歴史的に欧州の失業率は米国の2倍以上でした。

今回のギリシャのストライキの例を見てもわかるように失業率が高い国は景気が悪くなると公的部門での支出を増やせという圧力が国民からかかりやすく、それだけ財政が不健全になるペースが加速します。

ここまでをまとめると欧州連合は次のような弱点を抱えているということです:

1. 輸出競争力の低下
2. 生産性の低下
3. 財政の悪化

さらに欧州は米国のシリコンバレーに代表されるような非連続的な技術革新に基づく経済成長を不得意としています。それは欧州の経済モデルがどちらかといえば銀行融資型のモデルだからという面もあると思います。

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、インターネットなどの、これからの時代を担う成長分野では欧州のこうした経済モデルは競争力を持ち得ないのです。

またこれまで見てきたような競争力の低下は新しくEUのメンバーを追加することでは解決しない問題でもあります。

このように「ただ惰性で拡大基調を続けてきた」EUの拡大志向の発想が止まったとたんに、いままでずっと抱えてきたけど、敢えて正視しなかった懸案が、いまドッと噴き出しているのです。


その懸案をサラッとまとめると:

1. 欧州中央銀行(ECB)を持つのは良いけれど、それをけん制、監視する機能が不在
→立法機関を国家レベル(=つまり各国個々で)から超国家レベルに権限移譲するのは政治的に極めて困難であるということ

2. EUには米国の財務省に相当する機関が存在しないこと
→痛みを伴う改革をギリシャなどに押し付けても、彼らが立ち直れるように援助する財政出動は出来ないということ

3. 政策策定過程が複雑で、遅い
→今回のドイツなどの各国によるギリシャの救済が良い例だけど、いちいち個々の国の議会で救済予算を承認されないといけない、、、こんなことをやっていては機動的には動けない

4. EUは前進しか知らず、これまで「後退」した経験は無いこと
→これは前人未到の境地に今、EUが入ろうとしていることを意味する

5.ふつうの国家が「主権」として当然持つべき政策面の自由を欧州は半分だけ超国家へと移譲した途中で、今回の危機が襲ったので、個々の国に許されている裁量は財政政策と福祉政策だけになってしまっていること(下図参照)

どう乗り切る?ユーロ存亡の危機5