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2010年 ここに注目④ 中国の設備稼働率

大阪で万国博覧会が開幕した数日後に大きなM&Aが当時の日本の産業界を揺るがせました。それは八幡製鉄と富士製鉄が合併し、新日鉄が誕生したというニュースです。

このディールから数年後に日本の粗鋼生産は頭打ちになります。そして日本の重工業はどこもオーバー・キャパシティ(過剰設備)の問題に苦しむようになるのです。

中国の設備稼働率

中国では4兆人民元の景気刺激策が現在実施されています。これによる建設セクターの特需で中国の重工業は潤っているのですが、それでも主要産業の設備稼働率はだんだん悪化しています。

中国政府は日本の二の轍を踏まないために既に過剰設備となっている産業分野に関しては融資を絞り込むなどの行政指導に躍起になっています。このプロアクティブな中国政府の指導は正しいし、先々を見越した英断だと思います。

でも1970年代の日本の通産省だって、別に手をこまねいていたわけではありません。当時のMITIはたいへんパワフルな組織で、しかも有能な官僚で固められていました。八幡と富士の合併という、下手をすると寡占になりかねないディールがOKになったのもキャパシティの整理という課題を意識しての事。

中国の場合、中央政府がどれだけ深慮を持って産業政策を打ち出しても、ローカルのレベルになるとなかなか計画通りリストラクチャリングが実行されないという悪い癖があります。従ってキャパシティの整理は日本の時より遥かに難航すると考えた方が良さそうです。

新年早々また中国でミルク禍

ウォール・ストリート・ジャーナルによると中国でまたミルクに高濃度のメラミンが混入する事件がありました。

今回検挙された企業は上海パンダ・デイリーという会社です。

2008年のミルク禍のときは少なくとも6人の子供が粉ミルクが原因で死亡し、大きなスキャンダルになりました。

あれだけ大きく報道されたにもかかわらずまた同じ犯罪が起きているということは無数の零細な業者を取り締まるのがいかに難しいかを物語っています。

2010年 ここに注目③ シリコンバレー

Netscape_classic_logoアメリカではよく「Netscape moment」という言葉が使われます。つまり「ネットスケープがIPOした瞬間」という意味です。このIPOを契機としてアメリカの投資家のハイテク株に対する考え方が激変し、所謂、ドットコム・ブームがはじまったのです。

2010年は「Netscape moment」の再来になるような注目を浴びるIPOが出て来るでしょう。それは取りも直さずシリコンバレーにブームが戻って来ることを意味します。

ブームの火付け役になるであろうIPOは所謂、ソーシャル・ウェブと呼ばれる会社群の中から出てくる気がします。具体的にはフェイスブック、ツイッター、リンクドインなどの企業です。

でもそれらの企業以外にも注目度の高い企業は幾らでもあります。例えばビデオ・プラットフォームの会社、ブライトコーブやネットワーク機器のカリックス、電気自動車のテスラ・モータースなどです。

2009年は民間企業や個人のこしらえた多額の借金を政府が肩代わりする年でした。このため公的負債は世界的に急増しました。1930年型の大恐慌を未然に防ぐためにはそうせざるを得なかったのです。

今年はすでに「腹いっぱい」になってしまった公的部門の負債をどうやって軽減するかがテーマになります。だから財投という言葉は流行らないと思うし、投資家が忌み嫌う言葉になるという気がします。

なるべくバランスシート・リスクの無い、クリーンで身軽なストーリーが人気を博す筈です。

その観点からすればシリコンバレーのハイテク株は政府の支援とは無縁だし、バランスシートも鉄壁です。

おまけにTwitterやYouTubeを指摘するまでもなく、インターネットのサービスは世界的な需要爆発を経験しています。

単純明快なストーリーではないでしょうか?

