Market Hack

欧州連合のホームページへのハッカー侵入事件がはからずしてユーロという通貨の脆弱性を強調

elmundo
月曜日に欧州連合(EU)のホームページの一部が改ざんされる事件がありました。

今年からEUの議長国はスペインになりました。それをアナウンスするホームページの写真が上のスクリーン・ショットのようにコメディー・キャラクターの「Mr. Bean」にすり替えられてしまったのです。

もともとここにはホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ首相の写真がありました。

欧州の議長国は「輪番制」のような形式を取ります。本来どの国が議長国を務めてもEUの政策にバイアスがかかることはあってはならないのですが、実際にはバイアスはかかります。たとえばドイツが議長国のときはインフレ・ファイターであるドイツの好みが色濃く反映されるといった具合です。

さて、スペインはこのところ失業率19.3%という超スランプに悩まされています。EUの主要国の中でも最も弱々しいとされるスペインが議長国とあって、自ずと投資家はスペイン問題に以前より注意を払い始めています。その矢先にEUのホームページが愉快犯によって改ざんさたわけですから「ヤレヤレ、先が思いやられるな」と思った市場参加者も多かったのではないでしょうか?

「ユニクロ型デフレ」が怖いですか?Well, let me tell you...

池田信夫さんのブログはよくまあこれだけ次から次へと書けるものだと驚嘆するし、議論のクウォリティーの高さには全く脱帽してしまいます。

加えてチョッと「愚連隊」みたいなswaggerがあって、気に障ることを言うと「眼付けたな、コノヤロ」的にボコボコにやり込まれかねない威嚇的なフンイキすら漂っています(笑)。

で、最近、池田さんにボコボコにやり込められているのが浜矩子さん。池田さんは浜さんの主張を「ユニクロ型デフレ」論者としてその誤っている点を指摘しています。

僕は日本のことはよくわからないので、グローバルなパースペクティブをここで提示するにとどめようと思います。

まずユニクロのようなビジネス・モデルの企業が増えると:

「賃金という人の値段をたたき買いして、安売りが実現し、、、(中略)、、人の値段が無限に下げられる、、、(後略)」 (毎日の新春対談から引用) 

ことになるという主張があります。すると「何とか日本から第二、第三のユニクロが出現するのを阻止しなくては!」という風に読者は感じてしまうでしょうね。

でも「第二、第三のユニクロ」の登場を日本が阻止したところで「焼け石に水」なのです。なぜならユニクロのような発想をする企業は世界に既に沢山存在するからです。

なるべく安く買い叩くということに関して言えば、例えばウォルマートはユニクロの大先輩です。中国の輸出業者はコストを下げるためには弾丸飛び交うアフリカの紛争地帯にも行くし、イラクにも喜んで行きます。彼らにとってアルカイダより怖いのはベントンビル(=ウォルマートの本社所在地)だからです。

そのくらいウォルマートという企業は鬼気迫る勢いでもって値切ってくるのです。

そのウォルマートの売り上げ規模はユニクロの46倍です。

つまり第二、第三のユニクロの登場を日本が阻止したところで、既にその46個分のデフレ・パワーがウォルマートだけでもたらされているのです。

それではウォルマートは無敵なのでしょうか?

いや、実はウォルマートが戦々恐々とする手ごわいライバルが最近登場しているのです。

それはアマゾン・ドットコムです。アマゾンの売り上げ規模はまだウォルマートにはかないませんが、それでも全く店舗を持たないビジネス・モデルは扱う商品や状況に応じてはウォルマートの大量仕入れに十分対抗してゆけるだけのコスト競争力を持ちうると思います。

ウォルマートとアマゾン・ドットコムの一騎打ちという歴史的瞬間はいずれやってきます。(今年がその年だと主張するアナリストも居ます。)

つまり「ユニクロ型デフレ」の核弾頭は別にユニクロが居ようが居まいが、既に世界中で炸裂しまくっているということ。

0を意識すべき時が来た

金曜日は雇用統計の発表日です。今回の発表では非農業部門雇用者数の数字が限りなくゼロに接近し、場合によってはプラスに転じるかどうかに市場参加者の注目が集まっています。

もちろん今回のリリースでそれが達成される保証はありません。(因みにコンセンサスはほぼゼロです。)

でも万が一、これがプラスになったら、FRBの金利政策に対する投資家の考え方が激変する可能性も無いとは言えません。

下のグラフは世界の主要国の購買担当者指数(PMI)を集めたものです。
主要国のPMI
ブラジルなどは既に金融危機前の数字より高くなっているし、米国、中国、インド、スウェーデンの数字もとても強いです。

米国に比べればEUの方が低いことも目をひきます。

さらにEUの中で見ると、フランス、ドイツといった比較的優等生のところとスペインなどの「落ちこぼれ」の国との格差がとても開いていることがわかります。

僕の考えではスペインにはもう競争力のある産業自体が残っていないので、PMIは今後も低迷を続けると思います。

すると将来のGDP成長や利上げの速度に対する投資家の先入観としては「米国より欧州の方がモタモタする」という認識がじわじわ広がると思うのです。

ことし1年の展望を考えた時、基調としてドルは強く、ユーロは弱いと僕が考える根拠のひとつはここにあります。

昨日の立ち会いではドル安から原油が買われ、新興国株が買われました。でもこれは「流行遅れ」の物色姿勢であり、今年主流になるスタイルではないというのが僕の信念です。

ひたひたと迫り来る日本の証券・運用業界のビジネス・モデル崩壊の日

今日、日興アセットがMSCI・KOKUSAIインデックスとMSCI・エマージング・マーケット・インデックスに基づくETFを東証に上場すると発表しました。

ETFは運用会社にとっても、投信を販売する証券会社や銀行にとっても「けむたい」商品です。

なぜなら日本で売られている投資信託の大半は販売を担当する証券会社や銀行に支払われる手数料(=それは皆さんが投信買い付けのために出したお金の中から買い付け時に差し引かれます!)がとても高く、それらの金融機関にとってオイシイ商品だからです。

