Market Hack

スペインの不動産価格は急落する

これもウォール・ストリート・ジャーナルの記事ですが、スペインの貯蓄銀行が今後住宅ローンを払えなくなったマイホームのオーナーの差し押さえとして取得した不動産物件を大量に処分する可能性が強いのだそうです。

これはスペインの不動産市況にとっては悪いニュースです。

スペインでは既に失業率が19%にのぼっており、ブームの時には同国での雇用の半分近くが、何らかの形で住宅建設や販売に関連していたことから考えても雇用はすぐに改善するとは思えません。

ローンが払えなくなった借り手の物件はスペインの銀行がどんどん接収し、バランスシートに載ったままになっています。

これまではそういう「在庫」を公開入札などで銀行が処分しなかったため、スペインの住宅価格は今年9%程度しか下がっていません。

しかしスペインの中央銀行は貯蓄銀行のバランスシートが売れ残りの物件で膨張するのは将来、危険を残すとして、差し押さえ物件の価値の20%に相当する準備金を積むことを義務付けました。(以前は10%でした。)

売りプレッシャーが出ると差し押さえ物件の価格はより下がり、貯蓄銀行のバランスシートの不健全性はより顕著になります。そこで「早く処分した方が勝ちだな」という認識が広まりはじめているのです。

スペイン中銀の調査では300億ユーロと言われる銀行が所有している不動産物件のうち7割が零細な貯蓄銀行によって保有されています。それらの貯蓄銀行の経営悪化は取り付けなどの原因になりかねないので、未然にそれを防ぐための救済合併などを急ぐべきだとしています。

中国のお役人たちが3.17兆円の公金横領?

ウォール・ストリート・ジャーナルによると新華社電として今年だけで2340億人民元が公的予算の中からウヤムヤになっており、広範に渡る使い込みが蔓延しているという監査結果が公表されたそうです。

政府高官67名、その他関係者164名がこれまでに検挙されたそうです。

温家宝首相は政府の公共投資プロジェクトにはびこる不正や無駄を洗い出すよう指示を出しました。

政府の景気刺激予算が銀行経由で政府系企業に融資される過程で巧妙な公金横領のトリックが仕掛けられ、それがお役人が私用する高級車に化けたりするのだそうです。

中国の官僚は優秀なエリートで固められており、使命感や倫理観はアメリカの公僕より高いというのが僕の印象です。しかし地方の小役人には利権にまみれた徳の低い人間も多く、彼らのひきおこす問題は中国の国民の強い反感を買っており、中国の社会をdestabilizeする大きな要因となっています。

こうした資金の一部は株式市場へも流れています。

粛清は株安要因です。

ラスベガス「The 2010 CES」の目玉は「スマートブックス」

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が来週、1月7日からラスベガスで開催される「The 2010 Consumer Electronics Show」に関する記事を掲載しています。

記事中、今回のCESで注目を浴びるのは「スマートブックス(smartbooks)」かもしれないと指摘しています。

そこでまずスマートブックスを定義したいと思います。
スマートブックスは2年前から急に人気を博し、現在では米国のノートブック・パソコンの売り上げの2割までを占めるまでに成長した、ネットブックに似たような形状をしています。

ネットブックは価格帯にして$250から$400くらいです。一方、スマートブックスは$150から$250と、一段と安くなっています。

最大の特徴はネットブックがインテルのアトム・チップとマイクロソフトのウインドウズを搭載しているのに対して、スマートブックスはARMコアに依拠したプロセッサーを搭載、OSはグーグルのアンドロイドなどリナックスに依拠している点です。価格が安いのは主にこれが理由です。

WSJが指摘する問題点としてはスマートブックスはマイクロソフトの「ワード」などのアプリケーションが表示できないし、iTunesも使えないという点です。またアドビのフラッシュ(ビデオを視聴する際、必要です)の調整が遅れていると指摘しています。

もともとネットブックはリナックス・ベースで構想されたけど、上に書いたような問題で消費者のウケが悪く、ウインテルに衣替えしたら成功した、、、そういう経緯も記事中紹介されています。

   ■   ■   ■

さて、僕がこの記事を読んだ感想ですが、コンシュマー・デバイスでいろいろ新しいことが試みられるのは毎年のことで、今回のスマートブックスが成功するという保証はありません。

また、今回のラスベガスのショーに登場しない新製品、つまりアップルのタブレットこそが「台風の目」であることは多くのウォッチャーには既知の事です。

それを断った上で、昔より消費者の先入観、固定観念といったものは崩れてきており、ビジネス・チャンスは広がりを見せていると感じざるを得ません。

それはつまり「パソコンは、こういうカタチをしていないといけない」とか「携帯電話は、こういうカタチをしていないといけない」という凝り固まったイメージではなく、「いいんじゃないの、別に電話がプラスチックの下敷きみたいなカタチをしていても」とか、「別に抵抗感は無いよね、キーボードが無くったって、、、」という風に消費者の嗜好やエクスペクテーションが柔軟化しているということです。

