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インプリシット・ギャランティーはシット(糞)だ

投資の世界にはインプリシット・ギャランティー(implicit guarantee)という言葉があります。

これは「とうぜん、ふくまれているだろう?」という、それとなしに納得してしまった保証のことです。

これを説明する際にしばしば引き合いに出されるのがファニーメイ債です。ファニーメイはもともとアメリカ政府の公社でしたが、民営化されて私企業になりました。だからファニーメイ債を政府が保証するのはおかしいのですが、「持家促進というのは大事な行為だし、もともとはお役所だったんだから、何かあったら当然政府がなんとかするだろう」という先入観が深く投資家に根付いていたわけです。

このような投資家の「思い込み」は去年の金融危機の時のようにそれが試されるときがくるととんでもない結果をもたらす場合があります。

さて、ドバイ・ワールドの債務に関しても:

「えっ?それってドバイ政府が当然ギャランティーするんでしょ?」

とか

「いや、アブダビがリッチだから、彼らが救うべきだ」

など、いろいろな甘い期待が投資家から出されています。
しかし、そういう風にそれとなしに決め付けたのは投資家の方であって、ドバイ・ワールドの側が政府のギャランティーを最初から明示的に謳ったものではないというのが僕の理解です。

アブダビとドバイを「一枚岩」と考えたのも、ドバイ政府が「インプリシットにギャランティーするはずだ」と考えたのも元を正せばそれらの証券に投資した機関投資家の無知と不勉強が原因です。

アブダビやドバイは当然、居直るのが正しいと思います。

「夢を売る男」 ドバイに今必要なのはお金ではなく移民法改革と所有権の確立だ

ハロルド・ロビンズはpulp fiction、つまり粗製乱造の通俗小説作家です。彼の書く本は常に成金とセレブと猟奇的なセックスがてんこ盛りになっています。空港の売店で搭乗前に機内で読み捨てにする雑誌や新聞を買うのと同じ軽い気持ちで買って行かれる駄本、それをベルトコンベヤー式に量産する方法を最初に編み出した男がハロルド・ロビンズなのです。

したがって僕が『The Dream Merchants』(「夢を売る男」)を手にしたのも中東のどこかの空港の売店だったと思います。

猛烈なサンドストーム(砂嵐)に閉じ込められた日、シュワイバの石油精製工場建設現場の仮設宿舎の2畳くらいのスペースで口と鼻をハンカチで押えながら(微粒の砂塵がたてつけの悪い宿舎の中にも吹き込んでくるからです)一気に読み終えてしまった記憶があります。

でも今から思えば、この「お下劣」な本に僕はとても影響されてしまったことは間違いないのです。まずグラマラスなハリウッドの様子が描写されています。妖しいおんなたちも出てきます。ほとばしるような出世欲に駆られた男たちが角逐します。

(なんだい、こんな軽薄な本。)

そう思いながらぐいぐい引き込まれてしまったのです。

(こいつは一回、自分の目で見届けないとだめだな、カリフォルニアという場所を。)

僕の読後感としては、それだけです。
でもこの時に自分の人生のコースは決まったと言っても過言ではないかもしれません。

「夢を売る男」は当時ベストセラーだったので、何かの機会に読んだ人も多いかと思うのですが、とりわけ中東では「これが自分にとって最も大事な本だ」と告白するにんげんには幾度も出くわしました。

砂漠の中に築かれた豪奢を極めた街、それはまさに「夢を売る男」に出てきた光景そのものです。

つまりドバイという街は出世欲やリビドーや一攫千金を狙うものどもの欲望が渦巻いた処であり、究極の資本主義(extreme capitalism)の発露であるわけです。言葉を換えて言えば、いま日本に無いもの、日本人が失ってしまったものがすべてある場所がドバイなのです。

成功したいという執念がある限り、その場所は「おわり」ではありません。

石油が発見されて以来、中東という場所は外国に蹂躙されてきたし、いさかいは絶えなかったし、宗教的価値観とモダンな価値観が常にぶつかり合い、軋轢を生んできました。驚くほど多くの人たちが故郷や国を棄てて「出稼ぎ」せざるを得なかったのです。

ドバイはそういう人たちの自己実現の場であり、代理(surrogate)の故郷なのです。

だから黙っていても人々はドバイに集まって来るし、それは今後もそうでしょう。これはロスアンゼルスやラスベガスがどんどん大きくなったのと同じ理由です。

問題はドバイにやってくる労働者は必ず誰かに雇われていなければならないということです。街に失業者が溢れることを防止し、少数支配をゆるぎないものにするために失業者にはビザを更新しないのです。

