たまたまTwitterで次のようなコメントを目撃したのでチョッとシリコンバレーについて書きます。

【以下引用】
シリコンバレーっていい大学がたくさんあって、世界中からやってきた優秀な卒業生がたまたま住んでるところで起業するだけであって、あんな家賃も人件費も税金も高いところにわざわざいって起業するのはただの馬鹿だね。
【引用おわり】

別にこれをつぶやいた人を筆誅するのが目的ではないし、そもそも誰だか知らないので、他人の上げ足とりのようなリンクを張る必要もないと感じますが、上のコメントにはシリコンバレーに対する無理解が凝集されているのでその例として引用させて頂きました。

Twitterの創業者、エヴァン・ウイリアムズがネブラスカの田舎からシリコンバレーに出てきたのは『WIRED』という雑誌をむさぼり読んで:

California loomed in his imagination as a place where he could truly carve out his own niche as an entrepreneur. (カリフォルニアでこそ、自分の起業家としての居場所をみつけることができるのではないかと夢想した)
ニューヨーク・タイムズからの引用

からです。

それでもエヴァンは最初はシリコンバレーの中で職を見つけることは出来ず、ソノマ郡のセバストポルにあるオライリーという教育・IT出版のメディア会社に就職します。


彼はそこでは満足できずガールフレンドと会社を興します。そこで偶然にはじめたサービスがBloggerなのです。

Bloggerは後にグーグルに買収され、エヴァンはグーグルを辞めて再び独立します。オデオという会社なのですがなかなか芽が出ず、「なんでもいいから面白いサイドプロジェクトのアイデアを出してくれ」と社員に聞き回ったときジャック・ドーシーが出してきたアイデアが「誰宛てともなくテキスト・メッセージを発するシステム」、つまりTwitterだったのです。

Facebookのマーク・ザッカーバーグはハーバード大学のあるボストンでFacebookを立ち上げたわけですけど、カリフォルニアに出かけてみようと思った動機を次のように語っています:

Palo Alto was kind of like this mythical place where all the techs used to come from. So, I was like, I want to check that out.
(パロアルトは全てのテクノロジーの発明の発祥の地でなにかこう神秘的な場所のように思えた。それで、よし、この目でたしかめてやろう!と思って行く決心をしたのさ。)

つまり税金の「ぜ」の字も出てこないわけです。

彼らはなぜシリコンバレーをめざしたか?

それはひとことで言えば「若き血潮」です。

なお、これは余計な事ですけど、ついでに言えば打算なしで「チャレンジせずには、いられない」という心意気は計算高いインベストメント・バンクに勤める社員にだってちゃんとあります。

マイケル・ルイスという人の書いた『ライアーズ・ポーカー』という絶頂期のソロモン・ブラザーズを題材とした本がありますけど、その中で新入社員の配属先が言い渡される場面が出てきます。

誰もが本店の「ワン・ニューヨーク・プラザ」と呼ばれるマンハッタンの南端のフェリー着き場の横にある黒いソロモンのビルの2階分をぶちぬいた債券のトレーディング・ルームに配属されることを切望しました。

逆にいちばん嫌な、「島送り」に類する配属はEquity in Dallas、つまりダラス支店株式部付になることです。

投資銀行のニューヨーク本店と、たとえば東京支店では月とスッポンくらいの違いがあります。東京に配置転換されるということは「出世街道を外れた」ということを意味します。

「理由なんか無い。ニューヨークじゃないと嫌だっ!」

そういう若者が激突する場所だからこそ、自分も腕まくりして乱闘に加わる価値があるのです。