ミニシリーズこのようなまずい取極めに依存しなければいけなくなった理由はひとえにドイツの「ユーロ圏全体でのボンド・イシューへの反対」が原因です。

なぜユーロ圏全体でのボンド・イシューを各国政府が避けて通るかと言えばそれは財政政策権限をブリュッセル(=EU本部)に付与することを意味し、各国政府の財政主権の実質的な侵害につながるからです。

さて、ここまでの議論はEU内の比較的大きな国の財政がおかしくなったシナリオを想定しています。そこで「本当にそんなシナリオが起こるの?」ということを検証する必要があるでしょう。

いまEUの主要国の中で最もリスクが高いのはスペインだと思います。

スペインは公的債務がGDPに占める割合という観点からすると欧州各国の中で最も低い部類に入り、一見すると問題ないように見えます。

しかしそれは間違いです。


なぜなら民間部門をも含んだ合計の債務はGDPの270%にのぼっているからです。

しかもスペインは巨大な不動産開発バブルを経験し、建設途中で頓挫したり、完成しても入居者の居ないコンドミニアムや住宅が沢山あります。

これらの物件がゴーストタウンを形成しているのです。

建設ローンが払えなくなった業者の物件は主に中小の貯蓄組合のような零細な金融機関にオーナーシップが手替わりしています。しかしマーケットの実勢価格を反映した適切な「値洗い(Mark-to-market)」は多くの場合、実施されていません。

スペインはブームの最盛期には就業人口の2人に1人がなんらかのカタチで不動産に関連する仕事(工務店、不動産ブローカーなど)に就いていたと言われます。この仕事がパッタリと止まっているわけですから、次の職探しをしようにも勤め先などあるわけがありません。

このためスペインの失業率は既に20%を超えているし、若者の失業率は40%を超えています。

一流大学を出ているとか、そういう学歴をしても就職活動には全く役に立ちません。このためスペインで最もエリートの大学を出た若者は海外に脱出しています。(EUは域内であればどの国で就職しても良いです。)

スペインの建設セクター以外の業種があぶれた人材を採用出来ない理由はスペインの雇用市場がとても硬直的なことによります。一度雇ったら、なかなか首に出来ないのです。

しかも2年働くと、後の2年は給料の70%の失業保険が支給されます。

このため失業保険の負担もすごく大きいのです。

スペイン政府はこの苦境を乗り切るために景気刺激をすべきなのか、あるいは緊縮財政を敷くべきなのかいまひとつ腹が据わっていません。政治的コンセンサスが無いのです。だから今回のように8年ぶりのゼネストになったりするとすぐ信念が揺らぐわけです。