このような制度は何もドバイに限ったことではなく、外国からの臨時労働者に依存しているサウジアラビアやクウェートでも同じです。

もともと精油所建設などのシチュエーションを想定して作られたこのルールはドバイの目指す国造りとは大きな齟齬をきたしています。なぜならドバイが作っているのはコンドミニアムなどの住居であり、また投資物件だからです。それらの物件の投資回収期間が10年や20年を想定しているのであれば、「失業したら、一か月以内にとっとと出ていけ!」というような法律があれば怖くてコンドミニアムなどとても買えたものではありません。

ドバイの不動産物件の売れ残り問題を解決する効果てきめんの方法は、従って移民法(immigration law)の改正と所有権(property rights)の確立です。これらを実施すれば、現在、売れ残っている物件は一カ月以内に全て完売まちがいなし。

なぜならドバイは不幸の海に囲まれた土地であり、中東で唯一、希望を体現している街だからです。

建設アレルギー 4兆人民元の景気刺激策とは別の切り口の現状打開策を必要とする中国

ドバイ・ワールドの債務リスケジュールとベトナムのドン危機が我々に残した教訓は:

 

ただ闇雲にコンドミニアムを建設すれば経済は万事OKという考え方には限界がある

 

ということでしょう。

株式市場は一転してOver building(過剰建設)にピリピリしはじめています。中国の場合、アインホーン風に言えば「もうルビコン川を渡ってしまったのかもしれない」ですね。

 

確かに見かけ上、中国の銀行各行の自己資本比率は十分なクッションがあるように見えるし、焦付きも異常な水準ではありません。しかし中国の場合、何を持ってnon-performing(遅延)ローンと呼ぶかの定義は曖昧で、会計基準の援用は杜撰です。

 

もちろん、中国の銀行監督当局はそういう問題を毎日ひしひしと感じています。だからこそ、今、大型増資を銀行各行に強要したり、バランスシートの改善に取り組まない銀行に対しては日常業務を大幅に制限する、決死の覚悟の行政指導を始めているのです。これは英断。手遅れになる前に断固とした措置を繰り出した中国の銀行監督当局はどこかの国のお役所とは違い、高く評価されるべきだと思いました。

 

しかし、建設しまくることで不景気を克服しようとしてきた中国のこれまでのアプローチはここへきて輝きを失い、色褪せた手法のように感じられはじめています。

 

中国の次の一手に期待したいと思います。

ドバイは再起できる

ドバイの政府系不動産持ち株会社、ドバイ・ワールドが債務履行モラトリアムを宣言したことで欧州の金融市場を中心にショックが走っています。

 

ドバイのバブルのクレイジーさを指摘し、それを糾弾することは簡単です。しかしドバイになぜこんなに資金があつまり、世界中から人が集まってきたのかについては通り一遍の理解しかされていないと思います。そこでドバイがなぜ今日のような姿になったのかについて書きます。

 

先ずドバイはアラブ首長国連合(UAE)の「都市国家」のひとつです。UAEは全部で7つの首長国から成り立っています。でもその中で規模が大きいのはドバイとアブダビだけです。

 

昔からドバイとアブダビはお互いに競争心を燃やしあうライバルでした。

 

確か最初に石油が発見されたのはドバイの方が早かったと記憶しています。でもドバイから出る石油や天然ガスは僅かの量で、すぐにアブダビに追い越されてしまいました。現在でもUAEの化石燃料の大半はアブダビから出ます。

 

さて、ドバイは既に1970年代頃から石油の枯渇の運命を悟っていました。そこで商業やサービス業に自らの活路を見出そうとしたのです。幸い、昔からドバイはインドから現在のイラクに至る貿易航路の中継地になっていました。またペルシャ(今のイラン)からも目と鼻の先であり、古くからペルシャ人との交流もありました。このため早くから国際的で異邦人に寛容な土地柄を形成していたのです。

 

ドバイは運送会社や輸入業者の為に無税倉庫を運営し、港湾の役務サービスを充実させアラビア湾における輸入品の集積地を目指しました。

 

また昔、未だ旅客機の航続距離が短かった時代は、所謂、南回り欧州線やアフリカ大陸へ向かう便のレイオーバーの空港としてハブの役目を果たしました。夜中の2時に極東からの便で到着した旅行者が数時間の間、旅の疲れを癒すためにチョッとホテルにチェックインするというような需要も出てきたのです。ドバイの出入国手続きが比較的スムーズなのはこのような歴史的な理由によるところが大きいです。

 

こうして気がついたときにはドバイはサービス立国を目指す国になっていたのです。

 

石油が無くて貧乏になるのが目に見えていたはずのドバイに対してアブダビが敵愾心を燃やしたのは当然です。でもドバイは商売上手だし、垢ぬけているし、国際的になりました。その一方でアブダビは田舎っぺで垢ぬけがせず、愚鈍だと揶揄されたのです。

