iStock_000008207582Medium【通貨は健全か】

新興国に投資する場合、普通にマーケット環境が良い時には割合ラクに儲けることができます。ところが環境が変わると株安と新興国通貨の急落でダブルパンチを受け、短期間に大きな損が出ます。従って、通貨の健全性を日頃からチェックしておくことが極めて重要になるのです。

 

現在のように新興国の成長見通しの方が先進国のそれよりも良い場合は、より高い成長やより有利な金利を求めて先進国の資金が新興国へなだれ込みます。それは新興国の通貨を押し上げることになります。

 

新興国の通貨が強くなると株式投資の投資成果は①株価そのものの上昇で儲かることに加え、②通貨高でも儲かるわけですから、これほど結構なことはありません。しかしそこに落とし穴が控えているのです。新興国の通貨が高くなるとそれは輸出競争力の減退を招きます。輸出の不振は景気の悪化を招き、それは新興国からの投資資金の離散の原因になるのです。

 

従って、或る新興国の通貨が健全であるかどうかをチェックする出発点は先ず輸出に注目することです。現在の輸出額が直近のピークより5%以上、金額ベースで落ち込んだ時は要注意です。

 

次に経常収支に注目して下さい。経常収支は貿易収支に国際間の資本の移動を加味した数字と理解することが出来ますが、この経常収支が赤字になり、しかも通常の赤字幅よりもだんだん赤字が拡大しているときはとりわけ注意が必要です。

 

そして通貨不安の出る国は大体、外貨準備が減り始めます。これが出たら赤信号です。なぜなら外貨準備が減っているということはその国の中央銀行が外貨準備を使って自国通貨を買い支えていることに他ならないからです。

 ロシアの外貨準備

残念ながら、どんなに経済の基礎要件が健全な国でも通貨の売り崩しのターゲットにされるときがあります。それは去年の金融危機のような状況で、投資家のリスク許容度が大幅に下がってしまった場合、内容が良かろうが、悪かろうが、兎に角、すべての投資を一旦引き払うというケースです。外貨準備が急減した例として上にロシアのチャートを示します。去年の9月頃を境に外貨準備が急減していることがわかると思います。このような現象を目撃した場合、早く処分の行動に出た方が勝ちです。

 直前ペソ危機

さて、通貨危機が起こるとその国の経済はどうなるのでしょうか?それを実際の過去の事例で見ることにします。メキシコは1980年代の終わりにカルロス・サリナス大統領が登場し、経済改革に乗り出しました。これがNAFTA、つまり北米自由貿易協定へとつながり、ラテン・アメリカの投資ブームが起こったのです。1990年代前半には数々のメキシコの株がアメリカに上場され、国際機関投資家の資金が流れ込みました。しかしそのような投資ブームは地方の貧しいメキシコ人には恩恵をもたらすことなく、格差は拡大しました。沢山の資金が限られた投資機会を追いかけた関係で投資リターンは漸減しました。そのような投資家が不安になりかかっているときにメキシコ南部のチアパス州で蜂起が起こり、政情不安が襲ったのです。メキシコ中央銀行はペソを支えようとしました。このような場合の常套手段は先ず金利を引き上げることです。それが上のグラフです。

 直後ペソ危機

上のグラフは同国の外貨準備の推移を示したものです。94年を通じて外貨準備が減っていることがわかります。最後の12月にはとうとう準備が底を付いて、これ以上、ペソを買い支えるお金が無くなってしまいました。

 切り下げ直前直後

このようにメキシコは防戦むなしく1994年12月20日にペソを支えきれなくなり、通貨の切り下げを容認します。私は当時のことをよく覚えているのですが、切り下げが発表された直後メキシコの株式市場は急騰(上の日足チャート)しました。

 ボルサ

その後、もう一度売り物に押され、翌年の3月に安値をつけるのですが、そこからは逆にかなりの強気相場(上)が始まったのです。これはどうしてでしょうか?

先ず通貨が安くなってしまえば輸出は息を吹き返します。またもうペソを支えないわけですから金利を吊り上げたり貨幣供給を絞り込んだりする必要は無いのです。それらのことは全て国内の景気にとってはプラス要因です。

 GDPメキシコ

実際、メキシコのGDP(上)を見ると通貨切り下げ後、鋭角的に景気が戻しているのがわかります。