中国とスペインを一緒にすると読者の皆さんから袋叩きにされるかも知れませんが批判を受ける事覚悟で書きます。

ある面、中国経済とスペイン経済は共通する点があります。

どこが似ているか?というと:

「箱モノは作れば作るほど限界的なリターンは漸減する」

という当たり前の経済原則を頭から無視している点です。

そして箱モノが次々に完成することを「経済成長」だと勘違いする風潮がはびこっている点です。

僕は別にマンションや工場を建設することが悪いことだと主張しているのではありません。ただそうやって作られたマンションや工場は投資リターンを生まなければいけないと指摘したいだけです。

リーマン・ショックが世界の金融市場を揺るがした時、中国政府は財投重視の財政出動をかけて腕力で成長を維持しました。

大部分のマーケット・ウォッチャーは「これが中国の実力だっ!」とその政策を称賛しました。

でも僕には少しわだかまるものがありました。

なるほど目先の景気を下支えするには建設プロジェクトはお手軽だけど、それは中国がこれから行っていかなければいけない経済のソフト化、サービス化の必要性とは完全に逆行しているのです。

箱モノは資本集約的なので先行して投資した資金をキャッシュフローによって回収しなければいけません。しかし一般的に言ってこれらの最近追加されたキャパシティから生まれるキャッシュフローにはお寒いものがあります。

より多くの箱モノが同じテナントや海外の輸出先の顧客を奪い合っているわけですから競争はどんどん激化し、箱モノの投資リターンは漸減します。いや、実際にはある時点で箱モノは入居者が居なくてガラガラだったり、設備のロードファクターが一度もブレークイーブン(採算水準を超える事)なく廃棄されたりするケースも出てくると思います。

そうなると投資したお金はドブに捨てたのと同じですからこれは経済成長なのではなくて資本破壊(destruction of capital)に他ならないのです。

でも世の中には(投資の世界に住んでいる人にも)GDP成長=富の創造だと錯覚している人がきわめて多いです。

そこで登場するのがスペインです。


スペインのGDP成長率はリーマン・ショックが来るまではコンスタントにドイツより高かったです。
スペインGDP

なぜならスペイン一国でドイツとフランスを合計したのより多い新築住宅を毎年建設したからです。

建設バブルが進行している間じゅう、スペインは豊かになっていると人々は錯覚しました。

でも今は野晒しになった建設途中のマンションの廃墟が林立しているし、誇らしくソーラー・パネルを屋根に張り巡らせた住宅地はゴーストタウンになっています。

市役所は舗道の整備や電気工事など通常のメンテナンスのために雇った電工会社や施工会社への支払いをもう2年近くも踏み倒したままです。

いかがわしい開発業者に代金を踏み倒されるのならともかく、お役所に代金を踏み倒されたのでは業者は立つ瀬がないですよね?

でもこれがスペインの実態なのです。

しかもこれからIMFなどの要求に応じてスペインは緊縮財政を一層強いられるわけですから、代金回収の目途などつくわけありません。

地方政府は不動産取引が成立したときの不動産税が重要な歳入源だったので家が売れなくなると途端に財政破綻に瀕したのです。

だから林立する高層ビルを見たならば、それが繁栄のしるしなのではなく「資本の墓場」の墓石ではないか?と一応疑ってかかることが賢明な投資家のやるべきことなのです。

中国経済は2000年以降、年率平均10%のGDP成長をクリアしてきました。

しかしひとつ前の沢利之さんのエントリーにもあるように雇用の創出という点では意外に苦しんでいるのです。しかも高い教育を受けた若者の就職先が少なく、手に職をつけた、所謂、職人さんの方が求人が多いというのはスペインが経験したのと全く同じ現象です。

因みに2000年以降、中国での雇用は年率0.5%でしか増えていません。

中国では好景気の割には就職が難しいし、社会保障制度の整備が遅れているので貯蓄性向が高く、裏を返せば消費は貧弱です。果たして内需だけで本当に中国の経済がうまく回っていくのか注目したいと思います。

それから今年になって政府が銀行に対しLGFV(地方政府が不動産開発のために設立するダミー会社)への融資残高をちゃんと銀行本体の帳簿に記載せよと指示しました。

これは良いことです。

これにより過剰融資による資本の破壊の全貌が明らかになろうとしているのです。