中国株が去年の12月以来、ぐずぐずした展開になっているのには次の三つの理由が関係しています:
1. インフレ懸念
2. 銀行の増資問題
3. 人民元切り上げ問題
これらは一見すると別個の問題のように見えるのですが、実は根っこのところでつながっています。今日はそれを説明したいと思います。
1. インフレ懸念
2. 銀行の増資問題
3. 人民元切り上げ問題
これらは一見すると別個の問題のように見えるのですが、実は根っこのところでつながっています。今日はそれを説明したいと思います。
【インフレ懸念】
中国政府にとって怖い展開というのは少々株価や不動産価格が下がることではないのです。
彼らが最も神経をピリピリさせていることは雇用の確保とインフレの抑制です。
金融危機以降の中国はあざやかな手並みで雇用の危機を回避しました。今、人民銀行がフォーカスしているのはインフレの抑制です。
中国でインフレ問題と言った場合、次の2つの分野がとりわけ重視されています。
ひとつは食品の価格を安定させる事です。
これに関して中国政府は既にいろいろ取り組んでいます。
もうひとつは比較的最近、重要度を増している問題で、それは不動産価格の高騰です。
普段、デフレに苦しむ我々日本人からすると、「不動産価格が上がって、何が悪い!」と言いたくなるところですが、中国では不動産価格の上昇が微妙な社会階層間の軋轢を引き起こし始めています。
もう少し踏み込んで言えば、中流(ミドルクラス)の中に新しいタイプの焦燥感が芽生え始めているということです。それは以前にも書いた「働いても、働いても、マイホームの夢が遠のくばかり」という問題です。
例えば中国にはHanhanというブログ界のスーパー・スターが居るのですけど、彼のサイトは3.3億ビジターというマンモス・サイトになっています。
Hanhanのブログはレースカー・ドライバーとは思えない繊細な感性と詩情に溢れており、改めて中国のリテラシーの高さには脱帽してしまいます。(話が逸れるけど、もうひとつブロガーのクウォリティーが凄く高い国はイランです。)
で、HanhanはそのPoeticなメッセージに乗せて、遠まわしにアパートから立ち退きを要求された人々への同情や届かぬマイホームの夢を追う事の無力感などを綴っています。
僕は中国のハウジング・アフォーダビリティー指数(マイホームを購入するコストが庶民の所得に比べて適正かどうかの指数)を見た事が無いので、そういうデータを持っている人は是非教えて欲しいのですが、ひょっとしてアフォーダビリティーは最近低下しているのではないかと思います。
もちろん、その一因として、将来、バブルがはじけたときに銀行の受ける痛手を最小限に喰いとどめる意味で最近、数次に渡って住宅購入の際の頭金比率が引き上げられたことなども指摘できるでしょう。
【銀行の増資問題】
そこで次に銀行の話へとつながってゆくのですが、若しバブルがはじけたときのために中国政府は銀行各行に対して大型の増資をし、資本増強するように指示しています。
これ自体は思慮深い政策で、僕はたいへん良いことだと思っています。
問題は中国の証券市場のルールや主要銀行の株主構成などの諸々の制約の関係で、ディールが来る事実を実際のハメコミのある遥か以前から市場にコミュニケートしなければならない点にあります。
今回は極めてラフな計算ですけど、中国の銀行界全体で300億ドルくらい調達しないといけなくなると思います。
すると、将来、そういう需給悪の状態が来るとわかった時点で、銀行株は「さらしもの」的にのたうちまわらなければいけなくなるし、銀行株が上がらないのなら、それが圧倒的なウエイトを占めているハンセン指数やH株指数だって上がらないわけです。

しかも銀行は融資の一部をバランスシートから除去するために「利回りを保証した」商品の形を取ってそれを飛ばしています。
また地方政府は政府機関への融資の制限のルールを迂回する目的でSPE(特別目的事業体)を設立し、「民間扱い」で融資を受けているため、地方政府全体としての債務の把握や銀行のエクスポージャーを正確に把握することが困難になっているのです。
【人民元切り上げ問題】
さて、一番目のインフレ懸念と密接に関係している問題として人民元をドルとリンクさせている問題が指摘できます。人民元のレートを固定しようとするとどうしてもマネー・サプライが増えてしまいます。これは景気が悪いうちは苦にならないことなのですが、現在のように食品価格をおさえ、不動産バブルを防ごうとしているときには困った現象です。
