Market Hack

0を意識すべき時が来た

金曜日は雇用統計の発表日です。今回の発表では非農業部門雇用者数の数字が限りなくゼロに接近し、場合によってはプラスに転じるかどうかに市場参加者の注目が集まっています。

もちろん今回のリリースでそれが達成される保証はありません。(因みにコンセンサスはほぼゼロです。)

でも万が一、これがプラスになったら、FRBの金利政策に対する投資家の考え方が激変する可能性も無いとは言えません。

下のグラフは世界の主要国の購買担当者指数(PMI)を集めたものです。
主要国のPMI
ブラジルなどは既に金融危機前の数字より高くなっているし、米国、中国、インド、スウェーデンの数字もとても強いです。

米国に比べればEUの方が低いことも目をひきます。

さらにEUの中で見ると、フランス、ドイツといった比較的優等生のところとスペインなどの「落ちこぼれ」の国との格差がとても開いていることがわかります。

僕の考えではスペインにはもう競争力のある産業自体が残っていないので、PMIは今後も低迷を続けると思います。

すると将来のGDP成長や利上げの速度に対する投資家の先入観としては「米国より欧州の方がモタモタする」という認識がじわじわ広がると思うのです。

ことし1年の展望を考えた時、基調としてドルは強く、ユーロは弱いと僕が考える根拠のひとつはここにあります。

昨日の立ち会いではドル安から原油が買われ、新興国株が買われました。でもこれは「流行遅れ」の物色姿勢であり、今年主流になるスタイルではないというのが僕の信念です。

ひたひたと迫り来る日本の証券・運用業界のビジネス・モデル崩壊の日

今日、日興アセットがMSCI・KOKUSAIインデックスとMSCI・エマージング・マーケット・インデックスに基づくETFを東証に上場すると発表しました。

ETFは運用会社にとっても、投信を販売する証券会社や銀行にとっても「けむたい」商品です。

なぜなら日本で売られている投資信託の大半は販売を担当する証券会社や銀行に支払われる手数料(=それは皆さんが投信買い付けのために出したお金の中から買い付け時に差し引かれます!)がとても高く、それらの金融機関にとってオイシイ商品だからです。

一度投信を販売すれば、馬鹿馬鹿しくてマージンの低い普通株の勧誘なんかやってられません。

証券会社の営業マンが株そっちのけで投信ばかり勧めるのはそれが理由です。投信は「募集モノ」と呼ばれ、募集期間のうちに営業攻勢をかけて売ってしまわなければいけません。だから相場観など差し挟んでいる余裕は無いのです。

すると投信ばっかり売っていると相場観は養えないし、個別銘柄のこともだんだんわからなくなります。最近の証券マンの知識レベルや相場技術が低いのは、だから偶然ではありません。

そういう知識や技術は最もマージンが高い商品である投信を売る際には邪魔になるだけです。別の言い方をすれば、「デキる営業マン」とは、ノルマを消化するロボットのようなmindlessな存在のことを指すのです。

そういう営業軍団にとってETFは天敵のような存在です。なぜならETFは東証のような株式市場に上場された商品であり、売買の仕方は株と同じだからです。

折角、なるべく「株から遠い処」を目指していたのに、ETFが流行ると投信の営業がやりにくくなって困るのです。

同じことがBuyside、つまり運用会社にも言えます。ETFの運用報酬は普通のアクティブ型投信のそれより低いのみならず、インデックス・ファンドよりも更に低いです。だからETFは「危険な存在」なのです。

日本でETFが流行らなかった理由は、このようにSellside(証券、銀行の営業隊)からもBuyside(運用会社)からも疎まれ、意図的にシャットアウトされてきたからです。

これは例えて言えば安いジェネリック薬が全く同じ効用を持っているのにもかかわらずそれを患者に与えず、わざと高い薬を処方する行為に他なりません。

でもそういうSellsideならびにBuysideの自分勝手で狭隘なビジネス観は日本の金融サービス業界全体を駄目にし、金融界の活力を奪っています。

東証や大証の立場からこの問題を考えてみると、ETFが流行るとこれまで閑古鳥だった取引所での売買に活気が戻って来るのです。なぜならETFは「上場」投信であり、株を買うのと同じ経路で売買されるからです。

