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「スターバックス・キラー」の登場で中国のコーヒーショップ市場が騒然

先日、スターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)が第3四半期(6月期)決算を発表したとき、EPSと売上高はコンセンサス予想を上回りましたが投資家を「あっ!」と言わせる事がありました。それは中国アジア太平洋の既存店売上比較が-1%だったことです。

これまでスターバックスは米国での既存店売上比較の低迷に苦しんできましたが、中国をはじめとするアジア太平洋に投資家は一縷の希望をつないできました。

ところが今回の決算では下のチャートに見るように中国アジア太平洋の既存店売上比較のうち来店客(トラフィック)が-3%と信じられない落ち込みを見せたのです。

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スターバックスはすでに中国で3400店舗を展開しておりコーヒーショップ市場の80%のマーケットシェアを牛耳っています。いや、「スターバックスが中国人にコーヒーを教えた」と言った方が正しいでしょう。

しかしそこに瑞幸珈琲(Luckin Coffee)という強力なライバルが登場したのです。

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同社は強力なベンチャー・キャピタル各社から投資を受け、わずか9か月のうちに525店舗を中国各地にオープンしました。

7月16日にも2億ドルに上るファンディング・ラウンドを完了しましたが、元ウォーバーグ・ピンカスのメンバーが設立したベンチャーファンド、センチュリアム・キャピタル、GIC(シンガポール政府投資庁)など錚々たるVCが参加しました。現在のバリュエーションは10億ドルを超えており、いわゆるユニコーンの仲間入りをしました。

同社は5月にスターバックスに対して「独占的な行動を許さない!」とする公開質問状を送りました。これはある種の「炎上狙い」という風に中国では理解されているようですが、現在のスターバックスのマーケットシェアは高すぎるので軽率な受け答えをすると当局を刺激するリスクもあります。

瑞幸珈琲はハイテクを駆使したサービスを展開しておりWeChatを利用した「コーヒー・ウォレット」による支払なども受け付けています。

さらに同社は「オフィスに18分以内にコーヒーを配達します」というコーヒー配達サービスをアグレッシブに展開しており、さすがに脅威に感じたスターバックスは直ぐにアリババと組んで「30分以内に配達」というサービスを対抗上開始しています。

中国ではこれまでもeBayやUBERが進出すると直ぐにローカル企業がそのアイデアをパクり、外国企業に痛打を与えるということが繰り返されてきましたが、いよいよコーヒーショップにもそれが波及してきているというわけです。

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『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ばりの価格操縦がバイナンスを舞台に繰り広げられている ウォールストリート・ジャーナルの分析から

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が今年1月から7月末までの仮想通貨取引のデータをチャット・アプリでの会話と突き合わせることで価格操縦の実態を記事にしました。

そこではまずWSJがテレグラム(Telegram)ならびにディスコード(Discord)というチャット・アプリで暗躍するトレード集団をスクリーンし、105のグループを特定しました。そしてチャット履歴を辿り、「買い指示」が出た仮想通貨に関し、その指示が出た前後の価格の動きを分析しました。サンプルになったのは121種類の仮想通貨です。

その結果、このような相場操縦が8.25億ドルの売買代金に相当するトレードを引き起こしたと結論付けています。

普通、そのような「買い指示」が出た通貨は、その直後に暴騰します。上昇幅は+50%くらいのときもあれば+100%を超えるケースもあります。

しかしそのような急騰はほんの一瞬、つまり「買い指示」が出た後1・2分の出来事であり、すぐ誰かが大きな売りを浴びせるので価格は元の水準の方へ下げてゆきます。このような「持ち上げ」と「処分」のことを、Pump & Dump(パンプ・アンド・ダンプ)と言います。

この場合、仕掛ける本尊は機敏に売り抜けるので儲けることが出来ますが、のろまな個人投資家の多くは高値を掴まされ、瞬時で大損をこうむるわけです。

WSJはこれを映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を引き合いに出して説明しています。

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なお株式市場でこれをやると証券法違反になります。実際、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の実在のモデルであるストラットン・オークモント証券のジョーダン・ベルフォートは裁判で罪状を認めています。

ポイントはニューヨーク証券取引所(NYSE)などの連邦政府に監督されている取引所でこのようなことが起きると米国証券取引委員会(SEC)が踏み込むわけだけど、バイナンスなどの海外の仮想通貨取引所の多くは規制が緩い、もしくはそもそも規制されてない関係で取り締まることすらできないという点です。

もちろん、そのようなゲームにみずから進んで参戦し、「養分になる」のは個人の勝手でしょう。ただそういうワルサは何もブロックチェーンを使わない市場でも昔から行われてきたことであり、これはイノベーションとは無縁、たんなるマネーゲームです。

