【鎖につながれる欧州】
この週末、ヨーロッパが紛糾しています。

その理由はEUがアイルランドに対して「据え膳」を喰う事を無理強いし、アイルランドがそれを拒んでいるからです。

この「据え膳」とは欧州金融安定化取極(EFSF)を指します。

EFSFは5月にユーロ危機が最高潮に達した際に欧州連合各国が打ち出した措置であり、ドイツ、フランスなどをはじめとするEU各国が特別目的会社のようなものに緊急のファンディングをプールする仕組みです。

資金繰り困難に陥っているアイルランドの銀行の借金の借り換えをEFSFが面倒を見るという話なのです。

(救ってくれるというのだから、いい話じゃないの?)

普通なら歓迎すべきところかも知れませんけど、話はそれほど単純ではないのです。

なぜならEFSFがアイルランドの銀行を救済するということは、すなわち借金の取り立て人がブリュッセルに移ることを意味し、本来、アイルランド国内の商業用不動産の焦げ付き問題であった今回のアイルランド危機が「国内問題」から「EUの問題」へと変質するからです。

「国民ひとりひとりの将来をブリュッセルの鎖につなぐわけにはゆかない」

EUからの「救済」の本当の意味を悟ったダブリン政府はEUからのプレッシャーに猛反発しはじめています。

ウォールストリート・ジャーナルは:

Ireland’s government remains reluctant to accept the loss of sovereignty.
(アイルランド政府は主権の喪失の事実を容認することに難色を示している)

と解説しています。



【国際協調は死んだ】
さて、先週のG20は前のエントリーでも書いたように完全に失敗しました。

これは1930年代にも起こったことであり、その意味では不幸な歴史が繰り返しているわけです。

とりわけ象徴的だったのはこのG20と並行して行われていた米国と韓国の二国間自由貿易協定も同時に流産した点です。

つまり世界は国際協調を謳いながら足並みはここへきてすごく乱れ始めているということなのです。

【搾取の対象としての周辺国】
1930年代の場合、このような協力の破綻は経済のブロック化、つまり広域経済圏の確立に各国を駆り立てました。

広域経済圏とは英国を中心としたスターリング・ブロックとか、大東亜共栄圏などの概念を指します。

話をアイルランドに戻すと、アイルランドが主張していることは噛み砕いた言い方をすれば「EUで一致団結し、協力し合うと言うけれど、実際にはEUはドイツをはじめとした大国の道具と化している。ドイツは自国の製品を有利に売りさばくための市場として周辺国を捉えており、実際に太っているのはドイツだけだ」ということです。

これは言い換えればアイルランド、ギリシャ、スペインなどのEU周辺国の「植民地化」現象なわけです。

(いっそのことアイルランドの銀行を倒産させて、それらの国有化を通じてリストラした方が良いのではないか?)

そういう議論が再びアイルランド国内で出始めている理由はここにあるのです。



アイルランド危機に関する過去のエントリー