雑誌、『タイム』で北京特派員兼アジア局長ハンナ・ビーチは「新しい冷戦が始まった」と宣言しました。
日本はどうすれば良いのでしょうか?
「MarketHack」は投資に関するブログであり、イデオロギーはありません。どこの国の肩も持たないし、apolitical(政治に関心が無いこと=ノンポリ)な立場を貫かないと合理的な投資は出来ないと日頃から考えています。また日本はどうあるべきかに関する意見もありません。
従って皆さんがこの問題を考える上で分析のガイドラインになるデータと歴史的ビヘイビア(historical behavior)の指摘がこの記事の目指すところになります。
日本はどうすれば良いのでしょうか?
「MarketHack」は投資に関するブログであり、イデオロギーはありません。どこの国の肩も持たないし、apolitical(政治に関心が無いこと=ノンポリ)な立場を貫かないと合理的な投資は出来ないと日頃から考えています。また日本はどうあるべきかに関する意見もありません。
従って皆さんがこの問題を考える上で分析のガイドラインになるデータと歴史的ビヘイビア(historical behavior)の指摘がこの記事の目指すところになります。
先ず中国の脅威はどの程度のものなのでしょうか?
下のグラフはストックホルム国際平和研究所による世界各国の軍事支出の統計です。

これを見ると米国がずば抜けて高いことがわかります。
ただ軍事費はミリタリー・ハードウエア(=武器)の値段だけでなく軍人さんのお給料や恩給などその国の給与水準や医療費などに影響される部分もあります。
そういう点を差し引いてもアメリカの軍事費は突出していることがわかります。
もうひとつ考慮に入れなければいけない点は「いま戦争を戦っているか?」という点です。実際に作戦が行われていると支出はどんどん増えるからです。
アメリカの場合、イラク戦争からアフガニスタンへと高水準の支出を強いられるイベントが続いています。
つまり軍事費には平時と有事ではエラスティシティー(伸縮性)があるということです。
そこで2000年から2009年の軍事費の変化率も見てみる事にします。

米国の軍事費がかなり伸びていることがわかります。また英国も米国に賛同してアフガニスタンなどに派兵しているので軍事費は伸びています。
ロシアはこの統計の算出の起点になった2000年頃は財政的に苦しかったと思いますので統計的にはノイズを含んでいると考えて良いでしょう。
それにしても目を惹くのが中国の軍事支出の伸びです。
ここまでの話をまとめるとペンタゴンなどが中国の台頭に警鐘を鳴らしている理由は現在の中国の累積的な軍事力を脅威に感じているというよりは足下の軍事費ならび軍備の成長率の高さに脅威を感じているというのが実情ではないかと思います。
さて、最初のグラフに戻ると日本の軍事費は世界で7番目ですが国防費の伸び率はマイナスになっています。つまり今後数年で9位くらいに落ちると考えるのが自然でしょう。
別の角度から軍事費を見ます。いまGDPに対する軍事費という視点では日本の場合、0.9%で、これは世界で最も軍事費の多い主要30カ国中では最下位ですし、世界全部に対象を広げてもかなり最下位に近い数字です。(=小国になるとベースになるGDP自体が小さいので数字のばらつきが大きくなります。また軍隊を持たない国もあります。だから世界全体で何位という議論は余り意味がありません。あくまでも主要30カ国程度での議論が意味を持つと思います。)

