ギリシャ政府の「隠し」債務が話題になっています。

我々ニュースの読み手からすれば(どーして懲りもせずこういう事をやるの?)という呆れる気持ちが先に来ます。

でもこの手の事件はエンロンを例に出すまでもなくこれまで何度も起きているし、今後も後を絶たないと思います。

そこでなぜギリシャ政府はデリバティブに手を出しちゃったのか?、、、この問題を数学とか金融の知識を一切使わずになるべく平易に説明してみたいと思います。

英語のデリバティブのもともとの意味はデライブ、つまり「引き出す」という動詞からきています。つまりあれこれ工夫して取り出した「結果」なのです。

婚活を例に説明します。



いま、女性にとって理想の男性像を議論したとします。

20代の女性:「やっぱ男はやさしさが一番だと思うわ。」
30代の女性:「貴女は社会に出てないからそういう甘い考えをするのよ。やっぱり財力が勝負だわ。」
40代の女性:「男に金なんて要らない。兎に角、若くて可愛い子にどんどん責めて欲しいっ!」

とまあ理想の男性像という他愛のない会話ですら、これほど何が一番大事か?という問題に対する人々の意見は異なるのです。

世の中、自分の理想通りには行かないもので、ルックスの良い男子はビンボーだったり、お金持ちのオヤジは一緒に歩くことすら嫌なサイテーな容姿だったりで、現実は厳しいです。

国際金融の世界もこれと同じで、「あちらを立てれば、こちらが立たず」という関係(これを難しい言葉では「トレード・オフ」と言います)をなんとかやりくりしながら、自分の必要に合わせて投資戦略を練ったり、資金調達計画を策定するのです。

インベストメント・バンカーの仕事というのは相手を見て(ははあん、こいつはやっぱり一番愛情に飢えているんだな)とか、(なあんだ、結局はカネ目当てか)とか(こいつは欲情だけに突き動かされてるな)など、相手を良く観察して、一番欲しいものを強調して「提案」する事です。

つまりデリバティブという商品は言わば顧客の一番欲しているものだけを強調したカタチで「改造」された改造人間みたいなものなのです。

問題は仮にそういう風に自分の一番欲しい部分を強調するように改造したところで、最終的にはトータルとしての損得や義務は変わらないという点です。

こういう喩えをすると正確ではない部分もあるかと思いますが、ある種、「エネルギー一定の法則」みたいなのが働いてしまうのです。

ギリシャの政権党の場合、(今年度だけはEUに約束した財政赤字削減のターゲットをどうしても達成したい)という切実なニーズがあったわけです。

すると他人の弱みに付け込むことにかけては超一流のインベストメント・バンカーは親身に相談に乗るフリをしながら:

「それはたいへんですね。ここはひとつ、私どもがお役に立ちたいと思います。今年度の財政の帳尻を合わせる必要があるのなら、私どもにキャッシュを前払いさせてください。その代わり今後30年分の空港使用税や宝くじ事業の収益金は私どもに頂戴させて頂きます。」

という感じで密約を結んでしまうのです。

なお最後に断っておくとデリバティブそのものは「善」でもなければ「悪」でもありません。「いいとこ取り」するための約束事だというだけです。

問題は往々にしてそういう「いいとこ取り」しているんだという事情説明を国民や株主にちゃんとしていなかった場合に発生するのです。