Market Hack

マリファナ株の乱舞で「チャリンチャリン」と稼いでいる証券会社

このところ米国株式市場では大麻(マリファナ)株がワイルドに乱高下しています。そのボラティリティーで儲けている証券会社がカウエン(ティッカーシンボル:COWN)です。

同社は今年がちょうど創業100周年。つまりそれなりに歴史がある証券会社です。昔ながらの証券リサーチ、トレーディング、新規株式公開(IPO)の引受けを中心に据えており、2009年以降はラミアス(Ramius)を買収したことで資産運用ビジネスにも乗り出しています。

同社は以前、フランスの銀行、ソシエテ・ジェネラルの傘下でした。しかし2006年にスピンオフされ、今では完全に独立しています。

同社の調査部は900銘柄をカバーしており1年に8千回に及ぶ投資カンファレンス、ワン・オン・ワン・ミーティングをアレンジしています。

同社のトレーディングデスクは過去1年にのべ110億株の顧客注文を捌きました。つまり中小証券としてはかなりアクティブなトレーディングデスクを持っているという事です。

過去12ヵ月のディール件数(IPO、公募増資など)は121件で、これも立派です。

カウエンは歴史的にロッキードなどの防衛産業のリサーチに強いことで知られていました。それに加えてバイオテクノロジーも強いです。

他の証券会社が大麻という投資テーマを敬遠しているとき、カウエンは積極的にこの新しい分野を開拓し、マリファナ株では圧倒的な存在となっています。

同社の株式引受けフィーは2014年以降年間1~1.9億ドルで推移してきましたが、今年は上半期だけで1.4億ドル売り上げており、絶好調です。バイオテクロノジー株のIPOがその主因ですが、これからは大麻株も寄与すると思われます。

今年のコンセンサス売上高予想は9.13億ドルです。

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今年のコンセンサスEPS予想は$2.94です。2019年は$3.28です。

すると同社は来年のEPSに基づき僅か4.97倍の株価収益率(PER)で取引されていることになります。ちなみに他の証券株は平均11.4倍で取引されています。

さらに株価純資産倍率でみるとカウエンは0.7倍で取引されており、他証券の平均である1.3倍より割安です。


テスラのイーロン・マスクCEOが米国証券取引委員会から訴訟される 「420ドルでバイアウトを考えている」ツイートが原因で

テスラ(ティッカーシンボル:TSLA)のイーロン・マスクCEO米国証券取引委員会(SEC)から訴訟されました。

訴訟が提出されたのはマンハッタンの連邦裁判所です。

米国の証券法では上場企業の経営者が投資家を騙すような発言をすることを禁じています。

資金の出し手(サウジアラビアの投資家)と出資の確約を得ない段階で、ましてやディール条件すら詰めてない段階で「もう資金のメドは立っている」とツイートしたのはあきらかに嘘であるというのがSECの主張です。

SECの記者会見は東海岸時間の夕方5時からです。

【追記】
SECは以下の要求をしています。

1. イーロン・マスクは罰金を払う事
2. もしトレーディング益を得ていたのならそれを放棄すること
3. 上場会社の役員には就けない(→つまりテスラのCEOを退くこと)

【感想】
まず今回の被告はテスラではなく、イーロン・マスク個人であることを強調しておきます。またこれは民事訴訟(刑事訴訟より軽い)です。一部の報道機関が報じた「一般投資家が被った損を埋め合わせる(restitution)」という要求は訴状の中には無いと思います。

もしイーロン・マスクがテスラのCEOを退き、取締役にもなれないというのであれば投資家がいままで通りテスラを支持するかどうかは疑問だと思います。

加えてスペースXはゆくゆくIPOも視野に入れていると言われていましたが、イーロン・マスクがCEOである限り、IPOは出来なくなります。(非公開のままならCEOで居られる)

テスラはいま資金繰りが厳しいです。今回の起訴はテスラを相手取ったものでは無く、イーロン・マスク個人を相手取ったものです。だから直接関係ないです。しかしイーロン・マスクが係争中であれば投資銀行はテスラの社債や株式を引き受けることには二の足を踏むと思います。つまり資金調達の自由度が大きく狭まるわけです。

