世界の金融センターとしてのロンドンとニューヨークの地位は今回の金融危機でダメージを受けるという考え方があります。

金融関係者のボーナスに対する世間の批判の高まりや、課税強化の動き、さらに米国で間もなく投票に付される金融規制改革法案など、ロンドンとニューヨークの地位を脅かす材料には事欠きません。

金融関係者の中には今後、上海もしくは香港の地位が上がると考えている人が多いです。しかし1980年代のバブル時代を持ってしても東京が国際金融センターとしての地位を築けなかったことからもわかる通り、ただ自国の経済が強いとか、外貨準備がしこたまあるという理由だけでは国際金融センターになる条件が揃っていることにはならないのです。

国際金融センターになる条件としては先ず共通の言語、つまり英語でビジネスが出来る必要があります。なぜならドキュメンテーションやコミュニケーションの面での取引コストが安くないといけないからです。東京マーケットはこの点でハンデを負っていました。

また法制度(リーガル・フレームワーク)がハッキリしており、投資家の権利行使や私的財産権の保護など安心してトランザクションを行える環境が整っている必要があります。

さらに政府が金融センターの振興に真剣で、万難を排しても海外の金融ビジネスを積極的に誘致する固い信念を持っていなければいけません。ロンドンはその点で世界のどこよりコミットメントがあります。

最後にイノベーションを産む人材を惹き付ける土壌がなければいけません。これは給与面から始まってライフスタイルなど、直接、ビジネスには関係ない部分までにも及びます。なぜなら高給取りは「良い暮らし」をすることに敏感で、魅力の無い土地には転勤したがらないからです。

IFLSの資料を使って現在の各国の状況を簡単に概観してみましょう。

まず主要分野における各国の2009年の市場占有率のグラフを示します。これを見ると英国(青)と米国(赤)が圧倒的に強いことがわかります。
国際金融マーケットシェア

(出典:IFLS)
いま世界の時価総額を見ると必ずしも本国の株式市場が巨大であることがグローバル・エクイティーのビジネスを誘致するために必要な条件であるとは言えないことがわかります。(英国株式市場の小ささに注目)
株式市場時価総額

(出典:IFLS)
外国株式の取引ではアメリカが他を圧倒しています。
外国株式の取引

(出典:IFLS)
株式のビジネスの中で唯一、自国経済の発展とマーケット・シェアに密接な関係がみられるのはIPO市場です。実際、近年では中国やブラジルのIPOが大きなシェアを占有しています。
IPO

(出典:IFLS)
しかしそのこと自体は金融センターがそれらの国に移ってゆくことを必ずしも意味しません。日本でNTTがIPOされたときは世界最大の規模でしたが、それで金融センターが日本に移ったか?といえば、そうはならなかったのです。

株式以外のビジネスを見てみましょう。

外債の発行市場のマーケット・シェアです。
外債発行市場

(出典:IFLS)
証券化のビジネスのマーケット・シェア(オリジネーション・ベース)です。
証券化ビジネス

(出典:IFLS)
店頭デリバティブ市場のマーケット・シェアです。
店頭デリバティブ

(出典;IFLS)

それぞれの国の金融サービスの国際競争力を推し量るひとつの尺度として金融サービス貿易収支を見るという手があります。
金融サービス貿易収支

(出典:IFLS)
日本は金融サービス貿易収支は赤字、つまり国際競争力は無いということがわかります。