「MarketHack」の姉妹サイト(もちろん向こうが先輩ですが)、「アゴラ」で「食糧自給率を上げるべきか?」という問題についてたいへんおもしろいツイッター討論が展開されています。

僕は実を言うと日本が食糧を自給すべきかどうかに関しては自分の意見は持っていません。

でも僕は株の人間なので、穀物の値段は将来どうなり、それが農業機械の株や肥料の株の値段にどういう影響を与えるか?という問題には日頃から関心を持っています。

その関係で世界の農業の動きは或る程度調べています。

さて、食糧を自給しない場合、それは輸入を意味します。つまり食糧自給の研究の裏返しはグローバルな食糧の貿易の研究にほかならないのです。そこで今日は農業関連の統計データの中から穀物のグローバル・トレードに関するものだけを抜粋してみました。

これらの資料の多くはUSDA(米国農務省)の『ベースライン・プロジェクション・レポート』という調査レポートからの引用です。アメリカの機関の資料を使うことに抵抗を感じる読者も居るかと思います。(なるべくいろんな国の資料が欲しいな)と思ったのですが、いろいろ探し回ると、やっぱりデータの膨大さ、新鮮さなどの点でUSDAの資料は素晴らしいです!そんなわけで、今日引用する資料の出典は殆どUSDAですけど、ご了承ください。

さて、前置きはそのくらいにして、世界の人口は毎年7500万人、1日に直すと20万人ずつ増えています。中国やインドの所得の向上は肉食へのシフトを促進しています。豚肉や鶏肉などは、まずそれらの家畜を育てるために飼料を与えないといけません。だからそれまで穀類を食べていた人間が肉食に移ったときに世界の食糧の需給関係に与えるインパクトは1:1の関係ではなく、何倍にもなるのです。
穀物

上のグラフ過去30年間の世界の穀物の需要と供給をグラフにしたものです。時期によっては生産過剰になったり、生産不足になったりしていますが、そういうことを繰り返しながら全体としてはバランスが取れていることがわかります。


穀物2

先ほど述べたように中国ではいま家畜むけ飼料の需要がどんどん伸びています。エタノール向けの穀物の需要も増えていますが、中国の需要の方が遥かに大きい点に注目して下さい。さて、この需要の増加に対して米国のとうもろこしの生産やこのグラフにはでていませんがブラジルの大豆の生産はそれに歩調を合わせるようにどんどん成長しました。つまり今日の話は所謂、食糧危機の話ではないということです。生産はこれまでも追い付いてきたし、これからも増産できます。でも何処で増産ができるか?という場所が大事です。中国国内では無理です。それはそもそも降雨量が足らないからです。すると中国は穀物を輸入に頼らないといけなくなるわけです。事実、国際間の穀物の貿易はすごいスピードで増えています
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私は日本人なので農業と聞くと先ずお米のことをイメージします。でも世界的に見ると国際的に取引されている穀物で一番金額的に大きいのは大豆です。英語ではソイビーンと言います。大豆はお醤油の原料ですね。でも大豆が重要な最大の理由は飼料になるということです。新興国の食生活が肉食化すると一番重要になるのは大豆なのです。次に取引量の大きいのが小麦です。言うまでもなく小麦はパンの原料になります。3番目はコアース・グレイン、これはぴったりくる日本語が無いのですが大粒の実をつける穀物、たとえばとうもろこしです。これらの穀物は世界的に極めて活発に取引されておりビッグ・ビジネスになっています。またその特徴として大量生産されるため土地の広さや降雨量など、自然の恵みが競争力を決める上で決定的に重要になります。
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これは主な穀物の長期での価格の推移をしめしたグラフです。去年にかけて穀物価格が急騰しましたが、今は供給が需要に追い付いて下がってきています。
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中長期で見た穀物価格の見通しには強気で良いと思います。その理由は貯蔵されている穀物の、消費に対する比率が過去最低まで低くなっているからです。つまりストックが底をついているということです。
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去年、新興国からの需要増やエタノールのストーリーで穀物価格が上昇した際、とうもろこしへの作付のシフトが起こりました。しかし今はまた普通の状態に戻りつつあります。

(その2へつづく)