚くに値しないと思います。

それでは緊急の際に、ほんとうにドイツはドイツ銀行を救済する必要は無いのか? といえば、当然、救済する羽目に陥ると思います。なぜならドイツ銀行はドイツ産業界に資金を供給する重要なパイプ役を果たしているからです。

ただ、政府によるベイルアウトの必要性を認めるタイミングは、今じゃないということです。

インヴァスト証券OPENセミナー「FOMCのまとめと大統領選挙に向けたETF戦略」開催のお知らせ

pic01

インヴァスト証券主催OPENセミナー「FOMCのまとめと大統領選挙に向けたETF戦略」は次の要領で開催されます。

開催日:2016年9月28日(水)
時間:夜8時~9時半
講師:広瀬隆雄
参加費用:無料
参加資格:どなたでも参加できます。これを機会にインヴァスト証券に口座を開設して頂けると嬉しいです。
口座開設:こちらのリンクからどうぞ

当日の参加方法: こちらのリンクからどうぞ


なおインヴァスト証券ではETF GateWayというオウンドメディアを展開しています。ETFに特化したサイトとしては日本でナンバーワンだと思います。そちらもブックマークして頂けると幸いです。

マネックス証券主催「米国株月次オンラインセミナー」開催のお知らせ

1

マネックス証券主催「米国株月次オンラインセミナー」は以下の要領で開催されます。

開催日:2016年9月26日(月)
時間:夜8時半~10時
講師:広瀬隆雄
参加費用:無料
参加資格:マネックス証券に口座をお持ちのお客様に限定させて頂きます
口座開設:こちらのリンクからどうぞ

セミナー当日のログイン方法:こちらのリンクからどうぞ!

フェイスブックに対する広告主の不満が渦巻く中、アドバタイジングウイーク開催

今日からニューヨークでアドバタイジングウイークが開催されます。これは広告業界のウッドストックみたいなものです。

event_lrg_adweekny__V339566129_

しかし今回は開催前から波乱含みの様相を呈しています。

先週、フェイスブック(ティッカーシンボル:FB)が、FB上の動画に対するユーザーのエンゲージメントを大幅に過大報告していた事件が発覚しました。

具体的には、ユーザーが平均してどのくらい動画を視聴しているか?を計算する際、動画再生開始直後(=3秒以内)にその動画をスルーしてしまったユーザーを、平均を算出する際の分母から除外して計算していたことに気が付いたのです。

結果として、エンゲージしている視聴者だけを「選り好みして」抽出したことになり、数値が素晴らしいものになりました。

このエラーにより、過去2年間にわたり、動画平均視聴時間が60%から80%も過大に報告されてきました。

素晴らしいエンゲージメントをアピールすることで「動画広告を打てば、それが熱心に視聴される」という誤った印象を広告主に与えたわけです。

ただ今回の事件は過去の売上高の下方修正(リステートメント)などの経理上の問題は引き起こさないと思います。なぜなら現在の契約では3秒以上視聴された動画に対してのみフェイスブックが広告主に課金しているからです。

その意味で、今回の事件が足下のフェイスブックの業績に与える影響は、殆ど無いでしょう。

ただフェイスブック広告のエコシステム内では、大きな不満が渦巻いています。

一例として世界最大級の広告代理店、WPPのマーティン・ソレルCEOは「フェイスブックは自分の宿題の採点を自分でやるような行為を、すぐにやめるべきだ」と発言しました。

フェイスブックのプラットフォームはかねてから「秘密の花園」と言われており、サードパーティーが、公平な立場から広告のリーチを計測することが許されていませんでした。

フェイスブックはネット企業の中でも、とりわけ秘密主義の企業です。一例としてニュースフィードを検閲し、上位に来るニュースを自分の価値観に基づき取捨選択している疑惑が出ました。

この批判に応え、アルゴに変更したら、今度はデマがトレンディング・ニュースの上位に来てしまい、フェイスブックのアルゴのお粗末さがネット界で笑いものにされるという不祥事が起こったばかりです。

財務面ではフェイスブックの透明性はグーグルよりさらに低いです。なぜならグーグルならTACというデータポイントがあるため、ある程度、「裏が取れる」からです。

フェイスブックの場合、より多くの「いいね」を獲得した、より多くの「インプレッション」を獲得した……などの、本当に効用があるのかどうか、眉唾的なメトリックスに広告主は依存しなければいけません。

これは既存メディアにおける慣習と、かなりかけ離れています。アメリカの場合、たとえばテレビならニールセン、ラジオならアービトロン、新聞や雑誌ならビューロー・オブ・サーキュレーションという中立な評価者が存在します。

そろそろフェイスブックも、このような公正中立な第三者からの評価を受け容れるべきでしょう。

さて、冒頭で「これが業績に与える影響はない」と書いたのですが、中期的にはフェイスブック広告の単価が、今回の事件を契機に下がり始める可能性はあると思います。

これまでパブリッシャーは大きな予算を投入して、動画広告を製作してきた背景にはフェイスブック広告は良く視られてるという先入観があったからであり、もしその動画が視聴されていないのなら、お金をドブに捨てているのと同じだからです。

