Market Hack

ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ⑤

iStock_000008207582Medium【金利環境の把握】 

ある投資対象への投資の是非を考える上でおそらく機関投資家と個人投資家の間で最も差が出るのが、金利環境の吟味です。

個人投資家は新興国などのGDP成長率へは高い関心を持ちますが、金利の動向には注意を払いません。

しかし株式投資を成功させる上で金利環境の把握は極めて重要です。これはどうしてかというと株式は通常、預金や債券などの確定利付き商品と競争関係にある
からです。

投資理論の世界ではそれらの確定利付き商品を「無リスク証券」と定義する場合があります。本来、預金や債券でも銀行が倒産したり債券の発行体が倒産することがあるため、「無リスク」ではないのですが、そういう特別な場合を除けばこれらの投資先は元本が保証されている上に利息がつきます。

いまそういう「堅い」投資機会がリーズナブルな投資リターンを提供しているのなら、リスクを冒してまで株式を買うのは気が引けます。金利は低ければ低いほど「株式との競争は、激しくない」と言う風に理解されます。つまり有利な投資先の選定にあたって、金利が低い、ないしは金利の低下が見込める市場というのは重要な要因なのです。

BRICs諸国のインフレ率

 

歴史的には新興国の金利は先進国のそれよりもずっと高かったです。たとえばルーブル危機のあった1998年のピークでは新興国債券指数と先進国債券指数の利回りスプレッドは15%もありました。現在は3%を切っています。この利回り格差は長期に渡ってなだからな右肩下がりを描きながら縮小しています。

いま、信用力の高い借り手ほど、安い金利で借金することが出来ると仮定するならば、ここに述べたような新興国の、先進国と比べた金利プレミアムの縮小は新興国の信用度が上がっているという風に解釈することも出来るのです。

なお、去年の世界的な金融不安の局面では新興国と先進国の利回りスプレッドは拡大します。その理由はより安全な資産を求めて投資家が退避行動を取るからです。そのような避難のための資金引き揚げをリパトリエーション
と呼びます。去年の十一月はこの影響で利回り格差が一時的に急拡大しました。

このような突発的な環境を別とすれば、新興国の金利は主にその国のインフレの状況に左右されます。一般にインフレは経済の関数であると理解されています。つまり景気が強すぎるとインフレを誘発するし、不景気だとインフレは起こりにくいというわけです。

この他にインフレになるシナリオとしては、その国の中央銀行がマネーの供給をじゃんじゃん増やした場合、インフレになる恐れがあります。また新興国でよくみられる例としては自国の通貨が弱含んだ場合
、輸入品の価格が高騰してインフレを引き起こすケースがあります。

いずれの場合もインフレは株式や債券などのペーパー・マネーの価値をぶち壊す危険がありますから、注意が必要です。上
グラフはIMFによる新興国のインフレ率を示したものですが、2007年から2008年前半にかけては好景気からインフレのプレッシャーが存在したことがわかります。このグラフには出ていませんが高水準のインフレに悩んだベトナムが金利をぐんぐん引き上げ、株式市場の急落を招いたのは記憶に新しいところです。

ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ④

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【若しオアシスを去らねばならない日が来たら?】

若しオアシスを去らねばならない日が来たら、そのときになって「さあ、これから何処へ行こう?」と途方に暮れていては遅いです。

 

その日が来ることに備えて、日頃から次の一手を考えておく必要があります。

私の考えでは有望なマーケットを選定するためには次の6つの基準をあてはめると良いと思います。

 

1.成長があるか

2.金利環境が良いか

3.通貨は健全か

4.投資のしやすさ(流動性)

5.取引コスト

6.株価評価が適正か

 

【成長があるか】

先ず成長があるか?という問題について考えます。

 

例えばBRICsを例に取ると向こう数年間の巡航速度のGDP成長率はインドの場合9%、ブラジルの場合6%、中国の場合10%程度ではないかと思われます。

 

これは少し楽観的過ぎる予想かも知れません。でも細かい議論はともかく、これらの国が日本より遥かに急速に成長していることだけは異論の余地は無いと思います。(ロシアだけは天然ガスや石油などの地下資源に依存する度合いが極めて大きいので、巡航速度のGDP云々という議論そのものが余り意味を持ちません。従って、ここではチョッと議論から外します。でも投資対象としてロシアがダメだということではありません。)

 

2003年以降、新興国の経済成長の速度は先進国よりも高くなっています。その理由は①生産ノウハウへのアクセス、②市場へのアクセス、③資本へのアクセスが確保されたからです。

 

長い間、新興国の経済は先進国のそれに比べて遅れており、その結果として先進国との賃金格差が極めて大きくなりました。このことは先進国の企業にとって国内でモノを作るより、新興国に生産拠点を移した方が遥かに安く製品を組み上げることが出来ることを意味します。今や海外生産は先進国企業にとって選択肢の一つではなく、ビジネスの前提にすらなっています。

 