日本の軍事費の対GDP比率が異常に低いのは日米安保条約により日本はアメリカの庇護の下で経済発展を遂げたことと関係していると思います。
最初に掲げたハンナ・ビーチの記事にも出てきますが尖閣諸島の問題は明らかに日米安保条約第5条によってカバーされている類の問題であり、日本はアメリカの支援を要求する権利がありますしアメリカは日本を保護する義務があります。(ヒラリー・クリントン国務長官はその適合性を即座に認めています。)
さて、以上が巨視的に見た新冷戦時代のきわめて乱暴なアウトラインです。
そこで日本は幾つかの決断をしなければいけないと推察されます。
まず近年、日本では在日米軍の基地問題というのがありました。米軍は居てほしくないという主張だと思います。
今回、尖閣問題などでアジアの緊張が考えていたより深刻な問題だということがわかったわけですが日本はそれでも米軍に出て行って欲しいと思うのか、その立場をハッキリする必要があると思います。
僕は米軍は出てゆくべきだという主張もわかるし、そういう立場があっても良いのではないかと思います。その一方で、若し、そうするのなら自分の国は自分で守らないといけなくなるのでそれは国防費の増加を意味するということも避けて通れない問題です。
その場合、長年、アンダー・ファンデッド(予算が過小に振り向けられてきたこと)されてきた自衛隊が独力で外国の脅威から日本を有効に守れる包括的なディフェンス・プログラムが予算的に実現可能なのか?という疑問が湧きます。(僕は軍事専門家ではないのでこのへんのことはノー・アイデアです。)
また今の日本は上で見たように国防費を世界で最もつかわない国であるにもかかわらず、国家の財政は不健全であり経済は沈滞しています。すると今後軍備を増強すると社会福祉や教育など他の公的な支出にいっそうしわ寄せがくると考えるのが自然でしょう。(これで苦しんでいる国の典型がギリシャです。)
すると「今後もアメリカの庇護の下で中国からの脅威を守ってもらう」という主張も一理あるなと思ってしまうわけです。
その場合、最初に心配になるのは「アメリカにはしごを外されないかな?」という不安です。
日本では「安全保障の面で日本はアメリカにタダ乗りしている」という議論があるようですが、アメリカでは不思議と「日本タダ乗り論」は殆ど耳にしません。
それに日本はこんにちの平和を手に入れるために前の戦争で多大な犠牲を払っており、日本とアメリカの相互理解はそういう莫大なコストの上に築かれた信頼関係であり、日本の政治や経済のシステムは極論をすれば太平洋戦争が終わった時にアメリカから「移植された」価値観を体現していると言っても言い過ぎではないと思います。
マーシャル・プランによってアメリカがドイツならびにヨーロッパの復興を強力に指導、画策したのと同様、戦後日本のアジアにおける位置づけというのはアメリカが半世紀かけてはぐくんだシステムであり、それを改変するとなるとアメリカ側にもそれなりのコストが発生します。
イラク戦争の戦後処理ではアメリカはデモクラシーの擁立という錦の御旗を建てました。「日本の成功例を見よ!」という事でアメリカの戦後処理のロール・モデルとして日本の復興がポスターチャイルドの役割を果たしているのです。そういう行きがかり上、数少ない(?)成功例である日本をアメリカが簡単に見捨てるとも思われません。
またアメリカ人は「デモクラシーの擁護」という言葉にすごく弱いです。だから日本も将来、近隣の外国からの脅威に晒されたら、「デモクラシーを守ってくれ!」と叫べば良いのです。そういう「釣り」にはすぐ反応してしまうのがアメリカ人なのです。
下のグラフはストックホルム国際平和研究所による世界各国の軍事支出の統計です。

これを見ると米国がずば抜けて高いことがわかります。
ただ軍事費はミリタリー・ハードウエア(=武器)の値段だけでなく軍人さんのお給料や恩給などその国の給与水準や医療費などに影響される部分もあります。
そういう点を差し引いてもアメリカの軍事費は突出していることがわかります。
もうひとつ考慮に入れなければいけない点は「いま戦争を戦っているか?」という点です。実際に作戦が行われていると支出はどんどん増えるからです。
アメリカの場合、イラク戦争からアフガニスタンへと高水準の支出を強いられるイベントが続いています。
つまり軍事費には平時と有事ではエラスティシティー(伸縮性)があるということです。
そこで2000年から2009年の軍事費の変化率も見てみる事にします。

米国の軍事費がかなり伸びていることがわかります。また英国も米国に賛同してアフガニスタンなどに派兵しているので軍事費は伸びています。
ロシアはこの統計の算出の起点になった2000年頃は財政的に苦しかったと思いますので統計的にはノイズを含んでいると考えて良いでしょう。
それにしても目を惹くのが中国の軍事支出の伸びです。
ここまでの話をまとめるとペンタゴンなどが中国の台頭に警鐘を鳴らしている理由は現在の中国の累積的な軍事力を脅威に感じているというよりは足下の軍事費ならび軍備の成長率の高さに脅威を感じているというのが実情ではないかと思います。
さて、最初のグラフに戻ると日本の軍事費は世界で7番目ですが国防費の伸び率はマイナスになっています。つまり今後数年で9位くらいに落ちると考えるのが自然でしょう。
別の角度から軍事費を見ます。いまGDPに対する軍事費という視点では日本の場合、0.9%で、これは世界で最も軍事費の多い主要30カ国中では最下位ですし、世界全部に対象を広げてもかなり最下位に近い数字です。(=小国になるとベースになるGDP自体が小さいので数字のばらつきが大きくなります。また軍隊を持たない国もあります。だから世界全体で何位という議論は余り意味がありません。あくまでも主要30カ国程度での議論が意味を持つと思います。)

