ダブリン・ユニバーシティ・カレッジのモルガン・ケリー教授が今日のアイリッシュ・タイムズにセンセーショナルな投稿をして、それがFXのマーケットで話題になっています。

たいへん長文の投稿なのですが一番重要な部分だけを乱暴に抄訳します。(以下抄訳)

9月に550億ユーロ相当のアイルランドの銀行債が償還を迎えた時、欧州中央銀行(ECB)が支援することによってこれらの銀行債は無事償還を迎え、アイルランド銀行債に投資していた英国、ドイツ、フランスなどの機関投資家は満額を受け取った。

1971年のアイルランド中央銀行法では銀行経営の健全性に関し正しい情報を隠匿した銀行は政府保証を引き揚げることができるという規定がある。その場合、英国が定めた銀行破たん処理制度(Bank Resolution Regime)とおなじような手続き、つまり債務の株式転換を行うことで一挙に取り付け騒ぎを解決することができた。


しかし今回は中途半端なかたちで550億ユーロの銀行債の償還を済ませてしまったので、ボンド・ホールダー、つまり英国、ドイツ、フランスなどの機関投資家と「痛み分け」するかたちで不健全な銀行を政府が接収し、病根を徹底的に加療するチャンスが失われた。

ECBの立場からすれば彼らが一番気にかけているのはドイツやフランスの銀行が潰れないことだ。だからかれらを危機に晒すまえに手を差し伸べたわけだ。

アイルランドの代議士たちは「よくチームの和を乱さず頑張ってくれた」とブリュッセルのお偉方からなでなでされていることだろう。

銀行を経営破たんに追い込んだ無能な経営者達はお咎めを受けることなくいままで通りの役職をキープできる。

しかしアイルランドの政府だけは話が別だ。

アイルランド政府は今後の銀行の損失に関し、無期限無制限のコミットメントを強いられたわけで、これは政府の財源の限界を遥かに超えたものだ。

それを説明しよう。

いまアイルランド政府はアングロ銀行に対し290から340億ユーロの支援を発表している。

これと同時に他の2行には合計160億ユーロの支援をしている。

さて、ここで考えてほしいのはAIB、バンク・オブ・アイルランド、アングロ銀行の3行の融資先リストは殆ど同じであるという事実だ。いまAIBとバンク・オブ・アイルランドはもともとアングロ銀行より自己資本比率が若干高かったという背景はあるものの、融資内容から吟味すれば最終的なAIBとバンク・オブ・アイルランドにおける損失はすくなくともアングロ銀行がこうむったものと同等だと思われる。

だから仮にアングロ銀行からの損失が300億ユーロだという現在皆に受け入れられている試算をそのままAIBとバンク・オブ・アイルランドにも当てはめれば、これらの銀行の救済コストも300億ユーロくらいに見積もるのが適切ではないだろうか?

より現実的な損失予想である700億ユーロという数字を想定した場合、向こう3年のアイルランド国民の血税は全てアングロ銀行の尻拭いで消えてしまい、さらにその後の2年の税金はすべてAIBの損失補てんに充てられる。そしてさらに1.5年後にようやく全ての処理が終わる計算になる。つまりアイルランドはすでに破たんしているのだ。

普通なら、とっくに銀行の葬式をあげていなければいけない筈なのに、そうなっていない理由はECBが「ギリシャ型の混乱」を防止するという目的で介入したからだ。

9月以降、アイルランド財務省にはECBの「オブザーバー」と称するお目付け役がオフィスの一角を占拠している。いうまでもなく、それらの監視官の多くは「ドイツ野郎」だ。

ECBが「ことを荒立ててはいけない」と特別配慮した結果、一見平穏に終わったように見える。

しかし危機の第二幕は悲劇だと思う。なぜなら今回はアイルランドが借金している先はECBということになるからだ。大手不動産開発業者と民間銀行との貸し借りの問題が、アイルランド国民と欧州政府との間の貸借関係に置き換わっている。