ダニエル・ピンクの「Drive(ヤル気)」の翻訳本、『モチベーション3.0』が日本でも発売されました。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
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ピンクがこの本で主張していることの大半は下のTEDのビデオに集約されています。



ここでピンクは「決まり切ったデスクワークはどんどんインドなどにアウトソースされている」と論じています。

このためホワイトカラーの社員は簡単に解決法が見つけられない、創造力を必要とする仕事に従事することが多くなっているのです。

その場合、現在のアメリカのビジネス界に定着している、ボーナスなどの金銭的なインセンティブは余り生産性の向上に役に立たないというのが彼の主張です。

むしろ:

Autonomy 自主性、自治、自律
Mastery 熟達、精通
Purpose 目的、決意

が生産性向上のカギになるというわけです。

さて、この『モチベーション3.0』のアマゾン・ドットコムの書評に次のようなものがありました:

(以下抜粋)
まず感じたのが、本書で分析されているやる気の要素は、少なくとも多くの日本人(私も!)であればずーっとあたりまえのものとして自然に身に着けているものだということです。例えば、就職転職の理由の上位1,2位は常に「やりがいのある仕事ができる」と「スキルを向上できる」のまさに”やる気3要素”の内の2つそのままです。それら目的達成のために、自主的に努力をし、仕事に熱中してきているのが3つめ。
 次に、$$$を得ることをやる気の主要エンジンとし、本書の言うアメとムチの環境を先導し世界に流布させ、他の人をだましてでも$$$を得れば勝ちとする組織を生み出した結果、先の金融危機を引き起こした某国ではきっと本書の内容は新鮮に写るのだろうとも思いました。
いづれにしても、私にとっては、「今さら新発見をしたように言われなくても...」という本です。
(引用終わり)

この評者はピンクの主張をちょっと勘違いしていると思います。

ピンクの議論はどうやって問題解決をするか?という場面で、金銭的インセンティブが必ずしもベストではないと主張しているのであって、あくまでもここで彼が問題にしているのは簡単に解決法が見つけられない、うんと創造力を必要とする高度な仕事でどう結果を出すか?ということです。

つまり結果を出すということが大事なのであって、単なる「やりがいのある仕事」やその職場環境をどう整備していくかという話ではないのです。

それが証拠にこれらのインセンティブを極限まで追求した人事管理形態としてピンクは:

ROWE Results only work environment 結果だけで社員を評価する職場環境

を例に出しています。ROWEでは:

スケジュールなし
出社しなくてもよい
どのように、いつやってもかまわない
ミーティングもしなくてよい

という極めて自由放任的なマネージメント・スタイルがとられます。
ピンクはTEDのビデオの中でROWEは凄く効果的だと主張しています。

でも逆に言えば結果を出さなければ、「ちゃんと遅刻せずに出社してました」とか、「与えられた仕事は片づけました」と弁明しても一切評価されないのです。

つまりROWEはユートピアではないのです。

それは「指示待ち人間」には到底達することができない境地であり、身の毛もよだつ恐ろしい世界です。

若しヒット商品が出なければ、或いは問題解決の糸口が見つけられなければその社員の存在意義は無いし、その人格は一切否定されます。もちろんそんな社員しか雇っていないその企業の存在意義もありません。

実際にそうやって無数のドットコム企業がシリコンバレーから消えてゆきました。

思うに日本には創造力を必要としない仕事で満足してしまったり、それを「やりがいのある仕事」だと感じてしまう志の低い社員が多すぎるのではないでしょうか?

これは自己満足の世界にほかなりません。

どんなに満足した社員が沢山居る会社でも顧客や社会に必要とされない会社は永続しません。

だから間違っても『モチベーション3.0』は現在の日本株式会社を肯定する日本擁護論ではないのです。