ネットでは反対意見がさく裂していますけど、僕は日本証券業協会の「有価証券の引受け等に関する規則等の一部改正について(案)」をいちおう支持します。

支持する理由を述べる前に断っておくと僕は証券関連の法律に詳しい弁護士ではありません。ですから僕の考えはしろうと考えです。

でも引受け関係の仕事をしていたので、引受けの実務については「土地勘」があります。

まず日本証券業協会は証券会社を会員とする協会であり、主に証券会社のルール作りを通じて投資家保護などの目的を実現しようとする協会です。今回の改正案はだから証券会社のルールであるという点を頭に入れておく必要があるでしょう。

次に今回の改正案で実質的に新しく追加された条項は次の部分だけです。
パブコメ1

(出典:日本証券業協会)オリジナルのPDFファイルはこちら


この文章はよく読む必要があります。

この文章が規定しているのは上場発行者以外の発行者がIPO前に募集を行った場合、引受業者はIPOを引き受けてはいけないということです。

ここでのキー・ワードは:

上場発行者:issuer、つまりIPOしようとする会社
引受業者:underwriter、つまり主幹事証券会社

の2つになります。

そこで上の条文にもう一度戻ってしっかりこれを読めば:

「IPOしようとする会社以外の者が未公開株の勧誘をしたら駄目」

ということが書かれている事がわかると思います。
これはどこかの悪徳業者が勝手に自分と関係がありもしない会社の指定証券であることを装って嘘っぱちの株券を売ることを防止するための条項です。

だから大多数のブロガーが懸念しているように、「ベンチャー企業が自分で事業計画を示し、賛同者に出資を募ることがやりにくくなる」ということとは少し話が違うように思えます。

ただパブリック・コメントを促す日本証券協会のレターの文面はまぎらわしいし、もしこのレターが正しいのなら紹介文と条項の中身が自己矛盾していると思います。

その部分を示します。先ほどのオリジナルのPDFファイルの1ページ目です。
パブコメ2

(出典:日本証券業協会)

ここでは「上場発行者以外の発行者」という表現ではなく、未上場会社という表現を使っています。

「上場発行者以外の発行者」と未上場会社(ないしは発行会社)は別物であり、若しこの紹介文の方が正しいのであればブロガーの懸念は正当化できると思います。

今回の改正案で大事な部分はこれだけであり、原則禁止にした上で、後はいろいろな例外条項を設けてベンチャー起業家の仕事がやりにくくならないようにしている、、、ただそれだけの事です。

アメリカでは未公開株の勧誘に対する規制は極めて厳格であり、そのせいもあって未公開株をめぐる詐欺の例は殆ど聞きません。大衆が「ウマい話など無い」ということを良く認知しているからです。

日本でIPOが胡散臭い目で見られているひとつの原因は悪徳業者をちゃんと取り締まる規定が無かったからだと思います。IPOのイメージ・アップのためにもちゃんとした規定は必要だし、結果としてそれがより活気のある発行市場の発展につながると僕は思います。

「いちおう支持する」と言葉を濁したのは、上で示したように紹介文と条項そのものが矛盾しているからです。

(追記)
Twitterで次のようなご指摘を頂きました。

引受規則2条14号は、上場発行者を、国内の取引所金融商品市場に上場されている有価証券の発行者と定義しています igi3さん

「上場発行者以外の発行者」というのは、未上場企業自身の事を意味すると思うので、紹介文の方が正しく、やはり、未上場企業が個人投資家に対して私募で資金調達出来ないようにする規制の様に思いますが…WBJPPPさん

ご指摘ありがとうございます。

なるほど、そうか!
僕は上場発行者以外というのをてっきりnon-issuerだと思い違いしました。じゃやっぱり悪法ですね。