「ミセス・ワタナベ」に代表される、新しい世代の若い投資家が最近増えています。

その背景にはFXに代表される、誰でも少額から気楽に始められるトレーディング機会の増加があります。

僕はこの社会現象を「カジュアル・トレーディングの時代」と呼んでいます。

これらの沢山の若い投資家はアイフォーンやTwitterを縦横に使いこなします。つまりテクノロジーに対するアレルギーは無いのです。

その反面、従来型の対面型証券会社に対しては「敷居が高い」と感じているし、『東洋経済』や『日経』などは購読しません。

カジュアル・トレーダーの特徴は一回の取引ロットは小さいけれど、アセットのベロシティー(回転率)は極めて高いという点です。

これは委託注文形式で取引所につなぐタイプの執行形態では、しばしばコストがかかりすぎて採算割れになります。しかし店頭仕切りによる約定手法では工夫の仕方によっては採算確保の余地があります。

実はこのようなカジュアル・トレーディングならびに独自執行システムによる店頭仕切り売買の将来性の大きさにドイチェバンク、シティグループ、ゴールドマン・サックスなど一部の投資銀行は気づき始めています。

彼らは現在、フロー・デリバティブズという部門でこうしたリテール・ビジネスからの需要に対応していますが、証券不況だった去年、今年にあってもこの分野だけは採用枠が拡大しています。

別の言い方をすれば投資銀行も小口投資家のカジュアル・トレーディングを将来のビジネス・オポチュニティーと捉えているわけです。

問題はテクノロジーを縦横に使いこなす新しい世代の投資家たちは、これまでの情報収集の方法には満足していないという点です。

FXやCFDはポジションを建ててから15分程度で決着がついてしまう場合が多いです。

すると月刊誌や週刊誌の編集サイクルではとてもじゃないけどカジュアル・トレーダーの投資判断の役に立つコンテンツを届けることは出来ないのです。

もちろん『ダイヤモンドZAi』に代表される投資雑誌には良い点も多数あります。例えば読みやすい、要点がわかりやすいなどの利点です。つまり雑誌の強さは「編集力」から来ている部分が大きいのです。

しかしこれを「帰宅後トレーダー」の人たちのために、リアルタイムで発信しようとすると膨大な人件費を投入する必要が生じます。

一方、カジュアル・トレーダーの側でも不便な点がいろいろあります。

なるほど情報はかなり流れてくるようになっているが、どのニュースが重要で、どのニュースが無視すべきものなのかが判断できないという点です。

また肝心な、夜のトレーディングの時間に日本語ニュースがどんどん細ってしまうので、どのニュースの鮮度が高く、どのニュースが既に織り込み済みの古い情報なのかがわからないという問題も生じます。

結局、カジュアル・トレーダーの求めている情報は端正で完璧なニュースではなく、「これで十分」というおおまかな流れがわかれば、それで良いのです。

またこれは投資に限らず、他のネット・ショッピングにも共通する現象ですが、消費者は企業の発信する広告やリサーチに対してはある程度距離を置いて接します。ところがネット上の他の消費者のもたらす情報には極めて敏感に反応します。ユーザーとしてのフィルターがかかっていることを重宝するわけです。

Twitterはしばしば「リアルタイム・ウェブ」と形容されます。なぜなら必要な情報がネット上に瞬時にばら撒かれるからです。これに対してグーグルのサーチ・エンジンはクローリングと称してサーチ・エンジンが定期的にウェブサイトを巡回して検索情報を追加してゆきます。これではFXなどのリアルタイム・トレードには対応できないのです。

「これで十分」という情報で、既にユーザーとしてのフィルターがかかった、注目するに値する情報をTwitterのようなリアルタイム・ウェブでばら撒く、これこそがカジュアル・トレーディング時代の唯一、経済的な情報提供モデルだと思います。

つまりTwitterのようなソーシャル・ウェブが「草の根情報網」の構築に最も適していると思うのです。