Market Hack

自分の会社の株すらていねいに売れない証券会社に他の企業から主幹事を任される資格は無い シティグループ(C)の見苦しい公募

シティグループ(C)が2日前にほのめかした公募増資を今日、引け後、やっとの思いで値決めに持ち込みました。

今回のディールではシティは全ての公募の掟をやぶりました。

先ずディールをローンチ(正式発表)する前から公募を計画している事実がマーケットに漏えいしたということ。これはインサイダー取引などを誘発する可能性のある、たいへん危険な状況です。シティの情報管理は出鱈目。

次にマスコミがこの情報をキャッチして、記事になった後でもディールの細目が愚図愚図決まらなかったこと。これは事前の根回しや準備不足を示唆しており、ヴィクラム・パンディットはじめトップの経営陣がハチャメチャな状態のままでコミットメント・ミーティングに入っていたことを感じさせます。

それから株を出すと決めてからまる2日も値決めに持ち込めず、醜態晒しながらのたうちまわったのもショート・セラーの餌食にされる結果をもたらしました。普通、こういうスポット公募は市場が閉じている間に済ませてしまうのが鉄則です。

またFOMCを跨ぐタイミングでディールをローンチしたのも信じられないくらいしろうと臭いやり方です。

結局、ディールが発表されてから20%も下の水準での値決めとなってしまいました。

あまりの株価の下落に、当初、公募で持ち株を処分する予定だったアメリカ政府は実現益ではなく、実現損を出してしまう値段まで下がったため、政治的配慮から今回の売り出しへの参加を取りやめてしまいました。

問題は他の投資家は「政府の影響力が下がるのだからこそ、シティを買う」という魂胆だったという点です。公募後も政府がしこたまシティの株を持っているのであれば、MSCIなどに代表される指数におけるシティのウエイトは引き上げられる事はありません。

指数におけるウエイティングの上昇を見越して今回の公募に応じたパッシブ系のファンドはすぐにシティの株をぶん投げるでしょう。

今回の金融危機でシティグループというフランチャイズがいかに深く傷ついたかを改めて思い知らされるディールでした。

合掌。


エゴール・ガイダール死去 いまの日本に必要なのは彼のようなデカイ夢を見れる人だ

ロシアが計画経済から市場経済へ移行する際の「設計者」の役割を果たした経済学者(後の副首相)、エゴール・ガイダールが死去しました。


ガイダールはロシアでも有名な共産党幹部の家系に生まれ、一家が海外の任地に駐在させられたことなどから普通のロシア人には許されていない西洋の書物などに接する機会がありました。ガイダールはアダム・スミスやポール・サミュエルソンの著書に触れるうちにソ連の経済がいずれ取り返しのつかない危機に瀕することを予感し、早くから有識者の集いを組織します。

 

ソ連の取るべき新しい経済政策はどうあるべきか?を討議する非公式なシンポジウムは既に1986年から毎年開催され、後に国家企業の民営化の責任者となったアナトリー・チュバイスなど新しいロシアの経済を動かしてゆく中心的な人物の多くがこのグループから輩出されます。

 

その後、ガイダールは共産党の機関誌である『コミュニスト』の経済記事の編集者に任命されたことから、検閲を心配することなく新しい経済の在り方について論陣を張ってゆきます。従って1991年11月にガイダールが副首相に任命され、ゴスプラン(国家計画委員会)の総責任者になった時点では既に市場経済以外にロシアを救う道は無いということをガイダールは確信していました。

 

問題は計画経済から市場経済への移行を具体的にどう進めるか?ということです。そのアプローチとしては段階的に徐々に市場経済を導入する方法と、共産主義の枠組みを即、解体して、いきなり市場経済へ移行する、所謂、「ショック療法」という方法が議論されました。

 

今から振り返って見ると、徐々に市場経済に移行するという選択肢は「時すでに遅し」で実際には存在しえなかったように思われます。「ショック療法」の影響はそれまでベールに包まれていたソ連経済の内包する病理を全て一度に曝け出してしまうというものでした。

 

1999年までにはロシアの経済規模は10年前の約半分程度迄縮小し、この過程でロシア国民が味わった辛苦は1929年のNY市場の大暴落に端を発する大恐慌の時以上だったと言われます。

 