 

今回、アブダビがドバイを助けなかったのは、だから当然です。

 

でも債務のリスケジュールによって時間さえ稼げれば、アラブ諸国のお金持ちはドバイに投資を再開すると思います。また町の活気も戻って来るでしょう。それはドバイという町がちょうどニューヨークのブロードウェイのステージのように多くの人々にとって活躍の檜舞台だからです。

 

ドバイはもともとベドウィン(遊牧民)などが住んでいた土地ですから、サービス業を営むあらゆるノウハウが最初はありませんでした。そこで航空会社のパイロットや客室乗務員、レストランのコックや通関の事務員、ホテルの従業員などあらゆる面で外国人の労働力に依存せねばなりませんでした。

 

「ひとつ自分で航空会社を興してやろう」と考える野心家の欧米人が航空会社を旗揚げするのもドバイなら、ホテルの支配人になりたいという立身出世の夢を抱いてインド人が渡って来るのもドバイなのです。高学歴の若い女性の働き口が少ないエジプトからは独身の女性が客室乗務員として働きに来ます。このようにインド亜大陸、北アフリカ、欧州などの野心的な若者がキャリア・アップを狙って集まって来る町がドバイなのです。

 

その一方でイランやサウジアラビアの国民もドバイにチョッと息抜きにやってきます。その理由はドバイには自由な空気があり宗教や政治や人種に寛容だからです。スンニ派の人も、シーア派のひとも、ドバイに来たら争いごとは控えます。テロリストもドバイをターゲットにはしません。なぜならドバイはスイスのように中立を守り、誰でもが憩える場所だからです。

 

レバノンやイラクから来たビジネスマンはドバイに高層ビルを建て、投資しました。本当は彼らは自分の出身地であるベイルートやバクダッドの再開発をしたいのです。でも戦争などの理由で自分の国では夢が実現できないのです。「祖国に平和が訪れるまで、とりあえずドバイに投資しよう。そして祖国が平和になったときはドバイで蓄えた富で故郷を再興するのだ」中東の実業家は誰もがこのような考え方をするのです。

 

去年の金融危機以降、原油価格が下落したのでバブルは弾けてしまいました。でも原油価格は70ドル台まで戻してきています。この程度の原油価格が維持できれば、中東産油国が富の再構築をするのは不可能ではありません。実際、さんざん馬鹿にされたドバイの対岸のカタールで建設されたロイヤルダッチ・シェルのGTL施設は大方の懸念や嘲笑に反して、いま巨大なキャッシュフローを生み始めているのです。

 

中東の富はまだまだこれからも積み上がるし、アラビア湾沿岸地方が潤えば中東の人々は必ずドバイに投資します。それはどんなに浮き沈みがあってもパリやロンドンやマンハッタンの不動産には一定の需要があるのと同じ理由です

 

なぜ4兆人民元の景気刺激策のような人工的な需要創造に依存し続けることはできないか?

ベトナムが11月25日にドンを5.2%切り下げて1ドル=17961ドンとしました。同時に1%の利上げをして金利を8%としました。なぜベトナムはドンの切り下げに踏み切ったのでしょうか?

 

それは人民元が原因です。

 

中国の人民元は米ドルにリンクされています。このところドル安が続いているわけですから、これはとりもなおさず人民元安になっていたことを意味します。このため韓国やベトナムなど、中国と輸出で競争している国々はとても苦しい戦いを強いられてきました。

 

実際、ベトナムが今回ドンを切り下げたのは10月の貿易収支が赤字の19億ドルと去年の5月のレベルに達し、投資家が不安になり、お金を自国にリパトリエーションしようとしたことから引き起こされたのです。外貨準備は165億ドルしか残っていません。

 

自国の通貨を切り下げると輸入品の価格が上昇するので普通インフレになります。折からベトナムでは食品を中心にインフレ懸念が出ていました。11月の消費者物価指数は4.35%増加しました。そこで今回、ドンの切り下げとともに1%の利上げが発表されたのです。

 

もう一つ悪いことにベトナムは去年の金融危機以降、中国を真似て積極的な景気刺激策をしてきました。

 

ベトナム政府は高金利で借り入れをしてしまった企業を助けるために金利補助金制度により低利の貸し出しを実施しました。これは去年、物価が沈静化したとき企業の金利負担だけが高止まりしていたので資金繰り困難に陥るところが出たからです。

 

この低利借換えを促進する融資は政府系金融機関経由で貸し出されました。加えてベトナム政府はGDP83%に上る景気刺激予算を組みました。これは中国、マレーシアに次いで大きい予算です。

