迷惑なルールです。

東京証券取引所は「企業が公募増資を発表した後に空売りすることで(ヘッジファンドなどが)利益を得る行為を規制したい」と発表しました。

しかしこの規制発表は東証の保身のためになされたことであり、追求をかわすための煙幕ではないでしょうか?

そもそも今回東証がこのような発表をするきっかけになったのは、このところ東京マーケットでは公募増資計画が増資発表前に市場にリークし、株価が急落するというケースが続出しているからです。

株価に甚大な影響を及ぼす材料を知りうる立場にいる内部者が、それを悪用して何らかのカタチで利益を得るのは立派なインサイダー取引です。公募増資の情報もそれが株価圧迫要因になるという意味ではインサイダー情報です。

増資を発表する会社の株が、発表前から片っ端から急落するということは、そのようなインサイダー取引が東京マーケットで野放しになっていることを示しているし、たぶん主幹事証券会社などの中に、そのような情報で私利を得ている人間が居るということです。

インサイダー取引を調査するにあたっては証券会社の引受部や企業・金融法人部、そして増資をする側の企業の財務部などを疑ってかかるべきでしょう。

でもこれだけインサイダー取引が相次いでいるのに、証券会社にお調べが入ったという話は聞かないし、誰かが検挙されたというニュースも見ません。

つまり東京マーケットの信頼を取り戻すという意味では、未だ実績らしい実績を挙げていないのです。

「どこかの証券会社の引受部長がしょっぴかれて豚箱の臭い飯を喰った」というようなニュースが出たのなら、個人投資家としても溜飲が下がります。

でもそういう内偵調査をしっかりすることもなく、今回のような「ピンボケ」の措置の発表でお茶を濁すというのは情けないですね。


もともと東京証券取引所の株主は日本の証券会社各社であり、取引所の立場では証券会社の杜撰さを追求しにくいということもあるでしょう。言い直せば「なあなあの関係」です。

さて、個人投資家としては増資発表前に情報がリークして株価がボコボコ下がるのはやりきれないと思っているのに対し、今回の措置は増資発表後に空売りを禁ずるという、漫才のような話です。

企業が増資すればそれだけ株式の供給が増えるので需給関係は崩れます。また発行される株式が新株であれば一株当たり利益などのレシオも悪化するわけだから、株価は下がるのが自然です。もろもろの事情を勘案して、あたらしい株価の「落ち着き処」を模索しなければいけません。これは英語で言うとprice finding mechanism、つまり価格発見メカニズムと呼ばれ、市場のもつ重要な機能です。

増資が発表されたら、その情報はおおやけの情報になるわけだから、それに基づいて合理的な行動をするのは違法ではありません

それを規制するって、、、一体、どういう事ですか?

それはつまり東証が自ら価格発見メカニズムという市場の持つ大事な機能を放棄することに他ならないのではないでしょうか?

このルールが導入されると調達市場としての株式市場の機能が一層低下するリスクがあります。

なぜなら、新株の供給が出ることにより新しい妥当価格が早急に「発見」できないような市場では、その新株の買い手が引いてしまって、売れ残りが出るリスクが出るからです。

誰だって、公募に応募し、値決めした後で更に株価が下がったら、気分が悪いでしょう?

価格発見メカニズムがちゃんと作動していないと、そういうことになりかねないのです。だからこそ公募発表後、値決め前の価格発見メカニズムというのは犯してはならない神聖なものなのです。