新興国はこうした先進国の企業の進出によって生産ノウハウへのアクセスを確保したのです。商品のデザインや組み立てのノウハウは工場移転を通じてどんどん新興国へ伝播しました。また先進国における流通・小売市場の構造変化も新興国にとって有利に働きました。

 

その構造変化とはウォルマートに代表される大規模店舗の発展です。ウォルマートは通常、最も安い業者からしか仕入れません。逆に安く、しかも大量に商品を供給できる業者に対しては積極的に指導し、ウォルマートのニーズに合った商品を納品する術を教え込むのです。この結果、ウォルマートにさえ出入りすることが許されれば、市場へのアクセスの問題は一切、心配しなくて良くなったわけです。

 

最後に後進国が最も苦しむものは資本へのアクセスです。最初は先立つ資本が無いためにモノづくりは先進国の企業が新興国へ進出することによって実施される場合が多かったです。しかし現地の従業員が経験を積むと、自分で独立して工場を興し、海外の企業の仕事を請け負い始めます。そのうち資本を蓄積すると事業を拡張したり、多角化したり、投資資本を他の起業家に融通したりするようになります。

 

全体としての資本の蓄積が進むと国内の資本市場も整備されてきます。するとIPO(新規株式発行)などの市場も整備されてくるし、海外の投資家の関心も集めるようになります。資金調達の形態は融資中心から株式のIPOなどに移ります。また企業による直接投資は相対的に影が薄くなり、国際機関投資家のポートフォリオ投資が幅を効かせるようになります。これらのすべてのことは資本へのアクセスの問題を克服することにつながるのです。資本へのアクセスが確保できた時点で新興国の競争優位は動かぬものとなります

ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ③

iStock_000008207582Medium【強い者が遊牧する】
現在のアフガニスタンのヘルマンド盆地で1960年代にアメリカの肝いりでダムが建設され、定住促進の試みが行われたことがありました。

実際、ダムは完成し、農業に利用できる水は増えたのですが、結局定住は促進できませんでした。

その後、アフガニスタンはソ連から侵略され、長年の戦火の後、アルカイダなどテロリストの温床となっており、アメリカやイギリスはその制圧のために軍隊を送っています。

ヘルマンド盆地は今ではケシの栽培が盛んで、これがテロリストの財源になっています。

なぜ定住促進の試みは失敗したのでしょうか?それは長年の遊牧民の生活で中東には「弱い者は耕し、強い者が放牧する」という価値観が人々の中にしっかり根付いており、ダムが完成した後も放牧民は農耕を「弱い人間がやることだ」と軽蔑し続け、ライフスタイルを変えようとしなかったからです。
 
 

【日本は手狭になったオアシスか?】
さて、ノマド型投資の出発点として皆さんの
住んでいる日本の株式市場から考察をはじめたいと思います。

現在の日経225の水準は大体、1984年の水準とほぼ同じです。つまり四半世紀という歳月を経た今も当時と殆ど変わらない水準に置かれているわけです。

或る意味で私はそのようなマーケットに魅力を感じます。それはどうしてかと言うと、それだけ長い間、放置されてきたマーケットは株式用語で言うところの「日柄(ひがら)」が経っているからです。つまり「休養十分」というわけです。

しかし、1990年頃からずっと長期弱気相場を経験してきた日本株が、いきなり今年から復活するという保証はありません。実際、短期的に見ても、中期的に見ても、長期的に見ても日本の株式市場の先行きは楽観を許さないと思います。

 

 

短期的と言った場合、私は向こう2年以内の相場を考えています。モルガン・スタンレーの有名な調査では株式市場は2年先の企業業績に最も左右されるということが知られています。

足下の業績は円高の影響で不透明ですし、不動産価格や賃金に対するデフレ的なプレッシャーも根強いです。デフレ環境の中で業績を伸ばすことは企業にとって至難の業です。従って短期的には日本株は苦しいと言うべきでしょう。

 

一方、5年ないしそれ以上の長期で投資を考える場合は人口動態などの要因に頼る部分が増えてしまいます。

いま日本は世界の中で最も高齢化が進んだ社会のひとつであり、しかも高齢化は今でもすごい勢いで進んでいます。現在、日本は一人の退職者を3人の就業者が支えている計算になりますが、アメリカはこの比率が5人、インドは10人です。

人口に占める高齢者が多いということは消費が伸びにくいことを意味しますし、不動産や株式などの資産は生活のために資産を切り売りする売り手の増加で需給関係の悪化を招く可能性があります。すると自分の財産のうちの一部分は海外の資産を持っておいた方が良いという結論になるわけです。

ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ②

iStock_000008207582Medium【ノマド型投資の欠点】
ノマド型投資で最も難しいことを最初に断ってきます。それは撤退のタイミングです。

どの投資先が一番有望かを見極めるのは、実はそれほど難しいことではありません。

いち早くそういう有望なマーケットを特定し、その市場に関する勉強をし、ある程度成功を収めた後で、投資家は大きな危険に晒されるのです。その危険とは、自分が長い時間をかけて勉強したがゆえに未練が残ることです。