アマゾンの「キンドル」やバーンズ&ノーブルの「ヌック」や今回話題になっている「スマートブックス」などの新しいコンシュマー・デバイスの大半は流れ星のように一瞬きらめいたかと思えば、すう~っと消えて行くものなのかも知れません。どのデバイスが残って、どのデバイスが消え去るかはなかなか予測不可能です。

でもどんなデバイスが最終的に当たりを取っても、これらの無数の試みに基幹的な技術を提供している企業は勝ちます。それは具体的にはARMホールディングス(ARMH)であり、マーベル・テクノロジー(MRVL)なのです。

テスラ・モータース


テスラ・モータースはシリコンバレーに本社がある電気自動車のメーカーで、2010年のIPO候補です。

同社は「オール・エレクトリック」のロードスターを販売しており、小売単価は12.9万ドルです。

このロードスターの特徴は従来の電気自動車のイメージを覆し、「運転して楽しい」ことを設計の主目的に据えた点です。

テスラ・ロードスターが時速0から60マイルに達するまでの時間は僅か4秒です。電気自動車の特徴としてトルクが極めて強いため、テスラ・ロードスターを模倣した、遊び心のあるクルマが今後他社から発表される可能性も高いです。

電気自動車の持つ不安として、「バッテリーは大丈夫か?」という問題があります。

テスラはそれを克服するキャンペーンとしてカリフォルニアからデトロイトまでの長距離ロード・トリップを12月17日にスタートしました。若し日程通りにデトロイトに着くのなら、1月4日あたりとなります。

普通の乗用車ならカリフォルニアからデトロイトまでは6日間で着きます。この差は走った後の充電に必要な時間というわけ。

因みにテスラ・ロードスターの一回の充電での走行距離は244マイルだそうです。

テスラの経営陣はいずれも電気自動車や自動車の設計に長く携わってきた経験者が多いです。難を言えば公開会社の経営経験のある幹部が殆ど居ない点がリスクでしょう。

テスラはドレイパー・フィッシャー、テクノロジー・パートナーズ、ダイムラーなどのVCならびに企業からの出資を受けています。加えてグーグルの創業者など著名な個人のエンジェル投資家も多く参加しています。

現時点では同社の財務パフォーマンスに関する情報が少ないのでIPO後にどのような性質の株になるのかを予測することは極めて困難です。

ただ2010年のIPO市場の話題銘柄のひとつになることだけは間違いなさそうです。


FRBはone way betを嫌う

FRB(米国連邦準備制度理事会)はone way betを極端に嫌います。

One way betというのは「強気一色」とか「弱気一色」という風に投資家のエクスペクテーション(期待)が極端に偏ることを指します。

もっとくだけた表現に直せば、「楽勝パターン」の状況をつくりあげてしまうことを嫌うのです。

なぜone way betが危ないか?に関してはいろんなシナリオがあるのでそれを全部紹介することは出来ませんが、ひとつだけ、一番危ないパターンを指摘しておきます。それは「FRBが後手後手に回る」シナリオです。

マーケットが「FRBの次の一手」を完全に読んでしまっていて、それを先回りしたポジションを建てる、、、FRBはマーケットに追従するかたちで「おもうツボ」の政策を打ち出してくる、、、するとマーケットはFRBが打ち出した政策を「遅すぎる」とし、「もっともっと」と催促するようになるのです。

中央銀行の手の内がすっかり見透かされてしまうと金利政策のトラクション(手応えがある事)はとたんに失われてしまいます。トラクションが失われると中央銀行は短期金利の上げ下げで市場をdictate(指示出し)することができなくなり、平たく言えば「ハチャメチャ」になるのです。

さて、現在の米国のトレジャリー・イールド・カーブを見ると下のようになっています。
イールド・カーブ
短期(画面の左側)が低く、長期へ行くほど高くなっています。
きれいな「正規のカーブ」が至現していると言えるでしょう。

このカーブには特筆すべき点が2つあるように思います。

①スプレッド(30年債の利回り-短期の利回り)がかなり大きい事
②短期の側の金利が限りなくゼロに近い事

そこで先ず①についてコメントすると、僕がアメリカの銀行なら、イールドカーブがこういう形を至現しているときは余りちからを入れて融資を拡大したり、外国の投資対象を求めて世界を彷徨ったりしないと思います。

そう考える理由は調達金利(=短期、つまり画面の左側)のコストが安いので、どんどん借りて、長期債(=画面の右側)を購入するだけで、ガッポリと金利差が稼げるからです。

つまり銀行の余資運用という業務に限定して言えば、今は「誰でも務まる」極めてカンタンな金利環境なのです。

なお、上で説明したような、「短期で借りて、長期に突っ込む」やり方をキャリー・トレードと言います。

最近の日本の読者は「キャリー・トレード」と言うと必ず外国へお金を持って行かないといけないように誤解していますが、実際には「元祖キャリー・トレード」は自分の国の中だけで行われる、上に述べたような例を指すのであって、異国の通貨を跨いだ国際間のキャリー・トレードは長い間、「亜流」ないしは「邪道」な畸形だと思われてきました。

