米国の出版社、ドーチェスター・パブリッシング(非上場)が紙の書籍から撤退し、電子書籍ならびにオンデマンド出版に特化すると発表し、関係者の関心を呼んでいます。

同社はウォルマートをはじめとする販売店からの注文が激減したことを紙撤退の理由に挙げています。


ドーチェスターは犯罪小説、スリラー、ホラー、ロマンス・ノベルズなど大衆娯楽の本を中心に出版しています。つまりパルプ・フィクション専門です。
ドーチェスター

(出典:ドーチェスター・パブリッシング)
同社の売上の65%はロマンス・ノベルズから来ています。

しかしロマンス・ノベルズは最近、市場の構造が激変しています。つまり紙が急速に廃れ、電子書籍に移行しているのです。或る意味、電子書籍戦争の最前線がロマンスのカテゴリーだと言えるでしょう。

なぜロマンスのカテゴリーは電子書籍で成功しているのでしょうか?

それはロマンス・ノベルズのファンの女性が本を買う時に余りにもセクシーな表紙だと恥ずかしくてレジに持って行けないという問題を電子書籍ならばスルーできるからです。

家に居ながらにしてどんどん注文できるし、フォントのサイズを大きく出来るので歳を取っても読み易いということもあります。

そこでロマンス・ノベルズのビジネスについて少し語ると元祖ロマンス・ノベルズの出版社は英国のミルズ&ブーンという会社で、1930年代から存在しました。1971年にカナダのハーレクインがミルズ&ブーンを買収し、北米市場にロマンス・ノベルズを紹介したのです。

ハーレクイン2

(出典:ハーレクイン)
ハーレクインは女性がよく買い物をするスーパーなどにペーパーバックを置かせてもらいました。なぜなら「買い物のついでに買う」という利便性が重要だと判断したからです。このため当時のハーレクイン・ロマンス・シリーズは必ずページ数が192ページだったと言われています。

ハーレクインはカナダのトースター(Torstar、ティッカー:TS.B)が親会社です。トースターは「トロント・スター」などの新聞を中心としたメディアの会社ですが、ハーレクインはその中で重要な部門となっています。

現在、ハーレクインは毎月110のタイトルを28ヶ国語で出版しており1100人の著者を抱えています。2008年の販売実績は1.3億冊、創業以来の通算で58億冊を売っています。

ハーレクインの売上高は不況にもかかわらず安定しているし、EBITDAも順調に伸びています。
ハーレクイン3

(出典:トースター)

トースターのアナリスト・デーで電子出版市場に関するプレゼンがあり、以下はその資料です。先ずアメリカの電子書籍市場動向です。
US電子書籍

(出典:トースター)
次に日本の電子書籍市場も言及されています。
日本電子書籍

(出典:トースター)
そしてハーレクイン自体がその中でどう頑張っているかを示したのが次のグラフです。
ハーレクインデジタル

(出典:トースター)