大きく儲けて味をしめたことで虜になる、最初は理詰めで投資先を選定していたのに、いつの間にか盲信的な「信者」になってしまう。

折角築いた大きな富を全部吐き出してしまうのはそういう時なのです。

自分が一生懸命勉強し、慣れ親しんだ投資対象国、たとえば中国でも日本でも良いわけですが、まずそれを捨てる勇気が無ければ、そもそもノマド型投資はできません。

これは簡単に実践できることのように思えるのですが、実際にやるとなると強固な意志が必要です。殆どの投資家はこの最後の「仕上げ」の部分で失敗してしまうのです。

【センチメンタリズムを排するノマドの哲学】
研究者によれば農耕社会では血縁よりも地縁が重要であり、その社会は階級的、保守的であるとされています。個人の自由より社会の安定が上位に置かれ、指導者はごく一握りの人間で、しばしば世襲制です。

羊やヤギを飼いならすという習慣は砂漠のオアシスでもともと農耕を営んでいた人々が覚えたことです。

しかしオアシスでは水が無限に出るのではなく、限られた資源を人々や家畜が分かち合わないといけません。つまりパイはきまっているのです。

より沢山の羊やヤギを飼い、より豊かになろうと思ったオアシスの民は限定されたオアシスの耕地の負担を増やさないために羊やヤギを放牧することを覚えました。良い牧草地を求めて夏には高い山へ、冬には渓谷や低い土地の草地へと移動を繰り返したのです。遊牧民はこうして生まれたのです。

遊牧にはさまざまなリスクが伴うので、家族の中で強い者だけが遊牧者として志願しました。遊牧民は強靭な身体と精神力をもっています。辛いライフスタイルである代わりに常に誰からも指図されない自由があります。

遊牧民は固い団結力と強いリーダーシップをもっています。遊牧の一群の最大規模はだいたい羊で言えば3000頭です。それ以上になると収量逓減の法則が働いてしまい、生産性は低くなります。すると沢山の比較的小さな規模の遊牧のグループができ、そのそれぞれにリーダーシップが出来あがるのです。

遊牧民には「自分はどこの国の国民だ」という意識は希薄です。それよりクラン(部族)への帰属意識の方が高いです。

ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ①

iStock_000008207582Medium【イントロダクション】
今日から数回に渡ってグローバル投資に関する新しい考え方を連載という形をとって提案します。
これは私が個人的に実践している手法であって、どこかの誰か有名な方が確立したメソッドではありません。
だからこのやり方をすれば成功するという類のものではぜんぜんありません。
ひとつだけ言えることは私が20年かかって到達した境地であり、欧米の投資家との切磋琢磨の中から編み出された現場のノウハウなので、見る人が見れば(ははあん、こいつはアレがやりたいんだな)とピンとくる、、、そういう類のものです。

   ■   ■   ■

ノマドとは遊牧民のことを指します。

遊牧民はひとつのところに定住せず、季節や自然のサイクルに合わせて移動します。

ノマド型投資とは、遊牧民のようにその時々の市場環境に適った、最も合理的かつ有利な投資先を選んで投資してゆこうという世界観ないしは価値観です。

通常、そのような有利な投資先は少なくとも3年から5年くらいは続く場合が多いです。

遊牧民は長年培った経験や知恵を生かして移動先を決めます。この遊牧民の自然に逆らわない行動様式には学ぶべきものが多いです。

次にフロンティア・マーケットを定義します。

私にとってフロンティア・マーケットとは「未だ一般の機関投資家によく知られていない投資機会」全般を指します。例えばロシアやブラジルなどの新興国もフロンティア・マーケットの例ですし、インターネットが最初登場したときはそれが大多数のプロにとって未知のものであったという意味ではこれもフロンティアです。

要するに「あたらしい発見がある場所」あるいは「埋めてゆかなければいけない知識ギャップが存在するところ」が即ちフロンティア・マーケットです。

相場の格言に「相場は知ったら、しまい」というのがあります。つまり或る投資機会が市場参加者に理解され尽くしてしまえば、その市場は効率的になるでしょうし、効率的な場所で他人を出し抜いて大きく儲けることはとても難しいのです。

新しい有望な投資機会が出現すると皆、競って勉強をはじめます。例えば最近、オリンピック開催が決まったブラジルなどはその好例ですね。後から後からその投資機会をモノにしようと飛び込んでくる参加者が居る限り、その投資対象に先回りしてポジションをこしらえた先行者は有利に勝負を展開できるのです。

でもいずれどんな新しいアイデアも使い古され、くたびれるときが来ます。それは換言すれば「フロンティアの喪失」です。相場的にはこの瞬間が最も危ないです。

なぜノマドの如く頃合いを見計らって投資を引き払う必要があるのか?と言えば、それはこの危機を回避することが目的なのです。

つまりウハウハで儲かる市場を探し求めるという行為と、放浪し続けるということは切っても切り離せないのです。
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