週末の『バロンズ』の「Up and Down Wall Street」コラムに中国に対して極めて悲観的な記事が掲載されました。

『バロンズ』はウォール・ストリート・ジャーナルのダウンジョーンズ社(その親会社はニュースコープです)の出している投資週間紙です。(週間誌と書くべきかも知れませんが、新聞用紙に印刷されているので、僕は新聞だと勝手に判断しています。)

その『バロンズ』の中でも機関投資家が必ず読むのは「Up and Down Wall Street」コラムです。コラムの著者はアラン・アベルソンです。

アラン・アベルソンに関しては「偏屈オヤジ」とか「生意気な奴だ」とか、結構、批判も多いし、彼をdisる読者も多いです。

だから今回の中国への警鐘の記事にも反発する読者が沢山出ると思います。僕は今回の記事の内容には賛成でもなければ、反対でもありません。その指摘の多くには賛同するものの、(チョッと違うかな?)と感じる部分もあります。でも一番大事な点は、アベルソンの支持者も、彼を毛嫌いする人も、アベルソンが或る一定の影響力を持っていることは認めており、欧米投資家の間で今なにが争点になっているのかを知る上で、このコラムは見過ごすことはできないという点です。


アベルソンの凄さはその経歴が全てを物語っています。彼が「Up and Down Wall Street」のコラムを担当しはじめたのは1965年のことですから、もうかれこれ45年もずっと継続しているということです。

僕も1989年に一度だけアベルソンに会ったことがあります。当時僕の務めていた会社の古株セールスマンがアベルソンと旧知の仲で、アベルソンが取材のために証券会社にフラッと現れた時、「お前も一緒に飯喰おうぜ!」と誘ってくれたからです。もうずっと前の話なのでそのランチがどういう話題だったのか良く思い出せないのですが、たぶん、ナショナル・セミコンダクターの話をしきりにしていたように思います。

話がずいぶん横道にそれました。

それでは今日出た彼のコラムの要点をまとめます:
1. 米議会は米中貿易摩擦を問題としているが、中国にはもっと差し迫った問題がある
2. GMO(*)のエド・チャンセラーが最近、「中国に赤信号がともった」とする文章を書いた
3. それによると中国は典型的投機熱に包まれている
4. 投資家は中国の成長ストーリーに酔い、中国政府が全て上手く舵取り出来る能力をもっていると盲信している
5. その一方で現実には過剰投資、権力の腐敗、あぶく銭の横行、ドルペッグから来る問題、野放図な融資成長、モラルハザード、金融システムの脆弱性、いかがわしい融資の横行が原因で不動産価格が急騰していること、などの問題が起こっている
6. この中でも野放図な融資成長は金融政策の不安定を最も象徴的に示したものだ
7. 中国の成長ストーリーを裏付ける理由として都市への人口流入をあげるものが多いが、公式統計よりも実際の人口は遥かに多い
8. 中国の人口は2015年にピークを打ち、それ以降は漸減する
9. 労働人口がピークを迎えるのは今年である
10. 中国の外貨準備の多さを指摘する関係者が多いが、外貨準備が使えるのは海外の資産を買う事、輸入品の代金を支払う事、通貨を投機筋から守る事の主に3つしか使い道は無い。資産バブルがはじけるのを防ぐのには外貨準備は役に立たない
11. それが証拠に現在の中国とおなじような膨大な外貨準備を積み上げた国は世界に2つしかない。ひとつは1929年当時のアメリカ(大暴落がそれに続いた)、そして1989年の日本である
12. 中国は完全な市場経済ではなく、マーケットをテコ入れしないといけない局面が来たら国有企業に出動が要請され、これまで何度も損が帳簿から帳消しにされたり、ひとつの主体から別のところへ移動されたりしてきた。
13. そうやって問題を先送りする手立てがあるのでバブルはなかなか弾けないのだが、当面、バブルが弾けそうもないという理由でバブルの存在自体を無視することは良くない

(*)GMOとはグランサム・メイヨーという米国の著名なバリュー投資の運用会社