近く公開される映画『ウォール・ストリート2 マネー・ネバー・スリープス』で再びヘッジファンドという存在が一般の人々から注目を浴びると予想されます。

そこで材料が少ない日を選んで、ヘッジファンドに関する豆知識を紹介してゆきたいと思います。

先日、インヴァスト証券のウェブセミナーでグローバル・マクロ・ヘッジファンドの生態についてお話させて頂きました。

ギリシャ問題のような危機が起こると俄然、このグローバル・マクロというトレード・ストラテジーへの注目度がUPします。それで(タイムリーな話題かな?)と思ったわけです。

「グローバル・マクロ」とはヘッジファンドを分類するときのカテゴリーのひとつです。

つまりヘッジファンドのいち投資ストラテジーだと申し上げても良いでしょう。

その特徴はマクロ経済のうごきの中に不均衡を探す点にあります。

マクロ経済というのは国の財政収支や貿易収支やGDPなど経済の巨視的な捉え方のことを指します。(マクロ経済に対する概念はミクロ経済です。)

マクロ経済になにか不均衡があるとその不均衡が原因でストレスがたまります。

そのストレスはある時点に堪え切れなくなって大きな訂正の局面を迎えます。

このような激しい価格訂正の機会を捉えてFXや商品や株をトレードするのがグローバル・マクロ・ヘッジファンドの投資戦略というわけです。

彼らのもうひとつの特徴はそういうトレードをする際、レバレッジを使うという点です。

また株なら株の専門家、FXならFXだけ、と言う風に自分の使う投資対象を限定せず、儲かると思えば何にでも手を出すのがグローバル・マクロの特徴です。

グローバル・マクロ・ストラテジーでいちばん有名なヘッジファンド・マネージャーはたぶんジョージ・ソロスだと思います。


彼は1992年にイギリスがEMSから脱退せざるを得なくなった時、ポンドを大量に売って「イングランド銀行を破産させた男」という異名を取りました。

ソロスはグローバル・マクロの投資戦略についてこのように語っています:

「私は或るルールに従ってトレードするのではない。ゲームのルールが変わる瞬間をめがけてトレードを仕掛けるのだ。」

これは大変興味深い発言です。なぜなら多くの投資ストラテジーは先ずトレードに際してルールを確立して、あとはそのルールに実直に従って投資するケースが多いからです。

たとえばウォーレン・バフェットはバリュー投資家として知られています。彼の場合、師匠であるベンジャミン・グラハムが打ち立てたバリュー投資理論に基づいて安全で長く生き残る会社が何かの理由で割安になったときに買うという投資手法を持っています。だから急にFXに手を出したり、次はゴールドを取引したりとかはしないのです。

これに対してジョージ・ソロスに代表されるグローバル・マクロ・ヘッジファンドは常に次におかしくなるところ、つまり危機が起こる可能性をさがしているわけです。これは安いものを探すバリュー投資、うまく急成長している会社が、そのまま急成長をつづけることを前提にしたグロース投資などとは根本的に異なるメンタリティーです。

危機というのはみんなが安心し、慢心しているときにしのびよるものです。だからそういうチャンスを発見するのは簡単ではありません。

また人の逆を行くコントラリアンの気風がなければそういうチャンスは発見できません。

もうひとつグローバル・マクロのトレーダーに要求されるものはちょうど何かが破綻する直前にポジションを建てるというタイミングの良さです。

レバレッジをかけるということは借りてきたお金、つまり金利のかかるお金でトレードするわけなので、イベントがおこらない一日、一日は損を蒙っているという風にも考える事が出来ます。またトレンドに逆らうコントラリアンである以上、早すぎる出動は命取りになりかねないのです。