ボブ・ゼーリック世銀総裁が英国のフィナンシャル・タイムズに寄稿し、その中で新しい通貨体制を構築する提案をしました。

それによると「ドル、ユーロ、円、ポンド、人民元を巻き込んだ、新しいシステムが必要になる」とした上で、さらに「このシステムは将来のインフレ、デフレ、通貨変動に関する市場のエクスペクテーションを測るレファレンス・ポイントとして金を検討すべきだ」としました。

ゼーリックが金本位制度を提唱しているのかどうかは、上の文章からは判然としません。

しかしそんな事にはお構いなく市場参加者はこれを「金本位制度への回帰の提案だ」と解釈し、金価格を1400ドルまで押し上げました。



カリフォルニア大学バークレーの教授、ブラッド・デロングは「ゼーリックはこの世でいちばんアホだ」とコケコケにけなしました。

さらにポール・クルーグマンも「この世でいちばんアホという表現は親切すぎる」とゼーリックを攻撃しています。

金本位制度というのは中央銀行がお金を刷る際の根拠として、一定のゴールドを準備として中央銀行の金庫にしまい、その信用を背景に数量限定で紙幣を流通させる制度です。

だから金本位制度下では紙幣の価値は常に一定の交換比率でゴールドと同じになるのです。

これは安心感があります。

その一方で金本位制度の問題点もあります。それは不景気になったとき、景気テコ入れのための「通貨の膨張」がおこせないという点です。

また金本位制度下では或る国が大きな経常赤字を抱えていた場合、金が海外に流出してしまうことを意味します。

ときとき歴史の本などで「金解禁」という表現を見かけますが、ここでの「解禁」とは金輸出・輸入の解禁を意味します。

言い換えると金本位制度と金解禁は同じ通貨レジームに対する異なる呼称なのです。

さて、金本位制度が瓦解した例を具体的に示せば、1929年のNY株式市場大暴落の後、先ず1931年9月に英国がポンドを切り下げるとともに金の輸出を禁止(=実質的な金本位制離脱)しました。

これを見たスウェーデンなど欧州12カ国は直ちにこれに追従、金本位制度をやめました。

日本はそれに少し遅れて、12月に金本位制度を離脱しています。

各国は金本位制度を止めた後、故意に自国通貨を割安に導く、所謂、通貨戦争(*)へと入ってゆきます。

通貨戦争は具体的には:

1. 金融の緩和
2. 財政支出の膨張
3. インフレの容認
4. 輸出ダンピング
5. 広域経済圏の形成

などの方法により戦われます。

上に述べた1930年代に勃発した通貨戦争での圧倒的な勝利者は、実は日本国でした。

それについては長くなりますのでまた別の機会にでも。




(*)通貨戦争は今夜のCMC Markets Japan主催のウェブ・セミナーのテーマです。もう既に申込は〆切ったと思いますので見逃した方は次回は12月7日となります。