Market Hack

共和党がヘルスケア法案を放棄

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AHCAが頓挫した場合の責任を、ポール・ライアンに取らせる? →トランプ政権がやっていることは、シェルパをクビにしてヒマラヤに登ろうとするような愚行

いまワシントンDCから伝わってきているヒソヒソ話として、トランプの取り巻きは、AHCAが頓挫したら、その責任をポール・ライアン下院議長に押し付けるつもりのようです。

でもトランプは、今回、盟友であるフリーダム・コーカスの連中すら説得できなかったわけで、ここで「どのボタンを押せばよいか熟知している」ポール・ライアンを敵に回すのは、喩えて言えばシェルパをクビにしてヒマラヤに登ろうとするような愚行ではないでしょうか?

そんな低次元なことやってたら、税制改革法案なんてゼッタイに通りません。

思えば11月8日、トランプが番狂わせで当選したとき、マーケットが急落後、急反発した理由は、トランプが「ポール・ライアンは、下院議長のままで、いいんでね?」と発言したからです。

選挙期間中、公然とトランプをdisっていたライアンを、トランプが支持したことは、税制改革への決意をにおわせるシグナルだったのです。

その後、トランプ政権の閣僚を指名するにあたり、トランプが、いの一番に発表した人事は、「ラインス・プリーバスを自分のNo.2に指名する!」ことでした。

これでマーケットは「カァーッ!」と熱くなりました。

なぜなら(プリーバスなら、ポール・ライアンと同郷で、ポン友だから)という理由でした。

これらは、全て、税制改革法案を中央突破するためにゼッタイ必要な道具立てだとウォール街は確信していたのです。

ところが、いまワシントンDCから伝わってくるのは「今回の失態の責任は、誰が取るのだ!?」ライアンを切るか? プリーバスを切るか? というようなケツの穴の小さい、濡れ衣を誰に着せるか? という話です。

走り出したばかりのトランプ政権の車輪のひとつが、いまグラグラして外れそうになっている点を、しっかり観察してゆきましょう。


トランプ大統領の心変わり 下院共和党ヘルスケア・プランがダメなら、オバマケアで行こう!

ウォールストリート・ジャーナルの伝えるところによると、殿は心変わりをされたようです。

「オレはもう交渉し尽くした。これ以上、やることは無い。もし金曜日の投票で下院共和党ヘルスケア・プラン(AHCA)が否決されるのであれば、そのときはオバマケアで行こうや」

この発言を受けて、金曜日は下院で強行採決となる見込みです。

さて、このトランプ発言が意味するところは何なのでしょうか?

まずAHCAを投票に付したことで、トランプ自身は「おれは、支持者への公約は果たした。悪いのは共和党議員の方だ!」と責任をなすりつけることができます

ヘルスケア法案は、1)加入者をもっと拡充する、2)その一方で国民の医療保険負担は減らす、という、ほんらい矛盾する二つの目的を充足させようとする無理ゲー的な法案です。

だから、そもそも選挙期間中に「オバマケアは悪法だからオレが大統領になったら変えてやる!」と軽々しく約束してしまったのがまずかったわけで、勝ち目のない戦(いくさ)に、いつまでも拘泥していてはいけません。

だからトランプは、金融クラスタ風に言えば「サクサク損切り」したわけです

これは一瞬の恥だけど、中期的にみればトランプ政権が動きやすくなります。

その理由は、オバマケアをそのままにするならば、すぐに予算審議に移れるからです。

この部分は大事なメカニズムなので、きちんと説明しておきます。

トランプ大統領、ならびに下院共和党議員たちがいちばんやりたいことは税制改革です。そしてそれはウォール街が望んでいることでもあります。

なぜなら税制改革は30年に一度、起きるか? 起きないか? という大イベントだし、トランプ減税案は5兆ドルもの減税を見込んでいます。

それはキョーレツに景気刺激的であり、金利上昇要因であり、ドル高要因です。

だから投資家はそれに期待してポジションをとってきたわけです。

しかし税制改革法案は重要案件なので、上院で、いわゆるスーパー・マジョリティーという定数100に対し60票の賛成を必要とします。

現在、共和党は上院で52議席を占めるのみで、60には到底、達しません。

するとリコンシリエーションという「裏口」の方法で法案を成立させる必要があります。

その条件として「リコンシリエーションを使うなら、まず連邦政府予算を成立させなさい」というのが課せられているのです。

連邦政府予算を立てる上で、ヘルスケアコストは大きな支出項目になります。するとヘルスケアコストが固定できなければ、予算も立てられないということになるのです。

だから「オレが大統領になったら、オバマケアを葬り去る!」と高らかに宣言したことを、トランプ大統領は後悔しているのです。

「負け」は、認めてしまえば逆にチカラになります。オバマケアが継続されるのであれば、ヘルスケアコストは固定できるのだから、予算も立てられます。

今日の票決が「NO」でも、はいサヨナラ!で次へ行ける……それが、株式市場の望んでいる事なのです。

■ ■ ■

そうか、トランプの言う「交渉術(The Art of the Deal)」とは、身内の共和党員を裏切るということなのねwww

アート・オブ・ザ・ディール、炸裂ぅ!

