WTI(West Texas Intermediates)原油価格が、所謂、「カップ&ハンドル」の「柄の部分」を完成しつつあります。これを上に抜ければ相当提灯が乗ると思います。
wti

なぜなら原油はいろいろなコモディティの中で出遅れ感が強いからです。

因みに他のコモディティは既に先駆けしています。下は農産物の指数(GSCI Ag Index)です。
Ags

農産物は穀物エレベーターを所有していないかぎり長期のポジションを持てないので、実需と投機を比べると株価指数などよりずっと実需のプレーヤーが多いです。それを反映して価格も普通、綺麗なコンタンゴを見せています。


何が言いたいか?といえば玄人筋はインフレに対する準備をしているということです。

昨日、オーストラリア中銀がサプライズの利上げをしました。

インド準備銀行も利上げを発表しています。

つまり世界の中には日本やアメリカのようにいまだに緩和云々と言っている国がある一方で、よそをみれば懸命にインフレ退治にかかっている国もあるということなのです。

いま各国のインフレと政策金利の位置関係を整理しておくと、それは下のグラフのようになります。
inflation and rates

それぞれの国の青(インフレ率)と赤(政策金利)をじっくり見比べて欲しいのです。

例えば米国の場合、政策金利よりインフレ率の方が高くなっています。このような状態を「実質金利はマイナスである」と形容します。

この場合、銀行にお金を預けておいても世間のインフレの方が高いわけですから生活実感としてお金は目減りします。

逆に言えば「銀行に預金なんかしていても、いいこと無いよ。使っちゃいなよ!」ということを中央銀行がそそのかしているわけです。

その横の英国もそういう意味では実質マイナス金利です。

一方、日本はデフレ(=物価が下がる現象)ですので仮に金利をゼロとしても(=今、そうなっています)まだ「きつめ」なのです。

今度は上のグラフの右半分の方に移って各国のインフレ率と政策金利を見比べて下さい。

オーストラリアやブラジルは政策金利がインフレ率より高いですね。

特にブラジルはインフレ率に対して政策金利がめちゃんこ高いことがわかると思います。(僕がBCB=ブラジル中銀おそるべし!と日頃からくちをすっぱくして言っている理由はここにあります。)

世界の中央銀行の中でブラジル中銀だけがahead of the curveでチェス・ゲームの2手も3手も先を読んでいるわけです。

そこへゆくとインド準備銀行は後手後手に回っています。

だから今頃、慌てて利上げしているわけ。

そもそもインド準備銀行は「穀物価格はいずれ下がる」とはじめから決め付けてインフレを放置しました。これは根拠もなく物価が下がる方へ賭けたという意味でスペキュレーション(投機)をしている事に他ならないのです。

中国の場合、貸付金利(5.56%)と預金金利(2.5%)がものすごく開いてしまっています。ここでは貸付金利がグラフに描かれています。

でも預金金利の2.5%と比べるとインフレ率(3.6%)の方が高いので、銀行にお金を預けておくと馬鹿を見る構造になっていることがおわかり頂けると思います。

したがってこのケースも「未だ利上げが足らない」と言えると思うのです。

さて、世界の資本市場の大きさから言えば米国や欧州の方が遥かに大きいわけだから、そこで「実質マイナス金利」にしてインフレを誘発するようなことを続けていると、その余った流動性は新興国にどうしても流れるわけです。

新興国の人たちの家計をみるとエンゲル係数は一般に高いです。これは食費が家計全体に占める割合が高いことを意味します。

だからこれらの地域に住む人たちはインフレに対して特に弱い、「インフレ弱者」の立場にあるわけです。

世界の人口の中でそういうインフレの脅威と背中合わせで暮らしている人々がどれだけ多いかは、下のグラフを見てもらえばわかります。
pops