Market Hack

勇気を出して試行錯誤の回数を増やさなければ日本は救われない

進化シリコンバレーの話をチョッと書いたらいろいろな人からTwitterで反響を頂きました。ありがとうございます。

中でも僕の目をひいたのはEurosellerさんの「独立→失敗→再就職可能の仕組みがないし、そういう人に資金を出そうという仕組みもない」というコメントです。

そう言われて、これは仕組みの問題なのだということにハッと気がつきました。

若しそういう仕組みが今、日本に無いのなら、大至急それを作る必要があります。

また仕組みが既にあってもうまく作動していないのだとすれば油をさしたり錆びているところをピカピカに磨き上げて、もう一度イノベーションのマシーンが動き出せるように愛情を込めてメンテナンスしてあげるのが我々の仕事なのでは?

兎に角、勇気を出して試行錯誤の回数を増やさなければ日本は救われません。なぜならそもそも何が成功するかは誰にもわからないし、おまけに世界の変化の速度はどんどん速くなっているからです。

世界のリスク・キャピタルはいま凄いペースで中国やインドやブラジルに流れています。彼らの資本調達コストはどんどん廉価になり、世界の投資家は彼らの失敗にはどんどん寛容になっています。

それは中国企業やインド企業がいろいろなことを試すチャンスがふえていることを意味します。また資本のちからにモノを言わせて腕力で日本をねじ伏せてくる時代が遠からず来ることを意味します。

日本人が失敗しないことにばかり心を砕いている間に我々が分け前に預かることのできるパイそのものの大きさはどんどん小さくなっているのです。

パイをどうやって増やすかを考えようとせず、それを如何に公平に分けるかに時間の大半を費やしている姿には少し危機感を覚えます。

錆びついているのは日本のエンジニアの夢ですか?それとも官僚や政治家の頭の方ですか?

日本にもシリコンバレーは出来かかっていた それを潰したのがホリエモン事件だ

「日本にシリコンバレーを作る方法」というブログ記事をたまたま目にしました。

それで少し考え込んでしまいました。

なぜなら僕は日本にもシリコンバレーはもう少しのところで出来かかっていたのではないか?と思ったからです。

渋谷が「ビットバレー」とか呼ばれて、面白いスタート・アップがいろいろ登場した、、、あれは何だったのでしょうか?

思うに日本人はエンジニアの人たちの才能の面でもアイデアの面でもぜんぜん世界標準に比べて負けていません。

でも日本が完全に負けている部分があります。

それは失敗を犯すことに対する寛容な態度の欠如です。

計画的な犯罪でない限り、わざわざ失敗させることを前提にビジネスを始める人間は居ないでしょう。ましてやまじめなエンジニアの人たちは自分の理想や夢を実現したいがためにスタート・アップを始めるケースが多いのだと思います。お金とか云々じゃなくて、兎に角、自分がスゴイと思う製品やサービスを実現したい、それが起業の動機なのです。

これは日本でもアメリカでも同じです。

ただアメリカではそういう起業が失敗したとき、「またがんばろうね」くらいで失敗に対するとがめは少ないし、チャレンジに失敗した人がそれをはずかしく思ったりしなければいけない理由はありません。

ところが日本だと起業に失敗した人は犯罪者同然に扱われます。社会に復帰できないし、家族離散とか、悲惨な目に遭うケースもあるかも知れません。

若し上手くいかなかったときに自分が払う羽目になる代償の大きさを考えた時、ひとは起業を諦めるのだと思います。

しかも少しでも成功して「成り上がり」になろうものなら、社会からねたみ、そねみの目を向けられ、少しでも隙があれば徹底的に糾弾されます。

僕はルール違反を犯した人間を擁護するつもりは全くないし、そもそもホリエモン事件の経緯を良く知らないので見当違いなことを書いているかも知れませんが、あのとき寄ってたかってホリエモンを袋叩きにした日本という社会には少し怖いものを感じたし、順法、違法というタテマエ論以前の、「出る釘は打つ」式の陰湿な社会風土を感じざるを得なかったです。

僕がシリコンバレーの投資銀行、H&Qに勤めていた時、H&Qの創業者のビル・ハンブレクトは:

失敗を恐れてはいけない。きみのクライアント企業が失敗したら、「よかったね、これであなたも失敗してはいけないという心の呪縛から解放されたわけだから、次からは成功できるよ」と励ませ!