このようなことはブロックチェーンのイノベーションにとってdistractionでこそあれ、仮想通貨の草の根的な普及には何の役にも立たないと思います。



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フュエルセル・ブームは来るのか? ブルーム・エナジーIPOで90年代の乱痴気騒ぎの夢ふたたび ムーンショットを狙える投機性の極めて高い銘柄

ドットコム・バブル華やかなりし1990年代終盤、もうひとつのブームがありました。それはフュエルセル(燃料電池)のブームです。

当時はフュエルセルは主に「エンジンの代用品」という視点から開発されていました。今で言えばちょうどテスラに代表されるEVのようなノリだったわけです。

結局、経済的合理性のある価格でフュエルセルを自動車の動力にすることは叶わず、ブームは終焉しました。

今回のフュエルセル・ブームは、当時とは根本的に異なる点があります。それは用途が車載ではなく固定設置型であり、データセンターなど電力を大量に消費する需要家を相手にしている点です。だから競争相手はバックアップ・ジェネレーターや電力会社になります。

今回のブームの「台風の目」になっている企業は、先日新規株式公開(IPO)されたブルーム・エナジー(ティッカーシンボル:BE)です。

同社はネットスケープアマゾングーグルなどに投資したことで知られるカリスマ・ベンチャー・キャピタリスト、ジョン・ドーアが支援しています。

ジョン・ドーアは「空振り三振」も多いけど、大ホームランもかっ飛ばしています。

ブルーム・エナジーの創業者、KPシュリドハーは、もともとアリゾナ大学宇宙技術研究所のディレクターでした。

彼の専門は、電気から酸素を作る装置でした。NASAから「火星に人類のコロニーを作るに際して酸素が必要だ。だから酸素供給装置を作ってくれ」と頼まれ、それを考案したのです。この装置自体はNASAが採用し、実際に火星で試験稼働しているそうです。

ただ火星に人類のコロニーを作る計画自体は頓挫したので、「それなら起業家に転身する」とアリゾナ大学を辞めてしまったのです。

彼は「電気から酸素を作る装置」を逆流させ、「酸素から電気を作る装置」を考案しました。その後、発電効率を上げるため、酸素ではなく天然ガスを燃料に使うことにしましたが、天然ガスを燃やすことなく電気に変換することが可能です。

フュエルセルの良い点はクリーン・エナジーである点、変換効率が高く、ソーラーより効率的であること、モジュラーに増設できること、安全にホットスワップ(交換)できること、オフライン・メンテナンスも出来ることなどです。

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ソーラーパネルや風力発電は天候や日照により発電量が左右されます。その一方でフュエルセルは常に発電量が一定なので、いわゆるベースロードに適しています。だからソーラーパネルや風力発電と併せて使用することで夜間や無風の状態のときの発電量の落ち込みを補完することが出来るのです。極めて相性がいいです。

ブルーム・エナジーの顧客はAT&T、ホームデポ、ウォルマート、アップル、イーベイ、インテルなどです。またデータセンターのエクイニックス、病院のカイザー・パーマネンテ、大学・研究所のカルテックなど、絶対に停電してはいけない顧客もブルーム・エナジーを導入しています。

なかでもカルテックはJPL(ジェット推進研究所)を生んだ最高峰の工科大学であり、そこが主に「コストが安上がりで信頼性が高いから」という理由で電力会社からの電気の供給を断り、ブルーム・エナジーにほぼ完全に乗り換えたということはとても重要です。

同社は:

1) 機器の売上
2) オペレーション&メンテナンスの売上


の二種類の売上が立ちますが、将来的には機器のグロスマージンは30%、オペレーション&メンテナンスのグロスマージンは15%を目指しています。

さて、同社の過去の損益計算書は結構ゴチャゴチャしていて読み解きにくいです。これには2つの理由があります。

まず多くの顧客にとり「電気は電力会社から供給を受け、毎月電気代を払うもの」という先入観があったので、フュエルセルのユニットの「売り切り」のモデルを当初提案しにくかったという点です。

だからPPA(パワー・パーチェス・アグリーメント)という「毎月の電気代」の請求方式を一部採用せざるを得ませんでした。これはちょうどクラウドを通じてサービスを提供するソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)なんかと同じノリです。

ただこの課金方式の問題点はPPAではそれを供給するための資産、つまりブルーム・エナジーが製作したフュエルセル・サーバを自分が購入したカタチでバランスシートに「資産計上」しなければいけなかったという点です。また少数株主PPA債務もノンリコースであるにもかかわらずブルーム・エナジーのバランスシートに計上しなければいけませんでした。

早い話、バランスシートはぶよぶよに膨張し、損益計算書での売上高は過少に報告されるという、同社にとって面白くも無い計上にならざるを得なかったというわけです。

加えて米国連邦政府はクリーン・エナジーに対する税控除(ITC)をずっと行ってきたのですが、2017年だけ控除が廃止され、その後、2018年からそれが復活するという朝令暮改の政策に泣かされました。