貿易の問題を別として、単なるインフレ抑制という観点から物事を考えれば、サッサと人民元を切り上げてしまった方が中国にとっては有利です。
でもそう決め手かかる前に少し現在の状況をチェックしてみると、必ずしも人民元の切り上げ有利とは思えない点も浮かび上がってきます。
先ず最近、PIIGS問題でユーロが弱くなりましたが、これは実質的に対ユーロで人民元がすでに切り上がってしまったのと同じ効果を持ちます。いま、中国の貿易をユーロ圏、ドル圏、アジア圏という風に大別するとユーロ圏の占める割合はかなり大きいです。その意味では既に中国はユーロ圏への輸出における競争力がリスクに晒されているわけですから、いまさらそれに追い打ちをかけるような人民元切り上げはしたくないという風に考えていてもおかしくありません。
さらに中国のアメリカへの輸出がすごく盛り返してきているという論調がアメリカの新聞をにぎわしていますけど、僕はその議論を完全には信じていません。なぜならウォルマート(WMT)は今年の売上予想を下方修正しているからです。
つまりアメリカではラグジャリー・グッズや専門店の景気は戻ってきているけれど(=最近の株高の恩恵が少なからずあります)、庶民は苦しんでいるということ。中国が米国に輸出している商品はどちらかと言えばウォルマートなどで消費される品目が多いので、これは安閑としていられない傾向と言えるでしょう。
さらに言えばここへきてアメリカ政府は中国が人民元切り上げの腹を決めようとするタイミングを見計らって、狙い澄ましたかのように「中国は為替操作していて、けしからん」と中国人の面子を潰すコメントを出してきている観があります。
もちろん、中間選挙対策とか、そういう国内事情も関係していることは間違いありませんが、その余りのタイミングの良さに(ひょっとして、オバマ政権はわざと人民元切り上げのタイミングを遅らせようとしているのではないか?)と勘繰りたくなるほどです。
つまり選挙はまだまだ先の話なので、今、中国が人民元を切り上げて、問題児でなくなってしまえば、選挙戦たけなわのときに中国という格好のスケープゴートを失ってしまうのです。中国が外圧に屈することをよしとしないことを計算の上で、わざとそういう嫌がらせをする米国の態度は卑劣ですね。
中国政府にとって怖い展開というのは少々株価や不動産価格が下がることではないのです。
彼らが最も神経をピリピリさせていることは雇用の確保とインフレの抑制です。
金融危機以降の中国はあざやかな手並みで雇用の危機を回避しました。今、人民銀行がフォーカスしているのはインフレの抑制です。
中国でインフレ問題と言った場合、次の2つの分野がとりわけ重視されています。
ひとつは食品の価格を安定させる事です。
これに関して中国政府は既にいろいろ取り組んでいます。
もうひとつは比較的最近、重要度を増している問題で、それは不動産価格の高騰です。
普段、デフレに苦しむ我々日本人からすると、「不動産価格が上がって、何が悪い!」と言いたくなるところですが、中国では不動産価格の上昇が微妙な社会階層間の軋轢を引き起こし始めています。
もう少し踏み込んで言えば、中流(ミドルクラス)の中に新しいタイプの焦燥感が芽生え始めているということです。それは以前にも書いた「働いても、働いても、マイホームの夢が遠のくばかり」という問題です。
例えば中国にはHanhanというブログ界のスーパー・スターが居るのですけど、彼のサイトは3.3億ビジターというマンモス・サイトになっています。
Hanhanのブログはレースカー・ドライバーとは思えない繊細な感性と詩情に溢れており、改めて中国のリテラシーの高さには脱帽してしまいます。(話が逸れるけど、もうひとつブロガーのクウォリティーが凄く高い国はイランです。)
で、HanhanはそのPoeticなメッセージに乗せて、遠まわしにアパートから立ち退きを要求された人々への同情や届かぬマイホームの夢を追う事の無力感などを綴っています。
僕は中国のハウジング・アフォーダビリティー指数(マイホームを購入するコストが庶民の所得に比べて適正かどうかの指数)を見た事が無いので、そういうデータを持っている人は是非教えて欲しいのですが、ひょっとしてアフォーダビリティーは最近低下しているのではないかと思います。
