いきなり「上から目線」のような、生意気なタイトルでスミマセン。
でも今日はちょっとマジな話を書かせてもらいます。

最近は「日本の債務国体質は破局を迎える」とか「ドルは崩壊する」などの極端なシナリオを語る人が多いです。

そういう遠い将来の可能性について考えてみる事は大事です。

ただそれらの遠い将来に起こるかも知れない、極端なシナリオを考える以上に、近い将来に起こる、段階的(incremental)な変化をしっかり観察することが重要です。

運用は夜道のドライブに喩えることができます。(その意味では人生そのものも同じですけど。)

真夜中にA地点から遠く離れたB地点へ旅行する必要があるとします。

その場合、A地点でスタートを切る段階で、B地点までの見通しが効くか?と言えば、それはまったく闇です。自分の見える範囲はヘッドライトで視界がきく範囲のみです。

自分の眼前の、しかもすこし先くらいしか視界がきかないということは、結構不安です。次に何が控えているかわからないし、僕のオフィスの近所では夜中に鹿やタヌキが飛び出してくることも多いので危険です。

その場合、よく前を見て運転することが大事です。

評論家のセンセイたちは「日本はどうあるべきか」とか「政治はどうあるべきか」という大上段に構えた議論が大好きですけど、それはそうすることによりお金を貰っているし、知名度UPすることが出来るからです。時事放談が「放談」なのは議論し放し、文字通りあとは放ったらかしだからです。


彼らは自分の議論が正しかったか、間違っていたかの結果には頓着しません。どれだけ目立つか、どれだけ持論の正しさを印象付けられるかの勝負をしているだけです。

かれらはA地点からB地点までの道すがらおこることを全てすっとばして、B地点に何があるかの結論部分だけを論じているのです。

運用の世界ではB地点で実際に何が起こるかはその時点ではカンケーない(irrelevant)です。

それはどうしてかというとB地点に到達した頃には運用担当者は退職しているか、下手すればもう死んでこの世に居ないかもしれないからです。

相場には先々の材料を常に織り込んでゆく、ディスカウント・メカニズムがあります。

ですから将来起こるかもしれない極端なシナリオがほんの少しでも頭をもたげたら、マーケットは激しく揺さぶられます。つまりB地点に到達する遥かに以前に相場はすべてそれを織り込んでしまうのです。全てが織り込まれてしまったら、儲ける事が出来た、あるいは逆に損したという勝負はB地点到達の前についてしまっているのです。

たとえばギリシャ問題です。

僕は「今年はギリシャ問題がたいへん重要になる」と年初に言いましたけど、それと同時に「ギリシャがEUから叩きだされるとか、ドイツがユーロを脱退するとか、そういう極端なシナリオは考えていない」とも言いました。

実際、ギリシャもドイツもユーロから脱退していません。

でもマーケットはすごいドラマを経験したわけです。世界の投資家の「ヨーロッパをみる目」も変わってしまいました。

「実際には極端なシナリオは未だおこっていないけど、世の中はすごく変わった、、、」これが大切な部分だと思うのです。

もうひとつ大事なことを書くと、いつまでもB地点に何があるか?ということを形而上学的に口角泡を飛ばして議論してないで、実際にドライブをはじめることのたいせつさです。

ギリシャ問題ではいちはやくユーロをショートした人間が儲けました。

でもB地点という終着点の景色と、そこへゆくまでの途中で必ず起こる現象はかならずしも皆さんが想像するシナリオとは一致しないのです。

たとえばドル崩壊を例に考えてみましょう。

皆さんはドル崩壊と聞くと(すわ、これはたいへんだ。海外にお金を持ってゆくのはヤバイ。やっぱり日本株にしておこう)と言う風に思うかも知れません。

でも実際にはドル安の場合は日本株が下がるケースが多いので、ドルが急落すると日本株ではメタメタにヤラレる確率が高いのです。そういう因果こそ、「A地点からB地点に到達する道すがら起こる出来事」なのであり、評論家センセイ達がちっとも分かっていないマーケットの機微なのです。

ユーロ危機にこれを当てはめれば、僕は「だからBMWやルイヴィトンは買いだ」と言いました。

「えっ?ユーロ問題を論じているのに、、、なぜ欧州株を薦めるの?」

そういう読者からの反応がとても強かったです。(もちろん、為替換算の部分ではヤラレになります!でも現地株価は騰がるのです。)
BMWG

(BMWの株価、ブルームバーグ)

日本国債のデフォルト問題や年金問題についても「政治がどう変わるべきだ」とかを論じる前にやるべきことがあります。それは我々個々人がどうやって日々の出来る範囲内で生活を防衛するか?ということについて具体的な行動を起こす事です。

アメリカの浪費癖がいつまで経っても変わらないように、日本だってすぐには変われないと思います。

政策の変更が国庫の立てなおしや産業の国際競争力に効果を発揮するのは何年も時間がかかると思うので、遠い将来、日本が復活する可能性はあると思うけど、少なくとも我々が社会人をやっている間に物事が好転するというシナリオは残念ながらもう来ないと諦めた方が良さそうです。

政治や国が変わらないのなら、自分ひとりだけでも日々の行動パターンを改めるという態度がたいせつではないでしょうか?

なにも日本脱出とか、資産を全部香港に移すとか、そういう極端なことをする必要は僕は無いと思っています。

でも自分の投資先を日本株オンリーではなく国際分散するだけで、かなり違ってくるのではないでしょうか?