ITC(タックス・ベネフィット)の変遷

2008年から2016年は 30%
2017年は0%
2018年は30%


つまり2017年だけは税控除特典が失われたので売上成長が減速する効果があったということです。

この朝令暮改で2017年分に関しても遡及的に控除が受けられると決まりました。その結果、2017年にはブルーム・エナジーのPPA分が3600万ドルの税金の「戻り」を受け、それが特別益に計上されています。

このように同社の過去の業績は色々な特殊要因が含まれており、同社の収益性を容易に把握することは難しいです。

ただ将来に関しては黒字化のロードマップは比較的描きやすいと思います。

ブルーム・エナジーは極めて投機性の高い株であり、「博打」です。でも場合によってはムーンショットを狙えるかもしれないので、同社のストーリーくらいは勉強しておくべきだと思い紹介しました。


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高配当利回りETFはこう選べ!

今日は高配当利回りETFを紹介します。

これらの銘柄を選ぶにあたり僕が気をつけたことは:

1) 時価総額が大きく流動性の面で問題が無いこと
2) 極端に高利回りを目指すあまりリスキーなポートフォリオになっているETFを避ける
3) 組み入れ銘柄が保守的で「なぜ高利回りか?」の理由がわかりやすい


ということです。

好きな順番に列挙すると:

iShares Core High Dividend ETF (ティッカーシンボル:HDV)
配当利回り:3.63%(SECベース)
費用比率:0.08%
組み入れ銘柄:エクソン・モービル、AT&T、ベライゾン、ジョンソン&ジョンソン、ファイザー、シェブロン、プロクター&ギャンブル、コカコーラ、ペプシコなど
寸評:王道の銘柄が組み入れられている。費用比率が極めて低い。総合的に見て文句なくベスト。

iShares Select Dividend ETF (ティッカーシンボル:DVY)
配当利回り:3.46%(SECベース)
費用比率:0.39%
組入れ上位銘柄:センチュリーリンク、PPL、オクシデンタル・ペトロリウム、フォード・モーター、ファーストエナジー、エンタジーなど
寸評:公益株の比率を高くしてある。景気後退に強い。インカム投資らしいポートフォリオ。

Vanguard High Dividend Yield ETF(ティカーシンボル:VYM)
配当利回り:3.17%(SECベース)
費用比率:0.08%
組入れ上位銘柄:JPモルガン・チェース、エクソン・モービル、ジョンソン&ジョンソン、ウエルズファーゴ、シェブロン、AT&T、インテル、ファイザー、ベライゾン、シスコ・システムズなど
寸評:やや銀行株の比重が高い。銘柄は王道。費用比率も極めて低い。

Wisdom Tree Emerging Markets High Dividend Fund (ティッカーシンボル:DEM)
配当利回り:4.04%(SECベース)
費用比率:0.63%
組み入れ銘柄:ルクオイル、ガスプロム、ホンハイ、チャイナ・モバイル、中国建設銀行、ICBC、シノペック、タトネフチ、MTN、中国海洋石油など
寸評:新興国の高配当株に投資するETF。投資対象が新興国だけに為替リスク、市場リスクがある。組み入れ銘柄数は多く分散はよく効いている。費用比率は高い。

SPDR S&P Dividend ETF (ティッカーシンボル:SDY)
配当利回り:2.38%(SECベース)
費用比率:0.35%
組入れ上位銘柄:AT&T、リアルティー・インカム、タンガー・ファクトリー・アウトレット、IBM、ナショナル・リテール・プロパティーズ、アッヴィ、オールド・リパブリックなど
寸評:REITの比重が高い。リスクに見合った配当利回りとは言い難い。



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アップルのPEGレシオは0.9倍で適正

先週アップル(ティッカーシンボル:AAPL)の決算発表がありました。良い決算でした。

これを受けてアナリストは予想数字を修正しています。2017年、2018年のEPS予想は上方修正されています。それを加味し、EPS成長率ならびに株価収益率(PER)を計算したのが下の表です。

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(*)= 2018年のPEGレシオに計算間違いがありましたので正しいものと差し換えました。ごめんなさい!

なおPEG(PE to Growth)レシオとはPERを成長率の数字(但し%はトル)で割算したものです。これは全然科学的じゃない手法ですが「投資家が大体利益成長率に見合ったPERをその株につけているか?」ということを大掴みに判定する際、一定の利用価値があります。

アメリカの投資コミュニティーでは「PEGレシオが1以下なら買い」という風に考えられています。

2019年のEPSは「いまから1年半後」の業績になりますが、株価は大体、1年半~2年先の業績を最も敏感に織り込むという習性があることが過去の研究で報告されていることから2019年のPEGレシオを使用するのが良いと思います。

するとそれは0.9倍であり、アップルのバリュエーションはおおよそその予想利益成長率に見合った水準で取引されていることがわかります。
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