今日、東証マザーズ上場の半導体製造装置メーカー、エフオーアイ(6253)に粉飾決算の疑いで強制捜査が入ったというニュースを目にしたので、野次馬根性からエフオーアイの目論見書を読んでみました。

僕は日本株にはぜんぜん投資していないので日本の事には詳しくないのですけど、普段、外国のIPOプロスぺクタス(目論見書)を読みなれている感覚からすると(勝手が違うな)と感じる部分がいくつかあります。

先ずリスクに関するディスクロージャーが量そのものも少ないし、一般投資家が読んでもよくわかるような書き方がされていないのが気になりました。

昔はアメリカの目論見書も法律屋が好みそうな難解で回りくどい表現が多かったのですが、これはもう15年(?)以上も昔に「平易な英語にするように」という新しい規則ができ、それ以来、ストレートな表現でリスクを語る形式になっています。

さて、文章の難解さ・平易さというスタイルの問題以上に、そもそも会計方式の基本精神とでも言うべき箇所に違和感を覚える部分があります。

具体的には同社の売掛金回収期間の長期化の解説の部分です。(目論見書32ページ)

ここでは新しいお客さんに最初に納品される製品(それを「初号機」と呼んでいます)に関しては顧客の技術検収完了後にならないと売掛金が回収できないのが普通だから、売掛金の回収に要する日数は概ね1年6ヶ月から2年6ヶ月の期間を要すると書いてあります。

テクノロジーの会社の場合、新しい装置が顧客の工場や現場でちゃんと作動し、その製品のパフォーマンスに満足してもらえるかどうかは、実際に装置をお客さんのところへ持ち込んで、それで試しに運転してみないとわからない場合が多いです。

また、実地でいろいろ工夫や微調整をすれば、みるみる使い勝手が向上して、その装置を持ち込んだときには絶望的にお客さんを落胆させるような試運転結果しか出なかった装置が、結局、お客さんの信頼や満足を勝ち取り、「じゃあお金払ってもいいよ」という話になる場合もあります。

ここで大事なのは最初に「ちょっとウチの新製品、使ってみてくれますか?」と営業したときにお客さんの工場にその製品を置かせてもらう承諾が出たからと言って、それは「売り上げた」ことにはならないという点です。

テクノロジーの会社ではそういう顧客の現場での実地試用のことを「カスタマー・ベータ・テスティング」と言います。


アメリカの場合だとお客さんが満足して、OKを出した後(そのことを英語ではサーティフィケーション、日本語では検収完了といいます)、はじめて請求書を送りつけることができるのです。この請求書を送付したタイミングで会計的には「売上高」に記載する場合が多く、間違っても最初に製品を持ち込んだ時ではないのです。

実際にお客さんの現場でその製品が活躍し、おカネを生み出すことに貢献しはじめているのなら、お客さんはすみやかに請求された代金を払ってくれます。だから売掛金というのは普通、優良な会社なら大体30日から50日(業種によってもことなります)くらいというのが一般的であり、これが90日(つまり3ヶ月)を超えてくるときちんとした理由の説明を投資家は求めます。

エフオーアイの目論見書にあるように「初号機の売掛金回収は概ね1年6ヶ月から2年6ヶ月、、、」というのは明らかに「赤信号」であり、こういう目論見書でIPOを売って歩く主幹事証券は(よく恥ずかしくないな)と僕は半ば呆れると同時にその「剛のモノ」ぶりに感服しました。

ついでに言えば、目論見書の中に「ウチの会社はこういう基準で、このタイミングで売上高を計上する方針を取っています」ということがちゃんと謳われているべき。

あと目論見書をチラッと一瞥して感じた事は主要顧客における売掛残が表になって出ているのですけど、その顧客名や順位、金額は割合と毎年コロコロ変わっているのです。これは(ちゃんとお金、払ってもらったのかな?)ということがわかりにくいし、半導体製造装置のようなビジネスの特徴と少しズレている面がある印象を持ちました。

つまり半導体製造装置というのはなかなか大手の顧客のところに割り込むのはむずかしい、「敷居の高い」ビジネスですし、逆に一度、そのツールがお客さんに気に入られれば、何年かはリピートで使ってもらえます。

すると顧客リストというのはそんなにコロコロ変わらないものなのです。

そんなところからも、ただ製品を「試しに使ってもらうために置かせてもらっているだけ」の段階で早漏気味にもう売上に計上してしまっている、、、そういう姿勢が垣間見られる気がするのです。

もちろん経営者の側としては「置かせてもらっている」製品が顧客の検収に合格して、おカネを払ってくれることに期待をつなぎながら今日まで眠れない夜を繰り返してきたのかも知れません。

だから最初から騙すとかそういう腹黒い考えがあったのでは無いと僕は信じたいです。

でもどのタイミングでお客さんに請求書を出し、売上高に計上するか?という、一見、重箱の隅をつつくような細かいところで詰めが甘かったために、最終的にお客さんに使ってみてもらった自社製品が却下されて、結果として「粉飾」になってしまったのかなあ?と察するわけです。

The Devil is in the details.