2010年 ここに注目② スペイン

9%

42.9%というのはスペインの若者(16歳から24歳)の失業率の数字です。

スペインはアメリカのサブプライム・バブルより大きな不動産ブームを経験して「労働人口の半分が大工さんや不動産ブローカー、住宅ローンの融資担当者など、何らかのカタチで不動産に関係する仕事をしている」と言われました。

いま、その不動産バブルがはじけて欧州中の投資家が短期間のうちにフリップ(flip=すぐ売り抜ける事)するつもりで購入した物件は空き家のまま売れ残っています。

フィード・イン・タリフという政府の補助金の関係で新築の家にソーラー・パネルを設置するのが大ブームになり、スペインは世界でも有数のソーラー・パネルの需要国でしたが、そのバブルも弾けました。

当時は猫の手も借りたい忙しさで非熟練労働力の若者がソーラー・パネルを設置するために屋根の上に登っていたわけですが、彼らの大部分がこの「42.9%」の中に含まれてしまっているわけです。

スペインの住宅投資はほぼすべてが変動金利の住宅ローンでした。従ってECBが利上げを始めるとスペインはギリシャが経験したような暴動を経験する恐れがあります。

2010年のある時点でアメリカは政策金利の引き上げを実施すると思いますが、欧州はユーロ圏から落後する国が出てしまうリスクがあるため、利上げのタイミングはアメリカより遅れるし、利上げ幅も少なくなるでしょう。

それはユーロが2010年を通じて米ドルよりアンダー・パフォームすることを意味すると思います。

2010年 ここに注目① イラン

新年になりました。今年僕が個人的に注目している事柄について数回に分けて書きたいと思います。

先ずイランについて書きます。

イラン

なぜ僕がイランに興味を持っているかと言えばそれは中東、北アフリカの地域でイランはエジプトと並んでダントツに人口が多く、同地域の政治に隠然たる影響力を持つ大国だからです。

でもこの大国は深く病んでいます。

イランGDP
上のグラフはイランの長期でのGDP成長率を示したものです。1979年にイラン革命があり、経済封鎖を受けたため、1980年のGDP成長率は大幅にマイナスになっています。

この混乱に乗じてイラクのサダム・フセインがイランに攻め込み、イラン・イラク戦争が勃発しました。この戦争は8年も続きイランを疲弊させました。88年にかけての経済低迷はこの戦争が少なからず影響しています。

その後はイラン経済はかなり持ち直しています。しかし原油価格が低迷しはじめた去年あたりからまた成長率の見通しは暗転しています。
イラン経常収支
次にイランの近年の経常収支のグラフを上に掲げました。原油価格低迷が響いています。

イラン消費者物価指数
さらに消費者物価指数を見るとイランは慢性的にインフレに悩まされていることがわかります。とりわけ08年、09年はインフレが荒れ狂いました。

総括すればイラン革命で独立して以来、イランの経済は「いいとこなし」だったと言えるでしょう。

別の角度から言い直すと1979年のイラン革命の時点での同国のGDP規模はスペインとほぼ並んでいました。今はスペインのGDP規模はイランの4倍になっています。

またイランの公共サービス、福祉、医療などもこの30年間に大きく後退しました。平均寿命は1979年の時点では世界で45番目に長かったのが、現在は133位に落ちています。寿命が6年縮まったからです。

また自殺者の政府統計を見ると1977年に1612人だったのが2007年には42000人に激増しています。

麻薬常習者は革命前の10倍に膨れ上がり、450万人へ、テヘランの売春婦の数は50万人(テヘラン市の人口は1200万人)となっています。

離婚率をみると革命前は殆どゼロだったのが、現在は30%になっています。(*)

つまりイランは長年に渡る教条主義的な圧政の下でだんだん朽ちてきているわけです。

アフマディネジャド政権に対する反抗が粘り強く続いている理由は単にアフマディネジャド個人に対する不満を国民が持っているからではなく、レジーム全体に対する深い失望が根底にあるのです。

株式市場的にはこの問題をどう捉えれば良いのでしょうか?

僕の考えでは反政府デモが盛り上がっている間はイスラエルはイランを攻撃できないと思います。なぜならデモクラシー運動の盛り上がりに水を指すことになるからです。

イスラエルはいちおうデモクラシーの擁護者であるという立場を取っていますから動きにくいと思うし、軍事行動に出た場合、オバマ大統領からの支持も得にくくなるでしょう。

むしろイランがこれまでの流れを踏襲してどんどん内側から崩れてゆくというシナリオの方が実現性が高い気がします。

原油価格については増産に走ろうとしている国がとても多いので楽観視していません。若し原油価格が低迷した場合は、イランは一層苦しむと思います。



(*)これらの統計はすべてアミル・タヘリ「ザ・ペルシアン・ナイト」による。

 

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