欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)などによる1兆ドルの緊急支援プログラムの発表、さらに欧州金融機関のストレステストと相次いでユーロを支援する材料が出たため、ユーロ危機の問題はあたかも解決したかのように言われています。

しかし今回の欧州の処方はとりあえず一番信用力のあるドイツを中心にスクラムを組むと同時に、為替を思い切りユーロ安に持ってゆくことでドイツの輸出セクターに「中央突破させる」という、言わばいちばん速効性のある処置を講じたに過ぎません。

なるほどドイツのGDPは強烈にリバウンドしています。
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ドイツは欧州で最も重要な輸出の担い手です。だからユーロ安はドイツの産業にとって強力なカンフル剤でした。
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しかしユーロが反発するとドイツの輸出は再びリスクに晒されます。

そこであからさまなユーロのトークダウンが再びはじまりました。今回の理由付けは「なるほどドイツは復活している。だけどギリシャなどはぜんぜん景気の回復が見られない。だからドイツやフランスなどのEUのリーダー国とPIIGSとの格差は広がっている」というものです。

一見するとこの議論は説得力があるように思えるのですが、ギリシャ経済が低迷しているのは緊縮財政を強いられているため、公的部門の緊縮などがおこっているからです。だからギリシャはどのみち成長しようが無いわけです。

スペインの問題は国の借金能力ではありません。(スペインの国としての負債比率は低いです。)むしろ民間部門の借金が過去のブームの時代(つまり2000年以降)にどんどん増え、もうこれ以上借金できないところまで高まったのが原因です。

その借金は不動産取引に密接にかかわっており、その不動産市場は凍りついたままですから、この状態をほぐすのには時間がかかります。

つまりここまでの欧州は超スピードで危機回避の手立てを打ってきたけれど、これからは遅々として体質改善が進まないシナリオが考えられるのです。

その場合、少しでもユーロ高になるとドイツの工業部門は減速してしまいます。(すでに鉱工業生産のモメンタムは暗転しています。)
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だからユーロが高くなるたびに口先介入でユーロのバイヤーを脅さないといけないのです。