「ショック療法」の施行第一弾として1992年1月から電灯光熱費や一部の食材を除く殆どの品目に関して価格統制が取り払われました。当然の結果としてその直後、ロシアはハイパー・インフレに見舞われます。価格の値上がりを容認する狙いは退蔵されている商品を市場に引き出し、物資の不足を解消すること、また、儲ける機会を提供することで生産を刺激することにありました。

 

しかし、長年の共産主義のリズムに慣れたロシア経済が、瞬時に新しいスピードについてゆけるはずはありません。経済の混乱はすぐに解決するどころか混迷はますます深まり、政府の内部でも経済改革を押し進める決意は揺らぎました。その結果、支持を失ったガイダールは1年足らずで副首相の地位を辞任に追い込まれます。

その後のガイダールのキャリアは経済改革の不人気のせいもあって「鳴かず飛ばず」であったと形容することができると思います。

しかし80年代の、経済学に関する違法地下集会を組織するところから草の根的に経済改革運動を盛り上げていった彼の勇気は今から20年、30年すれば(=つまりプーチンがリタイアしたとき)、改めてロシア国民から感謝、尊敬されることでしょう。 

君には断末魔の叫びが聞こえるか? 他人事ではないEU内部でおこっていること

PIIGS GDP
PIIGS Fiscal balance
EU内部では「持てる国と持たざる国」の間の軋轢が増しています。
「持たざる国」とはポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインを指します。
これらの国はその頭文字を取ってPIIGS(=豚)と呼ばれています。
ドバイの問題が話題になった時、同時進行でギリシャをはじめとするこれらのEUの落ちこぼれの国々の信用に対しても不安が走りました。
しかしドバイとPIIGSでは問題の性質がかなり違います。
PIIGSの場合、慢性的な低成長とそれを克服する決め手に欠いている事が投資家の動揺の原因です。
加えて財政赤字を垂れ流していることも問題視されています。

これらの国々はEUならではの特殊な事情で手詰まりになっている面があります。

先ずPIIGS各国はユーロのメンバーなので勝手に自国通貨を切り下げて輸出競争力を向上するというトリックが使えません。

第二にEUのメンバーはStability Pactと呼ばれる、健全財政に対するコミットメントを要求されており、極端な財政出動は出来ない合意になっています。

経済成長が無ければ、財政収支の改善も出来ない、、、そういう「貧すれば鈍する」パターンにはまってしまっているのです。

ギリシャの場合、格付けがBBB-以下になったらECBからの当座の資金の融通をつけてもらう際、ギリシャ国債を担保に持ち込むことを拒否されるきまりになっています。この危機ラインまで、あと1段階しかありません。

いまギリシャでしきりに議論されていることは「もしもの時、IMFに駆け込むのと、ドイツなどの個別の政府に土下座してお金を借りるのとでは、どちらが良いか?」というきわめて差し迫った選択です。

IMFからお金を借りるといろいろ箸の上げ下ろしまで細かくIMFから注意されます。また普通、IMFからお金を借りるのはオケラになった国がやることだというネガティブなイメージがつきまといます。

そこでドイツなどのお金持ちの国に泣きつくという第二の方法も議論されています。「そんなのって、ありかよ?」というユーロの精神の見地からの反対意見もありますが、このへんの規定はグレーであり、「まあ特例は認めてもよい」というのがコンセンサスになっているようです。

このようにリッチな国が個別で困った国を救済するとユーロの信認がなしくずしになるという懸念の声もありますが、この際、そういう外見を取り繕っている余裕はないのかも知れません。

ギリシャの抱えている問題は慢性的、構造的な低成長から抜け出せないことです。しかも公的部門が既得権益にあぐらをかいている関係で、教育、医療、公共サービスなどのシステム自体が機能不全に陥る寸前のところに来ているのです。去年起きたアテネなどでの街頭デモの暴徒化も一触即発のところまで追いつめられたギリシャの国民の自暴自棄なムードを表していたと思います。

さて、過去の危機を研究すると或る国で起こった危機は他の国へも飛び火し、それが危機の連鎖反応を起こすというケースがありました。タイ・バーツの危機に端を発したアジアの通貨危機がその一例です。

われわれにとってギリシャは遠い国です。しかし経済のファンダメンタルズを見ると共通点の多さに驚きを禁じえません。

危機の飛び火に対してガードを固める必要がありそうです。

ボーイング(BA)のドリームライナーが無事初飛行を完了

ドリームライナー
(出典:ボーイング)

今日、ワシントン州エヴェレットのボーイングの工場から「ドリームライナー」1号機が飛び立ちました。

この初飛行は当初の予定より2年以上も遅れた計算になります。

投資家や航空会社は待ちくたびれて、もう怒る気にすらならない、、、そういう倦怠ムードが漂っています。

しかし同機の初飛行はこれからボーイングに新しい新製品サイクルが訪れる事を意味し、同社の業績にとっては極めて重要なイベントではないでしょうか?