さて、話を①に戻すと僕は2010年のマーケットは「まるドメ」化のマーケットになるように感じています。

つまりアメリカ人はアメリカ国内での投資機会を探ることを最優先するようになるでしょう。

僕がそう考える理由は、第一番目に上に示したように、「ただ債券抱えてりゃ、それなりに儲かるから、わざわざ外国に行く必要が薄れる」ということです。

第二番目としてイールドカーブがこのように正規のカーブになっているときは自分の経験からして国内(つまりアメリカ株)にワンサカ投資機会があることが多かったように思うからです。

別の言い方をすれば正規のイールド・カーブは景気の順調な拡大を暗示していますから、景気が良い時は企業業績もそれなりの数字が出るということです。

また短期金利と長期金利の金利差(スプレッド)がザックリとメリハリが効いて現れているということはデフレになりそうなカーブでは無いという解釈も出来るでしょう。少なくとも債券市場の参加者は、デフレのシナリオは否定しているように思えます。

それでは現在のイールド・カーブの状況に問題は無いのか?と言えばそれは、あります。

その問題が②です。

②短期の金利が限りなくゼロに近いということはオチャラケな言い方をすれば「FRBの次のアクションは100%確実に読める」ことを意味します。

つまりゼロ金利をマイナスにすることはできないわけですから、方向性として利下げはもう無いわけです。あるとすれば利上げだけです。

もちろん、正確に言えば金利がゼロになっても量的緩和政策などによってもっと金融緩和することは出来ます。でも最近のFOMCのステートメントなどを見ると来年の春までには量的緩和政策はだんだん終焉させる方向が既に打ち出されています。

またイールド・カーブ的に見ても、なるべく早く量的緩和政策は手仕舞うべきカーブのかたちをしていると僕は思います。

そこでFRBが3月頃に量的緩和政策に区切りをつけた際、ジレンマが出てくる可能性があるわけです。

それはつまり金融政策が「臨時措置」から「平常」の、FFレートだけに頼る手法に戻った瞬間、one way betの状態が起きてしまうというリスクです。つまり「FFレートは上がるしかない」という認識です。

その場合はFRBが後手後手にまわりやすいと思います。なぜなら現在すでにスプレッドは上にのべたように極めてhealthy、つまりオイシイ状態になっているからです。

実際、僕は現在の時点ですでに(FRBは遅きに失したかなぁ?)という漠然とした不安を抱いています。One way betにならないための金利としてはスプレッドから考えてFFレートで最低でも1.25%くらいは欲しいと思うからです。

現在の市場のコンセンサスでは「2010年の上半期はFRBは利上げしない」という意見が多いです。(唯一それに異論を唱えているのは僕の師匠のひとり、アライアンス・バーンスタインのジョー・カールソンだけです。かれはもっと早いタイミングで利上げが始まると見ています。)

若し2010年の6月までは利上げをせず、年後半から利上げするというのなら、FFレートで1.25%くらいの水準に到達するためにはかなりパンクチュアルに利上げしてゆく必要があります。これは「見え透いている」ので少し危ないかな?なんて感じるわけです。

でもこのへんの匙加減はベン・バーナンキ議長は研究し尽くしているはずです。

すると少々穿った見方になるかも知れませんが、「われわれ一般の投資家に未だ見えていなくて、バーナンキ議長には見えているものがあるのではないか?」ということを心配する必要があるのかも知れません。

で、ここからは荒唐無稽な僕の妄想なのですが、(バーナンキ議長は欧州を見ている筈だ)という気がしてならないのです。

僕がそう考える理由はバーナンキが大恐慌時代の世界経済の研究の権威だからです。

大恐慌時代の反省として、不況対策の「初動」もとても重要でしたが、それに輪をかけて重要だったのは、「早く動いた国(日本など)とモタモタした国(当時は米国)の金利政策のシンメトリーが失われた時、モタモタした国にリスクが集中した」ということでした。

翻って2010年を考えた時、当時と現在とでは主役の役回りがところを替えています。

つまり今回はアメリカの「初動」は極めて早かったのです。これと対照的に欧州は動きが鈍く、また不況対策も徹底していませんでした。

これは欧州の中で最も優等生のドイツやフランスの経済指標をベースにEUの金利政策が決められてきたことが影響しています。

また、サブプライム危機に入ってゆく過程での議長国がドイツだったこともストイックな処方に終始した原因のひとつだったかも知れません。

しかしそのような「中途半端な」不況対策の影響で、現在のEUでは「勝ち組」と「負け組」の経済格差が危険なほど広がってしまっています。

その環境で若しドイツなどからのプレッシャーで欧州の金利が上がり始めたら、スペインは壊滅的な打撃を受けるでしょう。(スペインの不動産は大半が変動金利)

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