と口癖のように言っていたのを思い出します。

失敗者に門戸を開き、温かく迎え入れる、、、ビルはこのことをたんなる掛け声ではなく、自分から率先して実行していました。

たとえばスティーブ・ジョブスです。

ジョブスはアップルの経営がおかしくなったとき、自分の雇ったジョン・スカリーから解任され、アップルから放り出されました。でも「行くところが無くなった」ジョブスをハンブレクトは温かく迎え入れます。

だからスティーブ・ジョブスが「ちょっと近くまで来たから親爺のところへ寄ってみたのさ」といってH&Qのオフィスに遊びに来たらすぐにブラウンバッグ(=サンドイッチを包む茶色の紙袋のこと)・ランチを招集したものです。

つまりジョブスが「浪人」していようが、そんなことはカンケイないのです。


Now that you have actually failed, like countless others, you became FREE to succeed.

ビルのこの言葉を聞いた時、本当のシリコンバレーの強さを垣間見た思いがしました。

投資情報のクラウド・ソーシング

「ミセス・ワタナベ」に代表される、新しい世代の若い投資家が最近増えています。

その背景にはFXに代表される、誰でも少額から気楽に始められるトレーディング機会の増加があります。

僕はこの社会現象を「カジュアル・トレーディングの時代」と呼んでいます。

これらの沢山の若い投資家はアイフォーンやTwitterを縦横に使いこなします。つまりテクノロジーに対するアレルギーは無いのです。

その反面、従来型の対面型証券会社に対しては「敷居が高い」と感じているし、『東洋経済』や『日経』などは購読しません。

カジュアル・トレーダーの特徴は一回の取引ロットは小さいけれど、アセットのベロシティー(回転率)は極めて高いという点です。

これは委託注文形式で取引所につなぐタイプの執行形態では、しばしばコストがかかりすぎて採算割れになります。しかし店頭仕切りによる約定手法では工夫の仕方によっては採算確保の余地があります。

実はこのようなカジュアル・トレーディングならびに独自執行システムによる店頭仕切り売買の将来性の大きさにドイチェバンク、シティグループ、ゴールドマン・サックスなど一部の投資銀行は気づき始めています。

彼らは現在、フロー・デリバティブズという部門でこうしたリテール・ビジネスからの需要に対応していますが、証券不況だった去年、今年にあってもこの分野だけは採用枠が拡大しています。

別の言い方をすれば投資銀行も小口投資家のカジュアル・トレーディングを将来のビジネス・オポチュニティーと捉えているわけです。

問題はテクノロジーを縦横に使いこなす新しい世代の投資家たちは、これまでの情報収集の方法には満足していないという点です。

FXやCFDはポジションを建ててから15分程度で決着がついてしまう場合が多いです。

すると月刊誌や週刊誌の編集サイクルではとてもじゃないけどカジュアル・トレーダーの投資判断の役に立つコンテンツを届けることは出来ないのです。

もちろん『ダイヤモンドZAi』に代表される投資雑誌には良い点も多数あります。例えば読みやすい、要点がわかりやすいなどの利点です。つまり雑誌の強さは「編集力」から来ている部分が大きいのです。

しかしこれを「帰宅後トレーダー」の人たちのために、リアルタイムで発信しようとすると膨大な人件費を投入する必要が生じます。

一方、カジュアル・トレーダーの側でも不便な点がいろいろあります。

なるほど情報はかなり流れてくるようになっているが、どのニュースが重要で、どのニュースが無視すべきものなのかが判断できないという点です。

また肝心な、夜のトレーディングの時間に日本語ニュースがどんどん細ってしまうので、どのニュースの鮮度が高く、どのニュースが既に織り込み済みの古い情報なのかがわからないという問題も生じます。

結局、カジュアル・トレーダーの求めている情報は端正で完璧なニュースではなく、「これで十分」というおおまかな流れがわかれば、それで良いのです。

またこれは投資に限らず、他のネット・ショッピングにも共通する現象ですが、消費者は企業の発信する広告やリサーチに対してはある程度距離を置いて接します。ところがネット上の他の消費者のもたらす情報には極めて敏感に反応します。ユーザーとしてのフィルターがかかっていることを重宝するわけです。

Twitterはしばしば「リアルタイム・ウェブ」と形容されます。なぜなら必要な情報がネット上に瞬時にばら撒かれるからです。これに対してグーグルのサーチ・エンジンはクローリングと称してサーチ・エンジンが定期的にウェブサイトを巡回して検索情報を追加してゆきます。これではFXなどのリアルタイム・トレードには対応できないのです。

「これで十分」という情報で、既にユーザーとしてのフィルターがかかった、注目するに値する情報をTwitterのようなリアルタイム・ウェブでばら撒く、これこそがカジュアル・トレーディング時代の唯一、経済的な情報提供モデルだと思います。

