はじめて大勢の個人投資家の皆さんの前で喋ったのは2006年の2月の大阪での講演会でした。そのときビッグなテーマの筆頭として中国のインターネット業界をハイライトしました。

当日使用したスライドを今、見直すと懐かしさがこみ上げてきます。バイドゥ(BIDU)のスライドでは株価はUS$54.5となっており、PERは118倍とあります。また「推奨している証券会社は1社もない」ことを僕がこの株を好きな理由として掲げてあります。当時、バイドゥを取り上げることはとても勇気の要ることでした。

この大阪での公演以来、こんにちまでセクター全体として中国のインターネット業界を嫌いになったことは一度もありません。(もちろん携帯電話の付加価値サービスなど、逆風に直面した個々のセグメントに対してネガティブになったことはあります。)

でもここ数日は何だか陰鬱なムードになっています。

もうTwitterなどで皆さんがつぶやいているので知らない人は少数派かも知れませんが、中国で最近、インターネットに対する政府の監視、規制が大幅に強化されました。

僕は各国独自のイデオロギーや価値観の違いは何よりも尊重する主義なので中国のやろうとしていることにはむしろ同情するし、背に腹は代えられない事情があることはわかります。

でもビジネスのソロバンから考えて、これから中国のインターネット業界はきつくなる。もっと言えば成長を捻り出しにくくなると思っています。

今回の中国の措置は今年6月に中国政府が「新しく中国で売られるパソコン全てにインターネット・フィルター・ソフトウエアをインストールしなさい」という指導を発表したら、国内のユーザーならびに海外のハイテク・メーカーから轟々の非難が出たことに端を発しています。

中国政府は中国ハイテク業界の将来の競争力などに配慮してこの方針を引っ込めました。

その代わり今度は「個人は.cnというドメインを取得することはできない」という方針が発表されたのです。

法人は今まで通り、.cnというドメインを取得できます。

なお個人はいままで通り、.comや.netというドメインは取得できます。

さらに中国政府はファイル・シェアリング・サイトや動画エンタメ・サイトなど、全部で700ものサイトを閉鎖しました。

この関係でイー・コマースなどのスタート・アップも昔よりはじめにくい環境になったと言われています。

バイドゥの場合、検索の大半は音楽や動画です。また広告主はスタート・アップ企業が多いです。

中国ではFacebookもTwitterもYouTubeもご法度。

これは単純に言えばWeb1.0よりも先へ中国が進めないことを意味するのではないでしょうか?

折角、才能に溢れた中国人が沢山居るのに、わざと「知の進化」から背を向ける中国政府の度量の狭さには大いに落胆させられました。

それは兎も角、中国のネット株はどれも「すこしの成長率の減少も許されない」ギリギリ目一杯の株価評価が付いています。新しい創意工夫が意図的に抑圧されるのであれば、バイドゥもアリババもテンセントも未来は暗いと思います。

早く降りた方が勝ち。