以前中国の石油会社CNOOCがアメリカの石油会社ユノカルを買収しようとして米議会から「NO」と言われた事件を皆さんはご記憶かと思います。

(別にいいじゃん?買わせてあげても)

そう感じた投資家はアメリカ国内にも多かったです。

また普段は民間のビジネスに政府が首を突っ込むことに批判的なアメリカ人が、いざ自分の国の企業が中国企業に買われるとなるとコロッと態度を変えたことの偽善には世界が呆れました。

ところがこの話にはウラがあるのです。


実は当時ユノカルは或る鉱業部門を持っておりそれは一般投資家には殆ど気付かれていませんでしたが、国防上極めて重要な部門だったのです。

これこそが今日紹介するモリコープです。

モリコープはカリフォルニア州とネバダ州の境にマウンテンパスという鉱山を所有しています。ここは昔、世界最大のレアアースの産地でした。

昔と断ったのはマウンテンパスは現在廃坑になっており、生産はおこなわれていないからです。

現在、レアアースは中国が世界の産出量の97%を占めています。

中国政府は6月2日にレアアースの産出の監督管理を強化すると発表しています。具体的には中国の民間企業によるレアアース開発を政府の監督下に置くことを検討していると報じられています。

このニュースを受けて外国企業は中国政府がレアアースを海外の企業に売る場合、そのレアアースを利用する外国企業が工場を中国国内に建設することを義務付けるのではないか?と恐れています。

中国政府がレアアースの採取を厳しく取り締まる理由はレアアースが軍需産業に必須であることも関係していますが、それと同時にレアアースの鉱山が極めて環境破壊の元凶として頭痛のタネになっていることも指摘されています。

環境を顧みない「ヤマネコ」的業者がどんどんレアアースを掘り出し、闇ルートを使って輸出しており、これが環境破壊のコストを反映していない安値での輸出につながっているという指摘があるわけです。

アメリカの軍関係者はこのレアアースの中国への依存体質に危惧を抱いています。実際、アメリカ海軍のレーダーや陸軍の戦車のナビゲーション・システムは中国産の素材に完全に依存しています。従ってマウンテンパスの鉱山を再開したいと考えています。

そしてマウンテンパス鉱山を所有するモリコープは鉱山再開のための事業資金を得るためにJPモルガンとモルガン・スタンレーを幹事に指名し、ニューヨーク証券取引所にIPOする準備を進めています。

マウンテンパスが再開されればモリコープはネオジム(Nd)を増産する考えです。ネオジムは極軽量のハイテク素材の原料となります。またガラスの研磨や水のフィルターに使われるセリウム(Ce)も生産する計画があります。

レアアースはこのように戦略上極めて重要な素材でありながら、これまでは闇採掘による乱開発で二束三文の安値で取引されてきました。

つまり環境基準の厳しいアメリカでは、到底採算に合わないような市況だったのです。

従って、今回の中国のレアアースの監督強化は世界のレアアース鉱山の発展という見地からは歓迎すべきニュースかも知れません。その半面、米国、カナダ、南アなどのレアアース鉱山が操業を開始するとまた市況が暴落するというリスクもあります。

さて、モリコープの売出し目論見書ですが数字的には何も無いに等しいです。それもその筈、今は廃坑同然だからです。

このようにレアアースは現状のままだと全然儲からないビジネスだし、環境問題をはじめ余りに多くの不確実性や問題があり、しかも国際政治や国防などの思惑が絡んでいるので純粋な投資としては不適格と言わざるを得ません。

しかしストーリーとしてはイマジネーションをかき立てる妖しい魅力があることは確かです。

【レアアースの主な用途】
クリーン・エナジー:ハイブリッド車、電機自動車、風力タービン、小型蛍光灯
ハイテク:携帯電話の小型化、タブレットPC、極小スピーカー、光ファイバー関連部品
防衛:誘導システム、GPS、レーダー、ソーナー
水処理:工業用、軍事用、国防用水処理施設