 

さて、ベトナムの積極的な融資は不動産市場にお金が向かってしまい、不動産バブルを誘発しました。今回、利上げに踏み切るひとつの理由はバブル潰しです。ベトナムの場合GDPの8.3%でバブルが起きてしまったのですが、中国の場合、GDPの12%の景気刺激予算を組んであります。すると心配になるのは、中国の不動産バブルもコントロールがきかなくなるのではないか?ということです。

 

中国の銀行監督当局はこのことをとても心配しています。銀行監督当局は5大銀行に長期資本計画の提出を求めました。また増資計画案の提出を要求しました。なぜなら今、増資しておかないと後で焦付きが増えた時、困るからです。この一連の指示の中で銀行監督当局は過小資本の銀行については①新規ビジネスの許可をしない、②海外進出を許さない、③新規支店出店の制限、④その他業務拡張を制限するなどの方針を打ち出しました。

 

これは何を意味するかというと、中国の銀行融資は先ず相次ぐ大型増資で体力をつけてからしか融資は増やせないことを意味します。若し大型増資をしない場合は融資自体をぐっと絞り込む必要があります。これはどっちにしても株式市場にとってはマイナスです。

 

さて、金融危機以降、アメリカや中国は財政出動や緩和的な金融政策によって不況に立ち向かってきました。

 

これに対してブラジルの危機対策は極めて対照的でした。

 

つまり財政出動は金額的にもごく僅かでしたし、危機対応の財政出動は現在までにほぼ終了しています。また超緩和的な金利政策も採用しませんでした。

 

つまり政府が人工的にブラジル経済を引っ張り上げなくても、ブラジル経済は自力で復活したのです。

 

金融危機に際してもブラジルがびくともしなかった理由は幾つか挙げることができます。

ひとつは去年、米国で金融危機が発生したとき、既にブラジルのファンダメンタルズは絶好調だったことが先ず指摘できます。

 

政府の公的債務がGDPに占める比率は2003年の54%から38%程度にまで下がっていました。また去年の8月の時点で外貨準備が2050億ドルあったので、純債務はほぼゼロだったのです。

 

問題としては「レアルが強すぎる」ということがありました。

 

去年の夏の時点で国内信用の約19%が海外の金融機関から提供されていました。もっと簡単な言い方をすればアメリカをはじめとする外銀が融資をしていたわけです。

 

ところが金融危機が来るとアメリカや欧州の銀行はお金を引き揚げようとしました。

するとそれまでクラウディング・アウト(はじき出されること)されてきたブラジル国内の銀行は外銀が出て行った後でその空白を埋めました。

 

ブラジルの大企業は外銀からの借り入れを返済し、国内金融機関から借り換えしました。ブラジルの大企業が外銀へ借金を返済する支払いでレアルは急落し、これが「レアルが強すぎる」問題を自然に解消しました。

 

ブラジル中銀は危機の前からリザーブ(中央銀行への積立金)を引き上げるなど、予防的な措置を講じていたので、危機がおきたとき、国内金融機関は余裕でブラジル企業にお金を貸すことができたのです。

 

ブラジルの銀行の自己資本比率はバーゼルⅡに基づくと17%あり、BIS基準の8%を大幅に上回っています。つまり自己資本のクッションが十分にあるわけです。

 

現在のブラジル経済の好調は中国のように4兆人民元の景気刺激策だけに依存するいびつなものではありません。

 

先ずブラジル経済は2003年以来、去年までに870万人分の新規雇用を創造してきました。確かに去年、金融危機が発生した後は80万人分の雇用が失われたのですが、2月以降は再び新規雇用が増え、100万人分の新しい雇用が創出されました。つまり既に金融危機で失った雇用の全てを回復したのです。

 

また実質ペイロールも着実に上がっています。2006年には97だった実質ペイロールは現在は117になっています。つまり賃金労働者のベースは拡大しているのです。

 

このことはスーパーマーケットの売上高(インフレ調整後)指数を見てもきちんと反映されています。2006年には100だったスーパーの売上は現在、119になっています。

 

ブラジル中銀が分類するところの中流(ミドルクラス)が国民全体に占める比率は2002年の42.4%が2009年6月には53.2%にまで拡大しました。また貧困層は同時期に29.2%から18.3%へと減少しています。

 

こうした安定した雇用環境を反映し、消費者信頼感指数も現在115と過去最高の水準にあります。

 

これらのことは何を意味するか?と言えば、不自然な内需振興策などにより人工的な需要をでっちあげなくても自然体のままで消費は絶好調だということです。

 

また作為的な低金利も無いためにバブルがおこるリスクも低いです。

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