ミニシリーズこのところ通貨ユーロは堅調です。

しかしそれは今年上半期に世間を騒がせたユーロ問題が完全に解決したからではありません。

いや、それどころか問題は先送りになっただけであり、ユーロを巡る状況は再び悪化する兆候を見せ始めています。このためユーロはもう一度「存亡の危機」に瀕すると思われます。

説明します。

先ず何故ユーロは最近堅調なのかを説明します。

理由は2つあります。

ひとつは7500億ユーロにものぼる欧州連合(EU)ならびに国際通貨基金(IMF)からの支援策(欧州金融安定化メカニズム=European Stability Mechanism)が5月6日に発表され、それが投資家をなだめることに成功したという点です。

もうひとつは春先のユーロ安の局面でドイツの輸出企業などの業績がギャンギャンに良くなり、欧州がドイツを中心にスクラムを組み、「中央突破」で危機を回避するという戦法がまんまと成功したという点です。

残念ながらこれらの2つの要因は既に崩れつつあります。


まず最近ユーロが急速に高くなっているのでまたぞろ欧州の輸出企業の業績見通しは暗転してきています。

それから7500億ユーロの欧州金融安定化メカニズムは気がついたときにはかなり小さくなってしまっていたという問題があるのです。

この点に関しては技術的な説明が必要になります。

5月のアタマにギリシャ問題が最高潮に達した時、ドイツ、フランスその他のEU主要国の首脳が現状打開策を練りました。

その際、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は「ユーロ圏全体としてボンドをイシューする」という案を即座に却下しました。あくまでも支援は各国が緊急ローンのためのファシリティを持ち寄り、それを束ねて救済の必要な国に振り向けるという手法を主張したのです。

この結果、ドイツやフランスなどEU内の有力国の持ち寄るファンディングは欧州金融安定取極(EFSF)というプールに集結されました。これは言わば特別目的会社のようなものであると言えます。

このEFSFは当初4400億ユーロの規模でした。しかしこの特別目的会社がトリプルAを獲得するためにはオーバー・コラテラル(余剰担保)を積まなければいけません。つまりトリプルAを受けるためには特別のバッファー(緩衝地帯)というかリザーブのお金を横にどけておかなければいけないのです。

別の言い方をすれば各国が持ち寄った4400億ユーロのうち、ある部分はリザーブとして温存される必要があるので、実際に使える金額はそれよりかなり少ない金額(一説には2500億ユーロ)でしかないというわけです。

もうひとつの問題は若しこのEFSFの参加メンバー国がギリシャのように借金の借り換えが出来なくなる状況に陥った場合、そのメンバーは喩えて言えば「腐ったリンゴ」になるのでリンゴの入った木箱(=EFSF)から除外されなければいけません。そうしないとEFSFそのものの信用力が腐ってしまうからです。

いまEFSFはEUの主力メンバーが全部参加しているのでその中には台所事情が苦しいところも含まれています。

救済する国がギリシャやポルトガルやアイルランドのような小国の場合なら小さいメンバーが抜けても他の国々の負担には影響は出ません。

しかし例えばスペインのようなかなり大きな国が救済を必要とするようになれば、1.EFSFの実弾を投入しなければいけないことに加えて、2.スペインはEFSFのメンバーから去らなければいけないことから残ったメンツの負担が増えるのです。

言い直せばEFSFは救済しなければいけない案件が増え、救済対象国が大きくなるにつれて逆に救済基金としてのファイア・パワー(火力)は衰えるという宿命を持っているのです。

すると仮にスペインが脱落するとフランスやドイツはその穴を埋めるために一層拠出金を増やす必要が出ますし、それはスパイラル的に調達ニーズを増やすことになるのです。