アメリカ屈指の空売り筋、キンコス・アソシエーツのジム・チェイノスが最近、次の空売りのターゲットとして中国に目をつけていることは以前の記事で紹介しました。

その記事では1月28日のオックスフォード大学セントヒルダ・カレッジでの彼のスピーチ・スケジュールに言及したのですが、きのう当日の録画を見ました。

以下は僕のメモからスピーチの概要を再構成したものです:

今から50年まえにも、こんにちの中国とおなじように毎年、6%程度の経済成長をコンスタントに叩きだす信じられないような国があった。

それはソ連だ。

彼らは「いまにアメリカなんか追い越してやる」と公然と宣言していた。
それも軍事力でアメリカを追い越すという話ではない。GDPでだ。
実際にスプートニク号が打ち上げられた時にはアメリカ人は本当にびっくりし、(こいつはヤバイ)と真剣にソ連を畏れたものだ。

ところが毎年、まるで時計仕掛けのようにキッチリと成長していたソ連はある時点から成長しなくなった。

これはどうしてか?

それは計画経済の踏襲する「成長のパターン」が全て実現し、それが終わったとたん更なる成長がねん出できなくなったからだ。

そのパターンとは:

1.地方の人口を都市部へ移住させ、より生産性の高い工場労働に就かせることで生産を増やす
2.国民の教育に力を入れ工場労働に適した人材を量産することで生産性を高める
3.中央の策定した計画に基づき充填産業に資本を大量投下する

である。

しかしこれらの「成長のボーナス」はいずれも一回限り(one off)の機会である。

そうやって工業化を完成した後は投下した資本が投資リターンを生まなければ、早晩、資本のリサイクルは出来なくなる。

ここで重要なのは計画経済が上のようなプランを実施する際には投資のINPUT(=どれだけ計画的に固定資産投資を実施するか)に細心の注意が払われ、個々のプロジェクトがどのくらいOUTPUT(=事業成果)をもたらすかには同様の注意が払われないという点だ。

結果として投資すればするほど効率は漸減する。

現在の中国の状況を見ると地方の人口を都市部へ移住させ、より生産性の高い仕事に就かせるという政策は既に大方完成している。だからこそ中国政府は「地方の振興」を政策目標に掲げているのだ。しかし地方での事業振興は輸出基地での投下資本リターンより低い成果しか生まない。

中国は国民の教育にとても力を入れている。この面で素晴らしい進歩があったが、既に国民教育の向上は完成してしまったので、今後は昔と同様の生産性向上は得られない。

最後のポイントは資本投下である。これのみが今でも中国政府が利用しうる「成長のボーナス」だ。

ただ資本は一定の投資リターンを生まないとそれをリサイクルすることはできない。

中国の場合、既にGDPに占める固定資産投資比率は過去に世界のどの国も経験していないような高い水準にあり、沢山の資本が注ぎこまれている。しかし資本には収益漸減の法則があり、このような集中豪雨的な投資が賢いやり方かどうかはよく注意する必要がある。

現在の中国は生産の約半分がSOE(政府系企業)からなされている。それらの企業は雇用が利益より優先しているので投資リターンには必ずしも関心は払われない。

結果として中国には低リターンでキャッシュフローを生まない企業が沢山ある。

さて、2015年になると中国のシニア層の人口は若年層の人口を上回る。つまり人口動態的なボーナスを中国が享受できるのはあと数年しかないわけだ。

いま中国経済を見ると内需移行が声高に言われているがGDPに占める消費の割合は年々低下している。これでどうやって内需振興できるのか?

つまりこれらのことを綜合すれば中国は投下した資本からのリターンが貧弱な状態が続くとある時点で固定資産投資主導型の成長モデルを維持できなくなる時が来るのだ。

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以上がチェイノスの主張です。
僕の印象では必ずしも同意しかねる部分もあるけれど、例えば中国企業のキャッシュフローはお粗末というあたりは実感としてここ2年くらいひしひしと感じています。売掛金の回収に要するサイクルはどんどん伸びているし、ROIや設備稼働率は軒並み下がっている、、、その点では彼の主張に大いに賛成します。