ウォール・ストリート・ジャーナルによると中国は素材の備蓄を取り崩すことで当面の輸入を見合わせる方針を取っている可能性があるそうです。

取り崩した備蓄はいずれ補う必要があるので、長期で見れば心配するに及ばないことなのかも知れません。

しかし目先的にはこの中国の「買い控え」で鉛や鉄鉱石の価格は下落しているのだそうです。

なお、この買い控えは全ての素材や原料で見られる現象ではなく、原油や石炭の輸入は増えています。

それでも世界の投資家がこの中国の備蓄取り崩しに注目する理由は2つあって、ひとつは備蓄している量そのものが大きいのでしばらくは新しい補給をしなくても良いし、新しい「適正な備蓄水準」が昔のままで良いのかどうかわからないという点です。

もうひとつの理由は鉄鋼生産などにおける新規設備の追加がものすごいスピードで増えており、需要の増加を凌駕しているように思われるためです。

世界の鉱工業生産はピークアウトしつつあります。
鉱工業生産

(出典:バーレ、JPモルガン)

米国の鉄鋼市場の需要も金融危機前の水準には戻っていません。
米国の鉄鋼市場

(出典:アセロール・ミッタル)
事情は欧州でも同じです。
欧州の鉄鋼市場

(出典:アセロール・ミッタル)

現在、欧州で起こっているユーロ危機などを考えるとこの需要が早いスピードで戻って来るとは考えにくいです。

その一方で中国の鉄鋼需要はこれまで順調に成長してきました。
中国の鉄鋼需要

(出典:アセロール・ミッタル)


実際、世界の地域別の鉄鋼消費を見ると既に中国は圧倒的な存在となっています。中国は世界の需要の44%を占めており、別の言い方をすれば米国、日本、欧州からの需要を全部足したものの2倍程度を消費しているのだそうです。

一人当たりの鉄鋼消費量では未だ先進国に及びませんが、これはそもそも人口がぜんぜん違う事を考えると同水準になること自体が驚異的だと言えます。
一人当たり鉄鋼消費量

(出典:アセロール・ミッタル)
中国の地域別での一人当たり鉄鋼消費量には大きな格差があります。これは各地の地理的条件を考えると今後も完全に是正されることは無いと思います。
中国の地域別一人当たり鉄鋼消費量

(出典:アセロール・ミッタル)
中国の鉄鋼設備稼働率はまた最近、落ち始めています。現在どんどん新規設備が追加されていることを考えると今後の予想も楽観視できません。
中国の鉄鋼設備稼働率

(出典:アセロール・ミッタル)