Trump_the_art_of_the_deal

ウォール街関係者はなぜ下院共和党ヘルスケア・プランの票決を息を詰めて見守っているのか?

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今日、下院共和党ヘルスケア・プランの下院での票決があります。そのタイミングに関しては先の記事で書いたので、ここでは繰り返しません。

ウォール街関係者は、この投票を、息を詰めて見守っています。

なぜか?

それはこの投票が単一障害点(Single point of failure)だからです。

単一障害点はサプライチェイン管理や情報システム工学などでよく話題にされる概念ですが、単純化して言えば「そこが×になると、システム全体に支障をきたすようなポイント」のことを指します。

ウォール街関係者は、30年に1度、あるか、ないか?というような大事業である税制改革法案の成立に期待を寄せています。これが実現すれば、5兆ドルもの減税になる(=トランプ案の場合)と言われています。

しかし税制改革法案は重要法案なので、普通なら、いわゆるスーパーマジョリティーと言われる得票数(上院定数100に対し、60票)が必要となります。

共和党は上院で52議席しか占めていません。

幸いなことに、それでも法案を成立させることができる「裏口」があります。

それがリコンシリエーションと呼ばれる規定です。それを満たすためには二つの条件を呑む必要があります:

1) リコンシリエーションを利用して成立する法案は、期限を8年に限定する「時限法案」とすること
2) リコンシリエーションを使う前に、まず予算を成立させること

このうち、いま問題になっているのは2)です。

予算を立てるには、政府予算のうちの大きな支出項目を固定する必要があります。ヘルスケアは大きな支出項目です。

するとトランプ大統領が「オレが大統領になったあかつきには、オバマケアを葬り去り、もっと良いヘルスケア・プランに換える」と安請け合いしてしまったので、折角、オバマケア下では「固定されていた」政府ヘルスケア支出が、試算できなくなってしまったのです。

すると、政府予算を決めるには、まず下院共和党ヘルスケア・プランを可決することが必要になります。

その下院での投票が、きょう実行されるというわけです。

すると下院でこのヘルスケア・プランが否決されれば、当然、予算も立たないし、予算が立たなければ念願の税制改革法案に着手することすらできないのです。

つまり投資家がトランプ大統領に寄せている期待が、全て「パア!」になるということ。

大体、議会での審議なんて紆余曲折があるのが常識だし、(易い)と思って始めた取り組みが、とんでもない難行になることが常です。

今回の下院共和党ヘルスケア・プランだって、仮に今日、下院で可決されたとしても、次は上院で、もっと苦しい闘いを強いられます。

そういうリアリティーを良く理解せず、「ヘルスケア法案は4月に成立させたい」とか、ムニューチン財務長官にいたっては「税制改革法案は8月までに成立できる」とか、本来、誰も予期できないことを軽々しく約束してしまっているわけです。

ウォール街で働くものなら、誰もが「Under promise, over deliver」という原則をわきまえています。これは「最初の約束は控え目に。実際には期待以上の成果を出し、喜ばせろ!」ということです。

この原則は企業の決算についても言えることだし、証券会社の営業成績など、ありとあらゆる局面に共通する鉄則です。

しかしムニューチン財務長官がやっていることは「Over promise, under deliver」になりかねない危なっかしいことであり、これで若し8月までに税制改革法案が成立しなければ、「無能」のレッテルを貼られる事は間違いないでしょう。

アルファベットの株価が50日移動平均線を割り込んだ理由

アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)の株価が、ちょっと冴えません。今日はザラバ、50日移動平均線を割り込みました。

GOOGL

理由は、このところAT&T、ベライゾン、マークス&スペンサーといった超一流の広告主が相次いで「とうぶんYouTubeへの広告の出稿は見合わせる!」と発表したからです。

YouTubeはグーグルの各種広告プラットフォームの中でもアルファベットの利益に最も貢献しているドル箱です。

大企業がYouTube広告に対して「後味の悪い」経験をした理由は、ヘイトのコンテンツがUPされているにもかかわらず、その動画に併せてこれらの広告主のブランド広告が流れてしまい、消費者から苦情が来たからです。

下は典型的なYouTuber、ピュー・ディー・ピーの動画です。



彼の場合、5,300万人のサブスクライバーが居り、いわゆるユーチューブ・スターとなっています。

これらのユーチューブ・スターは、ときどきナチス礼賛や「ユダヤ人は皆殺しにしろ!」などのきわどい動画をUPします。グーグルは、それを監視・モニターし切れていないわけです。

まあ、早い話、グーグルのアルゴリズムがショボすぎて、対応できてないとが、広告主たちから問題にされているわけです。

そこでグーグルは当座の措置として(このYouTuberは安全だろう)と思われるYouTuberだけに限定して広告主が広告を出稿できるような選択肢を設けました。

グーグルとフェイスブックの2社で、デジタル広告市場の約半分を支配しているので、広告主はこれらの2社にたいして「まるでスタンダード石油のような寡占になっている」という不満を日頃から持っています。

デジタル広告の出稿見直しの気運が大手ブランド企業で広がると、広告単価の下落に拍車がかかる可能性もあります。
現時点では、一過性の問題にすぎないとおもうけれど、注意を払う必要があると思います。

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