つまりTwitterのようなソーシャル・ウェブが「草の根情報網」の構築に最も適していると思うのです。

中国の11月の経済統計の印象

中国の11月の経済統計が発表されています。
まず鉱工業生産は予想の+18.2%に対し+19.2%という強い数字でした。これが今回発表された一連の数字の中でもとりわけ目をひきました。

この数字をどう評価するかですが、去年の同時期はリーマン倒産後の一番混乱した時期に相当し、前年比較が極めて容易です。ですから増加率(%)で物事を考えてはいけないのかな?と感じました。

次に銀行融資ですが(ページをめくってください)「市場予想を大幅に上回った」と喜んでいる投資家も居るようですが、全体的な文脈の中では11月の融資額は今年2番目に少ない金額です。

また過去の、ノーマルな融資額のほぼ真ん中に相当する金額であり、「巡航速度」の順守に戻ったと考えるのが自然です。

3ページに移ると小売売上高ですが、これは予想の+16.5%に対して+15.8%と駄目な数字でした。グラフを見ても明らかにダウンティックしています。

「中国のストーリーは内需だ!」と宣言するマーケット・ウォッチャーが多数派ですが、僕はもう少していねいにその中身を吟味する必要を感じています。

つまり皆が「内需だ」と指摘しているもののかなりの部分は実は「官需」なのです。

中国の国民は稼いだお金の少なからぬ部分を消費ではなく貯蓄へ回します。

だから消費は案外、弱いのです。

そう書くと「でも自動車は強いじゃないか!」という反論が聞こえてきそうです。確かに自動車は強いです。でも自動車や不動産など、所謂、ビッグ・チケット・アイテムが好調な背景にはそれらの消費を後押しする政策的支援があったからです。消費税の減免などがその例です。

自動車の消費好調が単なる景気全般との1対1の連動になっていないことは北京オリンピック前の1年半位を思い出してみればすぐにわかります。

当時は景気全般は好調の中で自動車だけが金利政策面、産業政策面のアゲインストの風を受けて低迷しました。その当時、中国の自動車株に投資されていた皆さんは随分フラストレーションを感じたに違いありません。

さて、現在の内需に話を戻すと「官需」と自動車、不動産などの政策的に演出されたビッグ・チケット特需を除けば中国の消費は冴えません。

4ページ目は物価のグラフです。今回消費者物価が久しぶりにプラス圏にもどった(+0.4%)のが話題になりました。特に天候不順から食品価格が高騰しはじめています。これは中国の泣き所であり、古くから中国株をやっている人なら気をつけないといけないリスク・ファクターが頭をもたげはじめていると感じるでしょう。

最後に貿易(5ページ)を見ると今回は輸入がリバウンドしました。中国は加工輸出型経済ですので先ず原材料を輸入し、それを加工して再輸出するという経済のモデルになっています。従って輸入の増加は将来の輸出の増加の先行指標だと考えるエコノミストも居ます。

インドに新しい州が生まれる



インドに新しい州が生まれようとしています。

アンドラ・プラデシ州の一部であるテリンガナ地方では独立運動が1950年代から続いていましたが、今週になって学生のデモが過激化したのでインド政府が急きょテリンガナを新しい州としてアンドラ・プラデシ州から分離すると発表したのです。

テリンガナはハイデラバードを含んでおり、ここはアマゾン・ドットコム、マイクロソフト、デル、IBMなどの多国籍企業がオフィスを構え、アンドラ・プラデシ州の歳入の15%を稼ぎ出しています。

いまのところハイデラバードがテリンガナの一部になるのか、それともワシントンDCのような特区になるのかは判然としていません。しかし若しテリンガナ州の州都になり、新たな政治的不安定要因を抱える事になれば外国企業は逃げてゆく可能性もあります。

地政学シンクタンク、ストラトフォアのアナリスト、レバ・バハーラによると「州として認定されるためにはどのような条件が必要か?それを規定することは容易ではない。その表現の仕方によっては他にも離反、独立したいと考えている地方はインドにたくさんあるからだ。エスニック・グループは今回のテリンガナの一件でテランガナのように暴れれば独立を得られる可能性があると考えたに違いない」

インドにはレバ・バハーラが指摘するように無数の独立運動があります。それらの独立運動の中にはかなり重武装してインド陸軍を悩ませているグループも多いです。つまりインドにとって前線は国内に存在し、毎日戦死者が出ているのです。

ハイデラバードはハイテクのみならずドクター・レディーズ(RDY)などの薬品会社の拠点でもあります。

今回の事件がエスカレートするようだと欧米企業の直接投資にネガティブな影響をもたらし、それがインド株式市場の調整入りにつながるリスクも無いとは言えません。
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