一昨日フィナンシャル・タイムズに「中国がユーロ建てで外貨保有することを減らす方向で検討に入った」という憶測の記事が載りました。

これに対し中国人民銀行やCIC(中国のソブリン・ウエルス・ファンド)などが一斉に「そんなことは検討してない。いい加減なことを書くのはやめろ!」と正式に反論しました。これは極めて異例です。

  ■   ■   ■

フィナンシャル・タイムズの記者の感覚からすると(中国が外貨準備をユーロで保有していると、ユーロ安でそれが目減りするので困るだろう)と考えたのかも知れません。

でもこれは物事をひとつの方向からしか捉えられない、FTとは思えない稚拙な考え方です。

ハッキリ言って、中国は今、「ユーロ買い介入」したいほど困っています。

また、ユーロが高くなるよう心から願っています。

だからわざとユーロを崩すような真似をするわけがありません。

過去4カ月の間にユーロは対ドルで15%程度下落しました。人民元はドルにペグされていますからこれは実質的な人民元の切り上げがユーロ圏で起きてしまったのと同じ効果を持つのです。

そのため中国の輸出業者はたいへん苦しい立場に追い込まれています。

中国にとって世界で最も大きなお客さんはアメリカではありません。欧州なのです。(中国の輸出の約2割)

だからユーロ安はとても困るのです。

  ■   ■   ■

市場参加者は昨日の中国のヒステリックな反論を見て(ちょっと待てよ?)と考えを改め始めています。

弱気一色に染まっていた欧州株に空売りの買い戻しが入ったのはそのためです。

下のチャートはフランスのCAC40指数ですが、このところの下降トレンドを脱することができれば、チョッと味付けでロング出来そうなチャートになりつつあります。
CAC40


また世間は「パニックだ、パニックだ!」と騒いでいますが、投資家の気持ちの動転度合いを示す、VIX指数(俗に恐怖指数と言われます)もこのところの上昇トレンドを割り込みつつあるように見えます。つまり物事は沈静化の方向に進み始めているわけです。
VIX


それから「欧州は空中分解する」式の議論が流行りですが、通貨危機ヲタクの僕から言わせれば今の欧州の苦境なんて苦労のうちにも入りません。

その動かぬ証拠がドイツとフランスの政府が借金をする際、幾ら金利をはずむ必要があるか?ということを示す、10年債の利回りのグラフです。
仏独10年債利回り

最近、グラフが下がっているのは「借金のコストが下がっている」つまりお金が借りやすくなっていることを示しています。

メキシコのペソ危機や92年の英国のEMS脱落事件などの時は政府が通貨を防衛し、お金を借り続ける事が出来るように金利がどんどん上昇しました。(英国の場合、ピークで政策金利は12%になりました。)

本当にお金が借りられなくなる時というのは金利が急騰するのです。

先日、欧州連合が大型の救済パッケージを発表したとき、「ドイツはどうやってお金を借りるんだ!」と悲観的な事を述べる識者が後を絶ちませんでした。

しかし現実にはドイツやフランス政府にお金を貸したいという投資家が殺到しているのです。だから金利がさがっているわけ。

「でもLIBORは騰がっているんでしょ?」

そういう声が聞こえてきそうです。

確かに上昇しています。でもチャートをしっかり見て下さい。
LIBOR

LIBORは0.5%にしか過ぎません。

リーマン・ショックのときは5%近くまであったのです。

いまLIBORが上がって寝れない夜を過ごしているのはLC(信用状)が取れなくなった中国の輸出業者だけです。



ユーロ売りのポジション、、、あまり「売り安心」にならない方がいいですよ。