もちろん、その一因として、将来、バブルがはじけたときに銀行の受ける痛手を最小限に喰いとどめる意味で最近、数次に渡って住宅購入の際の頭金比率が引き上げられたことなども指摘できるでしょう。
【銀行の増資問題】
そこで次に銀行の話へとつながってゆくのですが、若しバブルがはじけたときのために中国政府は銀行各行に対して大型の増資をし、資本増強するように指示しています。
これ自体は思慮深い政策で、僕はたいへん良いことだと思っています。
問題は中国の証券市場のルールや主要銀行の株主構成などの諸々の制約の関係で、ディールが来る事実を実際のハメコミのある遥か以前から市場にコミュニケートしなければならない点にあります。
今回は極めてラフな計算ですけど、中国の銀行界全体で300億ドルくらい調達しないといけなくなると思います。
すると、将来、そういう需給悪の状態が来るとわかった時点で、銀行株は「さらしもの」的にのたうちまわらなければいけなくなるし、銀行株が上がらないのなら、それが圧倒的なウエイトを占めているハンセン指数やH株指数だって上がらないわけです。

しかも銀行は融資の一部をバランスシートから除去するために「利回りを保証した」商品の形を取ってそれを飛ばしています。
また地方政府は政府機関への融資の制限のルールを迂回する目的でSPE(特別目的事業体)を設立し、「民間扱い」で融資を受けているため、地方政府全体としての債務の把握や銀行のエクスポージャーを正確に把握することが困難になっているのです。
【人民元切り上げ問題】
さて、一番目のインフレ懸念と密接に関係している問題として人民元をドルとリンクさせている問題が指摘できます。人民元のレートを固定しようとするとどうしてもマネー・サプライが増えてしまいます。これは景気が悪いうちは苦にならないことなのですが、現在のように食品価格をおさえ、不動産バブルを防ごうとしているときには困った現象です。
貿易の問題を別として、単なるインフレ抑制という観点から物事を考えれば、サッサと人民元を切り上げてしまった方が中国にとっては有利です。
でもそう決め手かかる前に少し現在の状況をチェックしてみると、必ずしも人民元の切り上げ有利とは思えない点も浮かび上がってきます。
先ず最近、PIIGS問題でユーロが弱くなりましたが、これは実質的に対ユーロで人民元がすでに切り上がってしまったのと同じ効果を持ちます。いま、中国の貿易をユーロ圏、ドル圏、アジア圏という風に大別するとユーロ圏の占める割合はかなり大きいです。その意味では既に中国はユーロ圏への輸出における競争力がリスクに晒されているわけですから、いまさらそれに追い打ちをかけるような人民元切り上げはしたくないという風に考えていてもおかしくありません。
さらに中国のアメリカへの輸出がすごく盛り返してきているという論調がアメリカの新聞をにぎわしていますけど、僕はその議論を完全には信じていません。なぜならウォルマート(WMT)は今年の売上予想を下方修正しているからです。
つまりアメリカではラグジャリー・グッズや専門店の景気は戻ってきているけれど(=最近の株高の恩恵が少なからずあります)、庶民は苦しんでいるということ。中国が米国に輸出している商品はどちらかと言えばウォルマートなどで消費される品目が多いので、これは安閑としていられない傾向と言えるでしょう。
さらに言えばここへきてアメリカ政府は中国が人民元切り上げの腹を決めようとするタイミングを見計らって、狙い澄ましたかのように「中国は為替操作していて、けしからん」と中国人の面子を潰すコメントを出してきている観があります。
もちろん、中間選挙対策とか、そういう国内事情も関係していることは間違いありませんが、その余りのタイミングの良さに(ひょっとして、オバマ政権はわざと人民元切り上げのタイミングを遅らせようとしているのではないか?)と勘繰りたくなるほどです。
つまり選挙はまだまだ先の話なので、今、中国が人民元を切り上げて、問題児でなくなってしまえば、選挙戦たけなわのときに中国という格好のスケープゴートを失ってしまうのです。中国が外圧に屈することをよしとしないことを計算の上で、わざとそういう嫌がらせをする米国の態度は卑劣ですね。







広瀬隆雄(Hirose Takao)
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