日本の軍事費の対GDP比率が異常に低いのは日米安保条約により日本はアメリカの庇護の下で経済発展を遂げたことと関係していると思います。
最初に掲げたハンナ・ビーチの記事にも出てきますが尖閣諸島の問題は明らかに日米安保条約第5条によってカバーされている類の問題であり、日本はアメリカの支援を要求する権利がありますしアメリカは日本を保護する義務があります。(ヒラリー・クリントン国務長官はその適合性を即座に認めています。)
さて、以上が巨視的に見た新冷戦時代のきわめて乱暴なアウトラインです。
そこで日本は幾つかの決断をしなければいけないと推察されます。
まず近年、日本では在日米軍の基地問題というのがありました。米軍は居てほしくないという主張だと思います。
今回、尖閣問題などでアジアの緊張が考えていたより深刻な問題だということがわかったわけですが日本はそれでも米軍に出て行って欲しいと思うのか、その立場をハッキリする必要があると思います。
僕は米軍は出てゆくべきだという主張もわかるし、そういう立場があっても良いのではないかと思います。その一方で、若し、そうするのなら自分の国は自分で守らないといけなくなるのでそれは国防費の増加を意味するということも避けて通れない問題です。
その場合、長年、アンダー・ファンデッド(予算が過小に振り向けられてきたこと)されてきた自衛隊が独力で外国の脅威から日本を有効に守れる包括的なディフェンス・プログラムが予算的に実現可能なのか?という疑問が湧きます。(僕は軍事専門家ではないのでこのへんのことはノー・アイデアです。)
また今の日本は上で見たように国防費を世界で最もつかわない国であるにもかかわらず、国家の財政は不健全であり経済は沈滞しています。すると今後軍備を増強すると社会福祉や教育など他の公的な支出にいっそうしわ寄せがくると考えるのが自然でしょう。(これで苦しんでいる国の典型がギリシャです。)
すると「今後もアメリカの庇護の下で中国からの脅威を守ってもらう」という主張も一理あるなと思ってしまうわけです。
その場合、最初に心配になるのは「アメリカにはしごを外されないかな?」という不安です。
日本では「安全保障の面で日本はアメリカにタダ乗りしている」という議論があるようですが、アメリカでは不思議と「日本タダ乗り論」は殆ど耳にしません。
それに日本はこんにちの平和を手に入れるために前の戦争で多大な犠牲を払っており、日本とアメリカの相互理解はそういう莫大なコストの上に築かれた信頼関係であり、日本の政治や経済のシステムは極論をすれば太平洋戦争が終わった時にアメリカから「移植された」価値観を体現していると言っても言い過ぎではないと思います。
マーシャル・プランによってアメリカがドイツならびにヨーロッパの復興を強力に指導、画策したのと同様、戦後日本のアジアにおける位置づけというのはアメリカが半世紀かけてはぐくんだシステムであり、それを改変するとなるとアメリカ側にもそれなりのコストが発生します。
イラク戦争の戦後処理ではアメリカはデモクラシーの擁立という錦の御旗を建てました。「日本の成功例を見よ!」という事でアメリカの戦後処理のロール・モデルとして日本の復興がポスターチャイルドの役割を果たしているのです。そういう行きがかり上、数少ない(?)成功例である日本をアメリカが簡単に見捨てるとも思われません。
またアメリカ人は「デモクラシーの擁護」という言葉にすごく弱いです。だから日本も将来、近隣の外国からの脅威に晒されたら、「デモクラシーを守ってくれ!」と叫べば良いのです。そういう「釣り」にはすぐ反応してしまうのがアメリカ人なのです。