
著者:Sebastian Mallaby
販売元:Penguin Press HC, The
発売日:2010-06-10
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6月14日にセバスチャン・マラビー(CFRシニア・フェロー)が書いた「More Money Than God」という新刊書が米国で発売されます。この本はヘッジファンドの歴史について書いた本ですが、新刊書のプロモーションで雑誌「The Atlantic」に同書の抜粋が掲載されています。
なかなか臨場感溢れる記述となっており、ヘッジファンドの社内の雰囲気が手に取るようにわかるので、チョッとさわりの部分を抄訳してみました。
■ ■ ■
1992年9月15日(火曜日)、ポンドはまたこっぴどく売られた。スペインの財務大臣が英国の財務大臣、ノーマン・ラモントに電話してきて、マーケットの状況を聞いた。
「悲惨だ。」
ラモントはそう答えた。
その夜、ラモントはイングランド銀行のロビン・リー・ペンバートン総裁と打ち合わせした。「明日は朝からポンド買い介入しよう」という合意が出来た。
そこへスタッフからメッセージが届いた。ドイツのブンデスバンクのヘルムート・シュレジンガーがウォール・ストリート・ジャーナルとハンデルスブラットのインタビューに応え、「欧州の通貨は大々的に水準訂正が必要だ」と述べたというのである。
ラモントは仰天した。シュレジンガーの発言は「ポンドを出バリューしろ」と言っているのと同然だ。
(中略)
ジョージ・ソロスのクウァンタム・ファンドのチーフ・ポートフォリオ・マネージャーであるスタン・ドラッケンミラーはその火曜日の午後にニューヨークでシュレジンガーの発言を読んだ。スタンはすぐに行動を起こした。シュレジンガーの発言はブンデスバンクはポンドの水準維持に手を貸さないという意味だから、ポンドのデバリュエーションは不可避だと判断したのだ。
ドラッケンミラーはソロスの部屋に歩いてゆき、ボスに言った。「行動を起こす時が来た。」
既にソロス・ファンドは15億ドルのポンドのショート・ポジションを持っていたが、これからも粛々と売りポジションを増やしてゆくことをソロスに進言した。
ソロスはじっくりとドラッケンミラーの意見を聞いていたが「そりゃ理屈に合わない」とスタンの意見を切り捨てた。
「それはどういう意味ですか?」ドラッケンミラーは喰い下がった。
ソロスは「もしおまえさんの言っていることが正しければ、チビチビ売りポジションをこしらえている場合ではないだろうが?ドーンと急所を突け!」とアドバイスした。
この時、ドラッケンミラーは(確かにボスの言う事は一理あるな)と思った。
(これこそソロスが天才たるゆえんなのかもしれないな)
確かにドラッケンミラーはいろいろ数字を分析したし、欧州の政治の機微も理解していた。しかしここぞという局面でエンジン全開で勝負に出る胆力をもっていたのはソロスなのである。若し自分が正しいと知っていたなら、「大きすぎるポジション」というのは存在しない。後は徹底的に売り叩くのみだ。
そこへスタッフからメッセージが届いた。ドイツのブンデスバンクのヘルムート・シュレジンガーがウォール・ストリート・ジャーナルとハンデルスブラットのインタビューに応え、「欧州の通貨は大々的に水準訂正が必要だ」と述べたというのである。
ラモントは仰天した。シュレジンガーの発言は「ポンドを出バリューしろ」と言っているのと同然だ。
(中略)
ジョージ・ソロスのクウァンタム・ファンドのチーフ・ポートフォリオ・マネージャーであるスタン・ドラッケンミラーはその火曜日の午後にニューヨークでシュレジンガーの発言を読んだ。スタンはすぐに行動を起こした。シュレジンガーの発言はブンデスバンクはポンドの水準維持に手を貸さないという意味だから、ポンドのデバリュエーションは不可避だと判断したのだ。
ドラッケンミラーはソロスの部屋に歩いてゆき、ボスに言った。「行動を起こす時が来た。」
既にソロス・ファンドは15億ドルのポンドのショート・ポジションを持っていたが、これからも粛々と売りポジションを増やしてゆくことをソロスに進言した。
ソロスはじっくりとドラッケンミラーの意見を聞いていたが「そりゃ理屈に合わない」とスタンの意見を切り捨てた。
「それはどういう意味ですか?」ドラッケンミラーは喰い下がった。
ソロスは「もしおまえさんの言っていることが正しければ、チビチビ売りポジションをこしらえている場合ではないだろうが?ドーンと急所を突け!」とアドバイスした。
この時、ドラッケンミラーは(確かにボスの言う事は一理あるな)と思った。
(これこそソロスが天才たるゆえんなのかもしれないな)
確かにドラッケンミラーはいろいろ数字を分析したし、欧州の政治の機微も理解していた。しかしここぞという局面でエンジン全開で勝負に出る胆力をもっていたのはソロスなのである。若し自分が正しいと知っていたなら、「大きすぎるポジション」というのは存在しない。後は徹底的に売り叩くのみだ。