ドバイの政府系不動産持ち株会社、ドバイ・ワールドが債務履行モラトリアムを宣言したことで欧州の金融市場を中心にショックが走っています。

 

ドバイのバブルのクレイジーさを指摘し、それを糾弾することは簡単です。しかしドバイになぜこんなに資金があつまり、世界中から人が集まってきたのかについては通り一遍の理解しかされていないと思います。そこでドバイがなぜ今日のような姿になったのかについて書きます。

 

先ずドバイはアラブ首長国連合(UAE)の「都市国家」のひとつです。UAEは全部で7つの首長国から成り立っています。でもその中で規模が大きいのはドバイとアブダビだけです。

 

昔からドバイとアブダビはお互いに競争心を燃やしあうライバルでした。

 

確か最初に石油が発見されたのはドバイの方が早かったと記憶しています。でもドバイから出る石油や天然ガスは僅かの量で、すぐにアブダビに追い越されてしまいました。現在でもUAEの化石燃料の大半はアブダビから出ます。

 

さて、ドバイは既に1970年代頃から石油の枯渇の運命を悟っていました。そこで商業やサービス業に自らの活路を見出そうとしたのです。幸い、昔からドバイはインドから現在のイラクに至る貿易航路の中継地になっていました。またペルシャ(今のイラン)からも目と鼻の先であり、古くからペルシャ人との交流もありました。このため早くから国際的で異邦人に寛容な土地柄を形成していたのです。

 

ドバイは運送会社や輸入業者の為に無税倉庫を運営し、港湾の役務サービスを充実させアラビア湾における輸入品の集積地を目指しました。

 

また昔、未だ旅客機の航続距離が短かった時代は、所謂、南回り欧州線やアフリカ大陸へ向かう便のレイオーバーの空港としてハブの役目を果たしました。夜中の2時に極東からの便で到着した旅行者が数時間の間、旅の疲れを癒すためにチョッとホテルにチェックインするというような需要も出てきたのです。ドバイの出入国手続きが比較的スムーズなのはこのような歴史的な理由によるところが大きいです。

 

こうして気がついたときにはドバイはサービス立国を目指す国になっていたのです。

 

石油が無くて貧乏になるのが目に見えていたはずのドバイに対してアブダビが敵愾心を燃やしたのは当然です。でもドバイは商売上手だし、垢ぬけているし、国際的になりました。その一方でアブダビは田舎っぺで垢ぬけがせず、愚鈍だと揶揄されたのです。

 

今回、アブダビがドバイを助けなかったのは、だから当然です。

 

でも債務のリスケジュールによって時間さえ稼げれば、アラブ諸国のお金持ちはドバイに投資を再開すると思います。また町の活気も戻って来るでしょう。それはドバイという町がちょうどニューヨークのブロードウェイのステージのように多くの人々にとって活躍の檜舞台だからです。

 

ドバイはもともとベドウィン(遊牧民)などが住んでいた土地ですから、サービス業を営むあらゆるノウハウが最初はありませんでした。そこで航空会社のパイロットや客室乗務員、レストランのコックや通関の事務員、ホテルの従業員などあらゆる面で外国人の労働力に依存せねばなりませんでした。

 

「ひとつ自分で航空会社を興してやろう」と考える野心家の欧米人が航空会社を旗揚げするのもドバイなら、ホテルの支配人になりたいという立身出世の夢を抱いてインド人が渡って来るのもドバイなのです。高学歴の若い女性の働き口が少ないエジプトからは独身の女性が客室乗務員として働きに来ます。このようにインド亜大陸、北アフリカ、欧州などの野心的な若者がキャリア・アップを狙って集まって来る町がドバイなのです。

 

その一方でイランやサウジアラビアの国民もドバイにチョッと息抜きにやってきます。その理由はドバイには自由な空気があり宗教や政治や人種に寛容だからです。スンニ派の人も、シーア派のひとも、ドバイに来たら争いごとは控えます。テロリストもドバイをターゲットにはしません。なぜならドバイはスイスのように中立を守り、誰でもが憩える場所だからです。

 

レバノンやイラクから来たビジネスマンはドバイに高層ビルを建て、投資しました。本当は彼らは自分の出身地であるベイルートやバクダッドの再開発をしたいのです。でも戦争などの理由で自分の国では夢が実現できないのです。「祖国に平和が訪れるまで、とりあえずドバイに投資しよう。そして祖国が平和になったときはドバイで蓄えた富で故郷を再興するのだ」中東の実業家は誰もがこのような考え方をするのです。

 

去年の金融危機以降、原油価格が下落したのでバブルは弾けてしまいました。でも原油価格は70ドル台まで戻してきています。この程度の原油価格が維持できれば、中東産油国が富の再構築をするのは不可能ではありません。実際、さんざん馬鹿にされたドバイの対岸のカタールで建設されたロイヤルダッチ・シェルのGTL施設は大方の懸念や嘲笑に反して、いま巨大なキャッシュフローを生み始めているのです。

 

中東の富はまだまだこれからも積み上がるし、アラビア湾沿岸地方が潤えば中東の人々は必ずドバイに投資します。それはどんなに浮き沈みがあってもパリやロンドンやマンハッタンの不動産には一定の需要があるのと同じ理由です