今日、ある証券会社が「フォックスコンやホンダにおける賃上げは個人消費の押し上げにつながり、中国にとり好材料だ」というコメントを出しました。

これほど間違った意見も無いと思います。

先ず中国の人たちは貯蓄性向が高く、お給料が上がってもそれを全部消費に回すなんてことはしません。

次に賃金インフレというのはインフレ・サイクルのいちばん最後にやってくる、もっとも厄介なインフレであり、ひとたび(そうか、賃上げを要求できるのか)という認識が労働者に広まると全ての物価や地価に対するエクスペクテーション(期待)のアンカーが引き摺られはじめます。

人民銀行の立場からすると、もっとも徹底的にインフレ期待の芽を摘むべき局面がやってきたということです。

さて、中国に工場進出している企業の立場からすれば人件費が高騰しはじめれば事業採算性を占うことが困難になります。(それなら中国ではなく、ベトナムにしよう)という議論も当然出てくるのです。

中国という国の経済モデルは所謂、加工輸出型経済であり、大量に原料や部品などを仕入れ(=輸入)、それらを完成品に組み上げて再輸出することでその手間に対して対価を受けるという構造になっています。

極めて乱暴な言い方をすれば、輸入コストと輸出代金の差が中国の「マージン」なのです。

これまで中国の輸出と輸入の間には一定のヘルシーなマージンが存在しました。しかし最近はそのマージンが縮小しているようにも見受けられます。
輸入・輸出

大量に仕入れて大量に輸出するモデルではマージンの減少は企業にとって命取りです。

工賃の上昇はただでさえ苦しい中国企業のやりくりを一層困難なものにします。

このへんのプレッシャーは既に中国企業の決算に現れており、EPSの伸びは貧弱です。またキャッシュフローは弱いし、支払い条件はどんどん厳しくなっています。

今週、中国の貿易統計をはじめ一連の月次経済統計が発表されますが、このへんのところに注目したいと思います。