そろそろ今年も折り返し地点に到達するので、下半期の投資戦略を考えています。

【これまでの投資戦略】
その前に僕の上半期の投資戦略がどういうものだったかをカンタンに言うと:

1. 兎に角、PIIGS諸国の問題は大問題であり、今年はこれが全てを決める
2. ユーロは安くなる
3. その場合、所謂、リスク・トレード(ゴールド、石油、新興国株式への投資)はやりにくくなる

というものでした。

【新しい展開】
月曜日に欧州各国、国際通貨基金、欧州中央銀行などが団結してPIIGS諸国への救済パッケージを発表したことで上の投資戦略に一部手直しを入れる必要を感じています。

【救済パッケージの評価】
兎に角、この発表でギリシャのデフォルトなどの問題をしばらく先延ばしすることには成功したと言えるでしょう。つまり「時間を買った」わけです。

時間を買うことのメリットは、その間に世界の景気が拡大しはじめれば、いずれ欧州も景気循環的な回復を経験することが期待できる点にあります。

普通、ヨーロッパの景気や金利はアメリカよりも1年から2年程度遅行する傾向があります。

財政の立て直しは不景気のときにゴリ押しでやろうとするより景気が良いときにやった方が痛みが少ないです。

でもそれは逆に景気が良い時には切迫感が薄れ、怠け心が出て改革が進まなくなる可能性もあります。

【救済パッケージでは実現できないこと】
南欧諸国がユーロを使い始めたときは:

1. 北の国から不動産購入など投資ブームにあやかるマネーが流入する
2. それが不動産ブーム、建設ブームをおこす
3. 景気は良くなり、税収は増える
4. 南欧での消費ブームが起こる

などの一回きりの恩恵がありました。

しかし今回、救済パッケージが発表されたからといって、一度弾けたスペインの不動産バブルなどは再び復活することはありません。

不動産ブーム、旅行ブーム、購買力の向上からくる消費ブームなどが期待できない中で、ヨーロッパはいままでのような成長を出せるのでしょうか?

【ユーロ安は輸出業者にはプラス】
もちろんプラス面もあります。いままで滑稽なくらい過大評価されていたユーロが適正な水準まで下がったことはドイツやフランスにある一流輸出企業にとっては朗報です。ダイムラー、シーメンス、BMW、ルイヴィトンなどの企業はこっそりとほくそえんでいるに違いありません。

ヨーロッパはドイツがGDP成長率で大体2から2.5%くらい出せていれば上手く回ってゆきます。

だから早くその水準にまで戻れると良いのですが。

【アメリカへの影響】
一方、アメリカから物事を考えると、今回のユーロ安は米国企業の業績にとってはマイナスです。これは来期の決算あたりから苦しめられることになると思います。

【アメリカ国内に閉じ込められるマネー】
この半年のドル高でアメリカの投資資金はしっかり内向きになってしまいました。

もとより米国の不動産は今後数年駄目だろうし、或る程度景気が回復してきたなら債券もヤラレになるかも知れないということで、じゃぶじゃぶの資金は株式市場に向かうしかありません。

従ってアメリカ株にとっては好高需給が続くと考えてよいと思います。


【新興国は?】
これはむずかしい問題です。

中国は今後欧州からの需要減退のリスクに晒される可能性があります。

さらに中国は近年、原材料費の高騰と最終需要の伸び悩みという2つの悪材料の板挟みに遭って利幅の減少を経験しています。これはもう我慢の限界近くになっていると思います。

その結果、投下資本利益率は低下しつつあります。

金融危機以降、中国では4兆人民元の景気テコ入れ策を発表し、なんとか不況を回避できました。しかしその資金は大半が建設などに向かい、不動産バブルを後押しする結果になりました。

また資本集約的な産業へのマネーの流入はただでさえ十分すぎる生産力を持っているところへ、ムダな重複投資を行う結果を招きました。

不動産価格の上昇はインフレ期待のアンカーが引き摺られはじめることを意味します。

それは潜在的な賃上げプレッシャーとなります。

生産性の向上率は鈍化しつつあります。

既に不動産市場は手のつけられないバブルに突入しており、それを冷やしにかかっているので今後も金融は引き締め気味になると思います。

その環境下では株式のマルチプル・エクスパンションは期待薄です。

むしろマルチプル・コントラクションが予想されます。

【やりにくくなる産業の舵取り】
これまで中国政府は極めて上手く産業政策や経済政策をやりくりしてきました。

しかし今後、産業政策は困難になると思われます。

先ずアメリカはじめとする先進国からの技術移転は一巡しつつあります。

「もう外国から学ぶことは無い」と中国の人が主張するのは良いことですが、経済学的に言えばそれはキャッチ・アップ・オポチュニティが失われ、今後生産性の伸びが鈍化することを暗示しています。

また資本集約的産業を保護育成するだけでは今後の成長は実現できないということは上意下達型、命令型経済の運営手法では新たな成長機会を発掘するのは難しくなることを意味します。

よく「中国のように一党独裁の方が意思決定が早くて効率が良い」という議論を展開する人が居ますが、50年前のソ連も資本集約的な産業の育成に専心できているときは良かったけど、一度設備が出来てしまえば産業政策指導の硬直化を招き、命令型経済では更なる成長を出すことは出来ませんでした。

中国が試されるのはまさにこれからです。

また中国ブランドは国内では通用しますが、海外では認知度が低いです。これは欧米企業の水平分業モデルに中国が組み込まれることで発展してきた宿命です。

このまま中国が組立屋(アッセンブラー)で終わるのか正念場に来ているとも言えます。

【ブラジル】
或る意味、中国の変調(若しそれがあるとするのなら)を最初に感じるのは、一番遠いところに位置しているブラジルの輸出企業かも知れません。

いまのところ余り変化を感じさせる徴候はありません。

引き続き警戒したいと思います。

若し中国に変調が出れば世界の鉱業、エネルギー、工業、インフラストラクチャ、建設、運輸に関連する株は全部駄目になるでしょう。

【IT投資は生産性向上の最も手っ取り早い解決策】
若し中国が生産性向上の面で踊り場にさしかかっているのであれば(=そう決めたわけではありません)、次に出来る事はIT投資の比重を増やすことです。

IBMやインテルは既に中国からのビジネスのピックアップに関して確かな手ごたえを感じています。

なお中国だけでなくインドもIT投資を通じた生産性の向上を現在真剣に模索中です。