動画広告は、直ぐにトランザクションを促す場合もあることはありますが、主にブランド・ビルディングに利用されます。その意味ではテレビ広告に近いわけです。

インターネット広告の原点に立ち戻ると、グーグルが検索広告を最初に出したときは、広告を出稿した企業への問い合わせが殺到しました。つまり広告の費用対効果は、たちどころに分かったのです。

ところが今は、昔のテレビ広告と同じで、「みんながやっているから、自分も広告を出す」式の経営判断が多くなっています。

本来であれば「実際に販売促進に寄与したか?」が問題にされるべきです。

その点、世界最大の広告出稿主であり、ソフィスティケートされた広告のバイヤーでもあるプロクター&ギャンブルが「フェイスブック広告は、効果がいまひとつだったので、今後絞り込む」と発表したのは注目に値すると思います。

同様に日本で発覚した電通の不正問題にしても、結局、トヨタというソフィスティケートされたアド・バイヤーが「これはおかしい。効果がいまひとつだ」と疑問を挟んだことを契機として明るみになったわけで、これらの最終顧客に価値をデリバー出来ていないネット企業やエコシステム企業は、対価の下方修正を甘受するのは当然です。


ウォール街の株式引受ビジネスが過去20年で最低

ウォールストリート・ジャーナルのモーリーン・ファレル記者が「ウォール街の株式引受ビジネスの受入手数料が過去20年で最低になっている」という記事を書いています。

投資銀行が年初来、株式引受ビジネス(=これのことをエクイティ・キャピタル・マーケッツ、略してECMといいます)から得たフィーは僅か37億ドルでした。

その中でも特に低迷が激しいのは新規株式公開(IPO)で、今年はこれまでにわずか68社しかIPOしていません。去年の場合、9月22日までに138社がIPOしていたので、それと比べると大幅な鈍化になります。

IPOの手数料は調達金額の7%にも相当します。これは美味しいビジネスです。だからIPOの低迷は投資銀行にとって痛いです。

その一方で、ブロック・トレードの比率が上昇しています。

1

ブロック・トレードとは、まとまった株数を売り手(=これをベンダーと言います。機関投資家や既存の大株主などです)から投資銀行が買い切り、それを一般投資家へ再オファーするビジネスを指します。

通常、ブロック・トレードでは場が引けた後でブロックを買い取り、翌朝、市場が開く前までに買い取った株式をハメコミ終了していなければいけません。

昔は市場価格に対して7%とかの、ざっくりとしたディスカウントでブロックを買い取ることが一般的でしたが、最近はブロック・トレードも競争入札になっており、激しい競争のためディスカウント幅はどんどん小さくなっているそうです。

その場合、バランスシートが大きい、メガバンクの方が有利です。

下は年初来9月22日までの投資銀行フィー収入のランキングです。

2
(出典:ディーロジック)

ウォールストリート・ジャーナルの記事ではECMビジネスの低迷の原因として、市中金利が低いこと、ユニコーン企業に代表されるように、若い企業がなかなかIPOしたがらないことなどを挙げています。

しかしマクロ経済的な視点から見れば、小さな規模のIPOが低迷している一因はイノベーションの欠如と密接に関連していると思います。IPOで投資銀行が7%という高いフィーを取れる理由は、新技術や今迄に見られなかったビジネス・モデルなどの「説明料」という側面があります。これは新興国企業がアメリカで資金調達する場合、知らない国の経済のファンダメンタルズを説明する場合などにも当てはまります。

知識のギャップを埋める作業は、付加価値の高いビジネスです。

これに対してブロック・トレードは「いまさら説明する必要もない、すでに慣れ親しんだ企業や投資ストーリー」が存在することが、そもそもディールが成立する前提条件になります。だから自ずと引受け合戦は価格競争に帰着するというわけです。

「頭をつかえ! それが出来なきゃ、バランスシートを使え!」


僕も昔、そんな風に上司から檄を飛ばされたことを懐かしく思い出します。

なお低迷しているのはECMのビジネスだけではありません。債券のトレーディングのビジネスも、HFT(高速トレーディング)の登場やドッド・フランク法の施行により極めて不振です。

下はUBSが1990年代半ばに作った「世界最大のトレーディング・ルーム」ですが、凄惨なコトになっているのが判ると思います。







MarketHackについて
Market Hackは世界経済ならびにビジネス・シーンに関するニュース・サイトです
月別アーカイブ
免責事項
なお運営上、ここに書かれる意見には諸々のバイアスがかかっています。投資情報は利益を保証するものではなく、相場の変動や金利差により損失を生じる場合がございます。投資対象や取引の仕組み及びリスクについてご理解の上、ご自身の判断と責任においてお取引いただきますようお願い申し上げます。
BLOGOS
カテゴリ別アーカイブ
  • ライブドアブログ