テスラの社債がどれくらい売られるか注目したいと思います。株式の方はアフターマーケットで-10%くらい下がっています。



「ブロックチェーンで世界を変える!」と意気込むブルックリンのエンジニアたちは「とんこつラーメン」によって駆動されている

前回の記事でブルックリンのブッシュウィックを紹介したら閲覧数が伸びたので、もう少しこのへんの話をします。

その前に「そもそもなんでコンセンサス(Consensys)に注目するの?」という点を、ちょっとだけおさらいしておきます。

我々は仮想通貨と聞くと直ぐビットコインとかHODLとかをイメージします。つまりドタバタとしたトレードの対象としての仮想通貨です。

でもブロックチェーン技術はそういう投資とはまた別の、イノベーションのキッカケとしての側面も持っているわけです。とりわけ仮想通貨のひとつ、イーサリアム(ETH)は「プログラミングできる仮想通貨」です。喩えて言えば「AppleⅡ」くらいの汎用性を持ったプログラミングがブロックチェーン上で可能になるわけです。

すると「これを使って、いろんな面白いコトができるよね?」という連中が出てくるわけです。様々な試みがそこから生まれているのです。コンセンサス(Consensys)は、インキュベーターとして、それらのプロジェクトを支援し、イノベーションを加速させようとしています。

昔ドブネズミの巣窟だったロフト(=倉庫)に、そういう志を持つエンジニアたちを一堂に会して、数十ものプロジェクトを同時進行でやっているわけです。そういう電気炊飯器みたいなムンムンした「蒸気」がニューヨークの中でもいちばん薄汚く寒々とした界隈であるブッシュウィックに充満しているというわけ。

この界隈には、そういうプログラマに加えて、ミュージシャン、俳優のタマゴ、アーチストなどのトレイルブレイザーな連中が住みついています。最近ではエッジーなBARとかもポツポツ出来ています。

どういうわけか、ブッシュウィックでは日本食レストランが幅を利かせています。たとえば「一蘭」。息子によると「ブルックリンでいちばんオーセンチックなラーメンを食べさせる店だ!」ということらしい。



まるっきり飾りっ気が無いところが、とてもブルックリンです。

もちろん日本食だけではありません。下は「ロベルタス」というピザ屋です。



思うに、アメリカ人の考える「COOL」と日本人の考える「カッコイイ」というのは、かなり隔たりがあると思います。

日本人はピカピカのアップル新本社とかFecebookの本社とかを「カッコイイ」と思うわけだけど、アメリカ人、とりわけ最先端のコーダー達はそういうのを「ダサい」と貶します。彼らはCypherpunksなのであり、Rebelなのだから、人知れぬ陋巷に深く潜伏し世界転覆を目指すことを最上とするわけです。

繰り返し言えば、いまごろシリコンバレーとかにノコノコ出かけてゆく奴は、時代に対する嗅覚が無いやつです。昭和なオジサン。それでは、ぜんぜん「荒野を目指してない」です。

COOLな連中はブルックリンに居ます。


シリコンバレーに「視察」と称して観光旅行に行く昭和なオジサンたちに告ぐ ブロックチェーン革命は荒涼たる「陸の孤島」の秘密基地で着々準備されている

皆さんはイノベーションがどんな場所で生まれるかご存知ですか?

それはたとえばこんな処で生まれています。



大恐慌時代に作られた、荷物を積み下ろしできる鉄製のローディング・デッキを備えた煉瓦造りの倉庫は、落書きだらけで、びっしりとビラやステッカーが貼られています。夜ともなればドブネズミが徘徊します。

ここはニューヨークの対岸、ブルックリンの中でもとりわけ僻地として知られるブッシュウィックです。ここにイーサリアムを使った様々なプロジェクトを支援するインキュベーター、コンセンサス(Consensys)の本拠地があります。ブッシュウィックは東ドイツからの貧しい移民がアメリカに来たとき好んで住み着いた街ですが、ニューヨーク首都圏で最も貧困が多い場所でもあります。