ドリームライナーは機体の50%以上がカーボン・ファイバーの合成素材で作られています。早い話が強化プラスチックです。その関係で機体は従来の旅客機より軽く、燃費は20%ほど改善しています。

既に865機のドリームライナーの受注残がありこれはボーイングの歴史で最も多い数字です。

マイクロファイナンス・バブルに警鐘を鳴らす

今から15年くらい前の話ですが、当時僕はS.G.ウォーバーグという英国の投資銀行に勤めていて、その会社では社員の有志のボランティア活動としてマイクロファイナンスを支持したり、インターメディエート・テクノロジーを貧しい国に提供するための募金をやったりしていました。

インターメディエート・テクノロジーとは『スモール・イズ・ビューティフル』を書いたE.F.シューマッハーなどが提唱したサステイナブルな中間技術を指します。具体的にはハイテクではなく、中くらいのテクノロジーのことを指します。つまり電気などのインフラが無い極貧国ではハイテクより先ず鋤や手動脱穀装置などが必要だろうということから始められた運動なのです。

僕は80年代中盤に少しバングラデシュに住んでいたこともあるので、グラミン銀行は設立当初から知っていました。そこでロンドンのS.G.ウォーバーグでボランティア事務局長をやっている奴にさっそく電話したのです:

僕:「あ、ジョン?僕だけど。マイクロファイナンスの話だけど。面倒だからIPOしちゃおうぜ、グラミン銀行。引き受けちまいなよ。」

ジョン:「、、、、、、、きみ、なんにもわかっちゃいないね。簡単に資金調達出来るということと、それがマイクロファイナンスの会社や開発途上国の貧しい人々にとって良い事か?というのは別問題なんだ。」

僕:「?、、、、お金が回ってくるってことが、そんなに悪いことなの?」

   ■   ■   ■

地域開発ファイナンスに対する、僕のエデュケーションはそうやって始まったのです。

断っておきますが、僕はもちろんマイクロファイナンスの熱烈な支持者です。

ただ、マイクロファイナンスを「ファンド」のような形で先進国の投資家に大々的にマーケティングし、盛り上げてしまうやり方には危惧を感じます。

別の言い方をすれば、我々はマイクロファイナンスの可能性を信ずるあまり「マイクロファイナンス・バブル」を作ることに一役買ってしまい、結局、発展途上国の人たちにとって迷惑な結果をもたらそうとしているのではないか?ということです。

なぜ「ファンド」が駄目かというと、それは「運用成績を上げる」という新しい利害をマイクロファイナンスの世界に持ちこんでしまうからです。これはマイクロファイナンスの目的とは異質の利害であり、まじりものが混入するとマイクロファイナンスそのものが歪んでしまう危険性があります。

すでに潤沢なマイクロファイナンス資金はインドの農村地帯などにどんどん投下され、年率70%程度のペースで融資資金が増えている地域もあります。

マイクロファイナンスで融資を受ける貧しい人たちは携帯電話を利用したメッセンジャー・サービスや機織りなど、比較的ベーシックなビジネスを興して生活の糧にして、ローンを返済してゆくのです。それが村中の人が携帯電話を購入してメッセンジャー・サービスを始めると顧客が居なくなるという笑えない現象も起こっているのです。

これはマイクロファイナンスに限ったことではありませんが、融資は「普通にきっちりと働けば、ちゃんと儲かってお金が返せる」ようなビジネス・チャンスがあってこそ、はじめて健全なカタチで実行できるわけであって、バランスが大事なのです。それを融資の資金力だけパワー・アップしてもサブプライム問題と同じような過ちを繰り返すことになりかねません。

むしろ我々が考えなければいけないことはマイクロファイナンスのようなローン(loan)の次に来る、株式資本(equity capital)をどう提供してゆくか?という問題ではないでしょうか?なぜならいつまでたっても利子のついた資本で事業をやっていてもある段階から上手く事業を拡張できなくなるからです。ガッツのあるrisk capitalを育む、、、これを考えてあげる事こそが今、われわれがやるべき事ではないでしょうか?

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