いまアメリカの株式市場を見ると毎日、売買代金十傑の過半数がETFという状況になっています。考えてみれば、手軽に、しかも安いコストで「ダウがまるごと買える」とか「ナスダック100指数がまるごと買える」わけですから、人気が出ない方がおかしい。

だから東証や大証の人はNYSEやアメックスにおけるETF取引の隆盛をみて、とてもくやしい思いをしていたに違いありません。なぜなら日本国内では本来、新商品を一緒に育んでいくべき立場にある証券会社などの「ビジネス・パートナー」に梯子を外された格好になっているからです。

でも良い商品は誰もプッシュする人が居なくても、遅かれ早かれ賢い消費者は気がつきます。

特に最近は皆さんのブログなどを読んでいて消費者の側のほうが遥かに先行して賢くなりつつあるあることを実感します。

証券会社や運用会社のビジネス・モデル崩壊の日は案外、近いと思いますよ。

アップルのクアトロ・ワイヤレス買収をどう考えるか?

アップルの周辺が俄かに慌ただしくなっています。

1月27日にタブレットの発表があるらしいということは既にいろいろなメディアに報じられていますが、それに加えてアップルはモバイル広告のクアトロ・ワイヤレスを2.8億ドルで買収するのではないか?という観測が出ています。

これらのニュースをすこし整理したいと思います。

まずタブレットはこれまでに出た噂を総合すると10インチのスクリーンを持っており、見た目はアマゾンのキンドルのような形状をしているそうです。

タブレットでも当然、電子ブックを読むことは出来るのですが、電子ブックだけでなく、ビデオなども観れるし、ただ与えられたものを読むだけでなく、ユーザーがインタラクトする自由度が大きいことが特徴なのだそうです。

タブレットのもうひとつの特徴は、ハードウエアを購入したら、全米をカバーするWiFiサービスが自動的についてくるということが噂されている点です。

最初から接続サービスが込みで価格設定されているのならば、概念としてはプリペイドの発想に近いです。

実はプリペイドのモバイル・ブロードバンド・サービスというのは、たとえばヴァージン・モバイルがBroadBand2Goというサービスを既に実施しています。

要するに技術やインフラや既存のサービスは既に存在するわけです。

アップルがやろうとしていることは、そもそもモバイル・ブロードバンドのサービスを消費者が別個に購入する手間を一切、省いてしまい、最初からコネクティビティーをセットにして販売してしまうということです。

これは屋外でのタブレットの使用を一層促進するし、WiFiネットワークへの負荷は増えます。

さて、ようやくクアトロ・ワイヤレスの話に入れるのですが、モバイル広告市場は通常のインターネット広告市場とはチョット違う面もあると思うのです。それは消費者が使うデバイスの形状が違うためです。別の言い方をすればモバイル広告ではリッチなコンテンツを通じての訴求には限界があったということです。

しかしタブレットはこれまでのモバイル・デバイスでは実現できなかった表現力で広告主が考えるような広告を流すことができるかもしれません。その場合、タブレットのスペックを想定した広告キャンペーンのフォーマットを錬る必要が出ます。

そう考えればアップルのクアトロ・ワイヤレス買収はかなり遠大な計画に基づいた、ゲーム・チェンジングな作戦なのかも知れません。

シスコ(CSCO)



ハイテクの出遅れ銘柄、シスコ(CSCO)があと少しのところで去年の高値、$24.825に届きそうです。これを抜ければ次の目標は2008年の夏につけた$25.25ということになりますがいずれにせよ俄然面白い展開になってくるのではないでしょうか?

シスコの業績はハッキリ言ってイマイチです。第1四半期の決算でも:

ルーター -17%
スウィッチ -21%
アドバンスト・テクノロジー -15%
サービス +7%

と、まだまだ企業の設備投資意欲の低迷の影響をもろに受けています。
普通、企業のネットワーク投資や電話会社のインフラストラクチャのアップグレードはテクノロジー・サイクルのどちらかと言えば後の方に起こると言われています。

従って今シスコを買うという行為は業績の改善を買いにゆくというより、将来、起こるかもしれない業績改善を見越して、「見切り発車」で出動するというカタチにならざるを得ません。

