ここ数日の上海総合指数の下げは少し不気味です。

下げの理由は中国政府が更なる引き締め策を打ち出すという観測が出ているからですが今のところ発表はありません。

G20あたりを境にして大陸相場が変調してしまったように感じます。

一体、なにが変わったのでしょう?

ひとつには米国の追加的量的緩和政策が新興国にとってとんでもないリスクを孕んだ政策だという認識が関係者の間に広まっているという点が新しいです。

追加的量的緩和政策は米国の不動産市場の下落がデフレ・スパイラルを招くことを防ぐため、わざとインフレ圧力を創り出し、デフレに対抗するというアプローチです。

問題はインフレ圧力は商品価格などを通じて瞬時に世界に伝播するという点です。

つまりアメリカは世界の迷惑を顧みず、身勝手な金融政策を打ち出しているわけです。

G20の話し合いが不調に終わったということは「アメリカはわが道を行く」ということに他ならないわけで、手をこまねいていたら彼らに勝手な真似をされることは明らかです。

もうひとつ新しい認識が芽生え始めています。

それは「そんな身勝手な国の金利政策に、中国の金利政策をペグしておいて大丈夫なのか?」という悟りです。

人民元をドルにリンクさせるということは、金利政策をペグする相手国の金利政策にシンクロナイズ(同期)させることを意味します。

これが中国の預金金利が2.5%という極めて低い水準にとどまっている主因です。

或る意味で中国がこんにち経験している問題はアイルランドやスペインが経験した問題と全く同じです。


アイルランドやスペインはユーロという共通通貨が使われ始めたら、とたんに景気が良くなりました。経済成長率はドイツなどのユーロ圏の大国を常に遥かに上回りました。

これはなぜかというとユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)によって金利が一本化されているため、各国バラバラのインフレ事情やGDP成長率にもかかわらず、ユーロ圏でいちばん大国のドイツの都合によって決められていたからです。

するとアイルランドやスペインはすでに不動産ブームを抑えなければいけない局面に来ているにもかかわらず「金利政策の主権」が無かったがために、バブルの芽を早期に摘むことが出来なかったのです。

アイルランドは生産性の面、成長率の面、財政収支の面などあらゆる尺度で優等生でした。今の中国みたいなものです。でも不動産というものにこだわりの強い国民性だったので、誰もがマイホームの他に別荘や投資用のコンドミニアムなど、2件目、3件目を買い求めたのです。これが税収を見かけ上きわめて好調のように見せました。中国でもそれは同じ構造になっています。

不動産に対する執着という点でも中国人はアイルランド人に劣りません。いま中国でしきりに改変されている不動産にまつわる規制は、二軒目、三軒目の物件ですけど、これって、誰も不自然に感じないのですかね?

因みに僕は借家住まいです。だから持家はゼロ軒です。

普通ならマイホームは一軒というのが自然な感覚で、バケーション・ホームとか投資用物件とかそういう『金持ち父さん』的な事を言い始めた場所というのは、フロリダにしてもラスベガスにしてもスペインにしてもアイルランドしても、悉くバブルが弾けて悲惨な目に遭っているのです。

すでにインフレが中国で深刻な問題となっているのは明白です。

例えば深センより香港の方が野菜の値段が安いから買出しに行くとかというのがその例です。

あと住宅価格が庶民の手の届かないところまで騰がってしまったという点も問題です。

折角熾烈な受験戦争に勝ち抜いたのに、真面目に働いても都心から凄く遠いところにマイホームを持つことすらおぼつかないわけで、(これはいつか来た道)と思い当たるエピソードです。

大学出の高学歴な若者ほど就職が無く、建設業とかの手に職を持った人の方がジョブ・セキュリティが高いのもサンフランシスコで2007年頃に見られた現象と同じです。

要するに中国は長年の人民元ドル・ペグの「出口政策」をどう進めるかという大問題にいま直面しているのです。