中国農業銀行

中国農業銀行のIPO価格が決定されました。

中国農業銀行は香港と上海の両市場でIPOをオファーしており、発行条件は異なります。

香港でのIPO価格はHK$3.20(米ドル換算では0.4107)です。初値レンジは当初レンジがHK$2.88~HK$3.48(中値HK$3.18)、修正レンジがHK$3.18~HK$3.38(中値HK$3.28)でした。つまり修正レンジの中値に比べると少し低い水準での値決めとなったわけです。香港での売出し(分類としてはH株になります)は254億株で、調達金額は812.8億香港ドル(104.3億米ドル)でした。

一方、上海でのIPO価格は2.68人民元(米ドル換算では0.3955)です。初値レンジは2.52~2.68人民元でした。つまりレンジの上限での値決めとなったわけです。上海での売出し(分類としてはA株になります)は222.4億株です。調達金額は595.0億人民元(87.8億米ドル)でした。
さて、IPO後の安定操作に際しては主幹事証券は「冷やし玉」と呼ばれる余分な株を用い、株を寄らせる(=商い成立)ことが出来ます。この特別な予備の株数のことをグリーンシュー(*)と言います。

このグリーンシューを使用する権利を主幹事が行使した場合、IPOの規模が15%増えることになりますので中国農業銀行の調達総額は192.1億ドルではなく、220.92億ドルになるのです。

これまでの過去最大のIPOは中国工商銀行の219億ドルですから、それをごく僅か上回り、世界最大のIPOということになります。



*=【グリーンシューとは?】
グリーンシュー、つまり「緑の靴」という名称は1919年にIPOされたグリーンシュー・マニュファクチャリング・カンパニーのIPOに際して、幹事証券が初めて使った安定操作の手法なのでこういう呼び方がされています。

それではその安定操作は実際にはどう実行されるのでしょうか?

先日紹介したリアルディー(RLD)のIPOで説明しましょう。
今回リアルディーは1075万株を初値設定$13~$15で売り出します。
主幹事証券には15%のグリーンシュー行使権が認められています。

ホットディールの場合
リアルディーの前人気が上々で、実際には公募予定株数の10倍の申し込みがあったとします。この場合、主幹事証券は予定通り1075万株を投資家に分配(アロケーション)します。

さて、実際に取引が始まる場合、投資家は皆、ホットディールだとわかっているので、誰も最初の売り手にはなりたがりません。

すると買い物ばかりで売り注文が無くなるので、相場は買い気配のままで寄らなくなってしまいます。

主幹事証券はそこで15%の余分の株を発行する権利を行使し、これを「冷やし玉」にして相場を寄らせるわけです。

この場合、15%の余分の玉は一瞬のうちに買い手によって買われてしまうので15%は難なく消化できてしまいます。後は30日後に主幹事証券が「実は15%の冷やし玉も使い果たしました」と報告すればグリーンシューの行使は完了です。その15%の冷やし玉を売った代金は発行企業(この例の場合リアルディー)に入ります。

余り人気の無いディールの場合
さて、リアルティーの人気があまり沸騰せず、公募予定株数に対して1.5倍程度の申し込みしか無かった場合はどうでしょう?

この場合、ひとつの方便として主幹事は1075万株ではなく、1236万株を投資家に分配(アロケーション)します。

つまり当初売出し予定(1075万株)より余計に(=オーバー・アロットメント)分配するのです。

このようなディールでは投資家は「チョッと待て。自分が申し込んだ株数の殆どが手に入ったぞ。ひょっとすると今回のディールはホットディールじゃなかったんだな。」と悟るわけです。

すると不安になるので儲からない場合はなるべく早くIPOで貰った玉をぶん投げようとします。つまり売り物が出るわけです。

こうなると売り優勢です。

だから主幹事証券は買い支えに回らないといけなくなります。

このような幹事団の買い支えを「シンジケート・ビッド」と呼ぶ場合があります。
主幹事証券は売り物を買い漁り、その結果として株式の在庫が出来てしまいます。

もしIPO後30日以内に場でついている株価がIPO価格を上回り、相場が騰がりはじめた場合は主幹事証券は在庫になった買い支え玉を市場に売り返し、それと同時にグリーンシューの行使を宣言します。

つまり最初に「字余り」で余計に投資家に売った分を実際に売ったものとして報告するわけです。

逆にIPO後30日経っても株価がじりじり安くなり、IPO価格を奪回できなかったとします。その場合は単純に最初に「字余り」で余計に売った分と、アフターマーケットで主幹事が買い支えた在庫を相殺してチャラにするのです。別の言い方をすれば主幹事の買い支えというのは、そもそも値決めの際に余計に売った15%分を買い戻しただけなので、「実際には余計な株数は売らなかった」ということになるのです。この場合は「グリーンシューは行使されなかった」という解釈になります。

なお、グリーンシューの使い方は各主幹事証券のトレーディング・デスクによりいろいろなバラエティーがあるように思います。だから全ての主幹事証券が常にこういう使い方をしているとは限らないのではないでしょうか?