幸いシスコは営業キャッシュフローもポジティブだし、グロス・マージンは66.3%だし、バランスシートには250億ドル以上のキャッシュが乗っかっています。ディファード・レヴェニューも92億ドルあり、財務的にはピカピカです。

だから仮に業績が上向かなかった場合でもそんなに酷いことにはならないと思うのです。

(上のビデオはシスコのテレプレゼンスのCMです。)

スペインに関するクルーグマンのインタビュー

バルセロナの新聞、『ラ・ヴァンガーディア』に掲載されたポール・クルーグマンのインタビューが結構、面白いので抄訳します:

 

(前半部分省略)

 

質問:去年の12月にあなたは欧州の辺境国で起きている経済危機が大きな問題に発展すると警鐘を鳴らされましたが、その中で「今後、危機の中心は米国の住宅市場から欧州の辺境国へと移るだろう」と宣言されました。辺境国というのはスペイン、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、バルト三国などを指していると理解していますが、このところギリシャをはじめ欧州のソブリン格付けの問題が急に注目されてきたように思います。あなたがそもそもこの問題に早い段階から気付かれていた理由はどうしてですか?

 

クルーグマン:全ては数字ですよ。それらの国々における巨大な経常赤字は「バブルがここに発生している!」と絶叫しています。マクロ経済のデータからいろんな不均衡を見出すことは危機を事前に予測するのにすごく役に立つのですよ。だから多くの人がそういう明らかな危機信号を見落としてしまうのには全く呆れるとしか言いようがありませんね。

 

質問:ユーロは最近の世界の経済のイニシアチブの中では最も壮大な試みのひとつと言えますが、誕生してからそろそろ10年になります。ベン・バーナンキはFRBの議長になる前に「ユーロは壮大なる実験だ」とコメントしましたが、クルーグマンさんは今でもユーロは「実験」だと思いますか?あるいはそろそろユーロをしっかり根付いたと評価すべき時期が来ていると考えますか?

 

クルーグマン:ユーロはまだまだ実験の段階ですね。ごく最近になってようやくこの通貨の「ダウンサイド」を我々は初めて見せつけられる局面に直面しているのです。ユーロ圏はこれから域内に存在する巨大な不均衡の問題をほぐしていかなければいけません。それがどういう結末を迎えるかを見届けるまではユーロという共通通貨に対する評価は留保されるべきではないでしょうか?

 

質問:ユーロの域内の少なからぬ国々は負債や価格競争力の喪失で不況からの脱出が困難になっています。自国通貨をデバリュエーション(減価)することで競争力を回復する途が断たれていることも停滞を長引かせます。クルーグマンさんは去年アルゼンチンでスピーチされたとき、「スペインは賃金や物価を全体的に引き下げ、競争力を回復する以外にスペイン経済が立ち直る道は無い」と主張されました。スペインの国民はそのような案には到底納得できないと思いますけど、なぜクルーグマンさんはそうお考えなのですか?

 

クルーグマン:こういう言い方をすればどうでしょうか。スペインという国はもうずっとEUの中で不動産を切り売りすることで生計を立てていた国だったのです。南の暖かい気候を求めて欧州中の人々がスペインの不動産を投機の対象にしました。この投機資金の流入が住宅バブルを作ったわけです。スペインの人たちは建設ブームで忙しくなり、どんどん労働賃金が上昇しました。でもバブルがはじけてしまったので、もうお金は入って来なくなりました。するとスペインは住宅を作ること以外の方法で競争しないといけなくなったのです。それは例えば製造業で競争するということを意味すると思うのですが、労賃が下がって生産性が改善しないことにはコスト高で競争にならないでしょう?

 

質問:つまりスペインは「国内的デバリュエーション」をしなければいけないわけですよね?でもそれは1930年代の恐慌の時の賃金の下落のような、極めて大きな痛みを伴う修正過程になりますよね?

 

クルーグマン:なにか妙案があればそれをここで示したいところですが、私にはいい考えが思い浮かびません。スペインが現在置かれている境遇は1930年代に最後まで金本位制に拘泥し、その結果、景気回復が遅れた国々(=当時は米国がこれに相当)と同じです。いや、現在のスペインはそれらの当時の国々よりひどい状況かもしれない、、、なぜならユーロ圏に所属している限り貿易政策を通じて競争力を回復する途は閉ざされているからです。

 

(後略)

 

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