ミニシリーズスペインでは失業率が20%を超えています。また若者の失業率は40%を超えています。

なぜスペインではこのように特に若者の失業率が高いのでしょうか?

その説明に入る前に、そもそもスペインでは昔から労働市場のボラティリティーが高かったことを断わっておきます。つまり不景気になると大量の失業者が出るし、好景気には失業率が急速に改善するという傾向があるのです。

ですから20%を超える失業率というのは過去にも存在しました。

さて、一般に不景気になると企業は労働者を解雇するか、それとも賃金を減らしたり労働時間を短縮したりする方法で難局を切り抜けようとします。

雇用市場が流動的な土地(例えば香港)では企業は景気が良くなればどんどん新規採用を増やすし、逆に不景気になると片っ端から解雇します。


しかし国によっては法律や習慣から解雇がカンタンではないところもあります。

これまでイギリス、オランダ、ドイツなどの欧州各国はどちらかといえば硬直的な雇用制度でしたが近年、雇用制度がかなり柔軟的になりました。

この結果、たとえばドイツでは景気が悪くなると見るや経営者は相次いでフレックス・タイム制度を導入し、時短をすることで人件費を抑えたのです。

また英国、ドイツ、フランスなどで行われた失業保険制度の改革も採用の際に企業側が「清水の舞台から飛び降りるような」悲壮な決心をしなくても気軽に新規採用することを可能にしました。

だからこそ今回の不況では鉱工業生産で見るとこれらの国の経済活動はかなり落ち込んでいるのに、失業率の増加はマイルドだったのです。
失業率

翻ってスペインを見ると雇用法が雇い主にとってとても柔軟性に欠けるものとなっています。

このため雇い主は正社員での採用をやめてしまって、もっぱらテンポラリー(=派遣に代表される臨時雇い)ばかりに依存する体質が出来あがっています。

臨時雇いばかりに依存する構造になっているのでチョッと景気がわるくなるとどんどん切れるわけです。これがスペインの労働市場のボラティリティーの増加に大いに寄与しているのです。

しかし臨時雇いは福利厚生や年金などいろいろな面で不利です。

一度テンポラリー・ワーカーが職を失ってしまうと次の職にありつけるまで生活を維持することが出来ません。

このためスペインの若者の実に3分の2が両親と同居しています。両親はリタイアした後でも年金などで喰えるので、それをアテにしているわけです。

年老いた年金生活者に家族全員がぶらさがっている、、、そういう光景がスペインでは珍しくないのです。

スペインのニート達は自分の町にはもう全く働き口が無いと知っていても、両親に経済的に依存しているため職のある他の町へ移り住むことが出来ません。

前回書いたようにスペインの若者でモビリティー(移動能力)のあるのは超一流の大学を出たエリートだけで、彼らは判で押したように外国に働き口を求めるのです。こうしてスペインではブレイン・ドレイン(頭脳流失)が起きているのです。

正社員と派遣社員との間で雇用制度の隔たりが余りに大きすぎるにもかかわらず既得権益を守り抜くことしか考えていない労働組合は現状を打破するための政治的コンセンサスを醸成しようとするビジョンに欠けています。

不動産バブル時代にスペインの若者がどんどん高校をドロップアウトし建設現場の作業員になったのは「手に職をつけた方が勝ちだ」という打算があったからだと言われています。それらの建設現場の仕事の大半はテンポラリーな雇用形態であったことは言うまでもありません。

いまバブルがはじけて新しい住宅建設がパッタリと止まっているわけですから、煉瓦積みや左官のスキルを持っている若者でもぜんぜん職が無いのは想像に難くないと思います。

またそういう高校中退者(スペインではセカンダリー・エデュケーションの中退比率は33%)はハイテクその他のイノベーションを必要とする産業にはミスマッチした人材です。



【ひとくちコマーシャル】
ミニ・シリーズユーロ存亡の危機での議論は今後のユーロやドルの展開にもかなり影響してくる問題だと思いますので来週のCMCのセミナーでも解説するつもりです。