一度投信を販売すれば、馬鹿馬鹿しくてマージンの低い普通株の勧誘なんかやってられません。

証券会社の営業マンが株そっちのけで投信ばかり勧めるのはそれが理由です。投信は「募集モノ」と呼ばれ、募集期間のうちに営業攻勢をかけて売ってしまわなければいけません。だから相場観など差し挟んでいる余裕は無いのです。

すると投信ばっかり売っていると相場観は養えないし、個別銘柄のこともだんだんわからなくなります。最近の証券マンの知識レベルや相場技術が低いのは、だから偶然ではありません。

そういう知識や技術は最もマージンが高い商品である投信を売る際には邪魔になるだけです。別の言い方をすれば、「デキる営業マン」とは、ノルマを消化するロボットのようなmindlessな存在のことを指すのです。

そういう営業軍団にとってETFは天敵のような存在です。なぜならETFは東証のような株式市場に上場された商品であり、売買の仕方は株と同じだからです。

折角、なるべく「株から遠い処」を目指していたのに、ETFが流行ると投信の営業がやりにくくなって困るのです。

同じことがBuyside、つまり運用会社にも言えます。ETFの運用報酬は普通のアクティブ型投信のそれより低いのみならず、インデックス・ファンドよりも更に低いです。だからETFは「危険な存在」なのです。

日本でETFが流行らなかった理由は、このようにSellside(証券、銀行の営業隊)からもBuyside(運用会社)からも疎まれ、意図的にシャットアウトされてきたからです。

これは例えて言えば安いジェネリック薬が全く同じ効用を持っているのにもかかわらずそれを患者に与えず、わざと高い薬を処方する行為に他なりません。

でもそういうSellsideならびにBuysideの自分勝手で狭隘なビジネス観は日本の金融サービス業界全体を駄目にし、金融界の活力を奪っています。

東証や大証の立場からこの問題を考えてみると、ETFが流行るとこれまで閑古鳥だった取引所での売買に活気が戻って来るのです。なぜならETFは「上場」投信であり、株を買うのと同じ経路で売買されるからです。

いまアメリカの株式市場を見ると毎日、売買代金十傑の過半数がETFという状況になっています。考えてみれば、手軽に、しかも安いコストで「ダウがまるごと買える」とか「ナスダック100指数がまるごと買える」わけですから、人気が出ない方がおかしい。

だから東証や大証の人はNYSEやアメックスにおけるETF取引の隆盛をみて、とてもくやしい思いをしていたに違いありません。なぜなら日本国内では本来、新商品を一緒に育んでいくべき立場にある証券会社などの「ビジネス・パートナー」に梯子を外された格好になっているからです。

でも良い商品は誰もプッシュする人が居なくても、遅かれ早かれ賢い消費者は気がつきます。

特に最近は皆さんのブログなどを読んでいて消費者の側のほうが遥かに先行して賢くなりつつあるあることを実感します。

証券会社や運用会社のビジネス・モデル崩壊の日は案外、近いと思いますよ。

アップルのクアトロ・ワイヤレス買収をどう考えるか?

アップルの周辺が俄かに慌ただしくなっています。

1月27日にタブレットの発表があるらしいということは既にいろいろなメディアに報じられていますが、それに加えてアップルはモバイル広告のクアトロ・ワイヤレスを2.8億ドルで買収するのではないか?という観測が出ています。

これらのニュースをすこし整理したいと思います。

まずタブレットはこれまでに出た噂を総合すると10インチのスクリーンを持っており、見た目はアマゾンのキンドルのような形状をしているそうです。

タブレットでも当然、電子ブックを読むことは出来るのですが、電子ブックだけでなく、ビデオなども観れるし、ただ与えられたものを読むだけでなく、ユーザーがインタラクトする自由度が大きいことが特徴なのだそうです。

タブレットのもうひとつの特徴は、ハードウエアを購入したら、全米をカバーするWiFiサービスが自動的についてくるということが噂されている点です。

最初から接続サービスが込みで価格設定されているのならば、概念としてはプリペイドの発想に近いです。

実はプリペイドのモバイル・ブロードバンド・サービスというのは、たとえばヴァージン・モバイルがBroadBand2Goというサービスを既に実施しています。

要するに技術やインフラや既存のサービスは既に存在するわけです。

アップルがやろうとしていることは、そもそもモバイル・ブロードバンドのサービスを消費者が別個に購入する手間を一切、省いてしまい、最初からコネクティビティーをセットにして販売してしまうということです。

これは屋外でのタブレットの使用を一層促進するし、WiFiネットワークへの負荷は増えます。

さて、ようやくクアトロ・ワイヤレスの話に入れるのですが、モバイル広告市場は通常のインターネット広告市場とはチョット違う面もあると思うのです。それは消費者が使うデバイスの形状が違うためです。別の言い方をすればモバイル広告ではリッチなコンテンツを通じての訴求には限界があったということです。

しかしタブレットはこれまでのモバイル・デバイスでは実現できなかった表現力で広告主が考えるような広告を流すことができるかもしれません。その場合、タブレットのスペックを想定した広告キャンペーンのフォーマットを錬る必要が出ます。

そう考えればアップルのクアトロ・ワイヤレス買収はかなり遠大な計画に基づいた、ゲーム・チェンジングな作戦なのかも知れません。
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