ロフトの中では剥き出しの梁の下、雑然と並べられたスチール製の折り畳み会議机に向かって沢山のコーダーがプログラムを書いています。それはオシャレとは無縁の世界です。

そしてこれが世界最先端のブロックチェーン革命の震源地なのです。

日本のサラリーマンは「視察」と称したご褒美旅行でシリコンバレーに来ます。そしてFacebookの本社の前の看板のところで記念撮影し、サンフランシスコのブルーボトル・コーヒーを味わい、大満足して帰国するわけです。本当に迷惑な連中です。

僕はテクノロジー・バンキングの牙城、H&QでIPOの仕事をした経験上、自信を持って言えますけど、プチブルの虚栄心を満たすブルーボトル・コーヒーみたいな場所からはイノベーションは生まれません。

いま新境地を切り拓いている連中は、たとえば「スワロー・カフェ」を根城としているのです。



この界隈では「ももSUSHI SHACK」、「SHINOBI RAMEN」などのレストランも人気となっています。

そもそもなぜブッシュウィックがブロックチェーンのメッカになったかといえば、それはイーサリアム・プロジェクトの共同創設者、ジョセフ・ルービンがここを活動の拠点としたからに他なりません。

しかしブッシュウィックがニューヨークでいちばん食い詰めた若者たちが集結するクリエイティブな街になっていることも大きな理由です。

なぜプログラマ、アーチスト、ミュージシャンたちはブッシュウィックを目指すのでしょうか?

その理由は、家賃高騰が続いているニューヨーク首都圏で、ここがいちばん家賃が安いことによります。

ブッシュウィックの付近はニューヨークでもいちばん交通の便がわるい「陸の孤島」と言われています。

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しかも唯一の地下鉄路線「Lトレイン」(上の路線図で灰色の線)は2019年4月から2020年秋まで改修工事のため閉鎖になります。

この改修工事は2年前からおおやけにされているので、マンハッタンに通勤する人たちはここを避けています。だから家賃が安いというわけ。

僕の上の息子は役者の卵ですが、安い家賃を求めて最終的に行き着いた先が、やっぱりブッシュウィックでした。いまはSkype英会話で生計を立てながらオーディションしたり舞台の脚本を書いたりしています。(写真は彼のインスタグラムから拝借しました)


1998年の亡霊 マリファナ株は文字どおり麻薬! 近寄らないで!

僕はことある毎に「今年の相場は1998年の相場を彷彿とさせる」ということを話してきました。

当時、アメリカはドットコム・ブームの真只中。アメリカ経済も好調でした。ドルは堅調で世界の投資資金は「アメリカへ、アメリカへ」と流れていました。

これは今日の状況に似ています。いまアメリカ経済は好調ですし世界の投資資金がアメリカへ集まってきています。

しかし1998年は恐ろしいdisruptionの年でもあったのです。夏にロシアがデフォルトし、いわゆるルーブル危機が起きました。

それとの対比で言えばこんにちそれに相当する新興国の危機はさしずめアルゼンチンとトルコでしょう。

結局、98年はLTCMというヘッジファンドの破たんを見ました。

ただポイントとしてはそれで米国株の相場が終わったのではなく、小型株への投機熱は一層昂ぶったという点です。

こんにちのアメリカ市場でも当時を彷彿とさせるチャラチャラした銘柄のオンパレードが見られます。その代表例が大麻(マリファナ)関連銘柄のティルレイ(ティッカーシンボル:TLRY)でしょう。

「A」が決算を出しMarket Hackの読者に注意を促した日。「B」が下の寄り前ツイートを発した日です。

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ティルレイはいまのところ医療用大麻しか販売してないので、売上高は「限りなくゼロに等しい」です。百歩譲って10月17日からカナダで解禁される娯楽用マリファナの市場がアナリストの楽観的な予想通りに実現したとしても、2020年(!)の売上高予想の87倍で取引されています。

普通、インターネット株でもPSR(時価総額対売上高比)で15倍くらいがギリギリの水準でしょう。だから87倍というバリュエーションがいかにクレイジーかわかろうというもの。

いずれにせよテクニカル・チャート的にはダメージが確定しました。いわゆるbroken stockです。近寄らないこと。



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