映画、『愛人(Les Amants)』を巡る1964年の米国連邦最高裁のワイセツ裁判でポッター・スチュワート判事は有名な「ワイセツかどうかは見ればわかる(I know it when I see it.)」という言葉を吐きました。

そのスチュワート判事のセリフを拝借するならば、今、ギリシャで起こっている金利の上昇は「悪い金利上昇」であり、それは見ればすぐにわかります。

【なぜ悪い金利上昇なのか?】
ギリシャで金利が上昇しているのは、景気が良いからではありません。ギリシャという国が信用されていないからです。

ギリシャは5月までに約200億ドルの借金の借り換えをしなければいけません。

当初、ギリシャ政府は財政赤字圧縮のための一連の措置を発表し、それで何とか市場をなだめることに成功しました。

ドイツ政府もギリシャが頑張っている事を認め、若しギリシャが借り換えに困ったときは一定の手続きに基づいて支援するメカニズムを準備したというコメントを出しました。

しかしその後ちょっとした「ボタンの掛け違い」から話はヘンな方向へエスカレートしています。


ギリシャの借り換えコスト(=つまり新しい国債を発行するときの金利)は高止まりしたままであり、ギリシャ政府は「こんなに金利が高いのなら、国民に犠牲を強いる財政赤字圧縮政策なんて実施する意味ない」という発言をしました。

一方、ギリシャを救済することに国民からの理解を得られなかったドイツは「ギリシャが有言実行しないのなら、我々は助けない。IMFにでも救済してもらえば?」と突き放すコメントを出しました。

つまり「助けてくれないのなら、もうどうにでもなれ」、「お前こそ少々痛い思いをした方がいいんじゃない?」という脅かし合いのチキン・ゲームが始まってしまったのです。

誰かが血をみないことには、この問題は収まりそうもありません。

このように今回のギリシャにおける借入れコストの上昇は、そもそもギリシャという国が信用されていないことから引き起こされているという意味で「悪い金利上昇」なのです。

それにつけても自国の運命がドイツをはじめとする外国の判断に委ねられてしまっているという点は極めて恐ろしい状況です。

よくアメリカの財務省証券が日本や中国などの外国人に所有されており、これが米国にとって政治リスクであるということが指摘されますが、今のギリシャで起きていることは米国にとってホラー映画の「予告編」みたいなものだと言う事もできます。