米国のリテールFXブローカー、FXCM(ティッカー:FXCM、上場はNYSE)のIPOロードショウがキックオフしました。

幹事団はクレディスイス、JPモルガン、シティ、バークレイズ、ドイチェ、サンドラー・オニール、UBSです。

初値設定は13から15ドル、今回発行予定株数は1506万株です。

同社はリテールFXのブローカーとしては米国で上場される最初の企業となります。従って同社が上場されるとリテールFXという金融サービスのカテゴリーそのものが米国の一般投資家に注目される可能性がありまあす。

既にFXは世界のあらゆる金融商品の中で最も取引高の大きい市場になっています。

FX市場の1日平均出来高は4兆ドルもあります。

このうち貿易の決済などの実業に直接関連する為替取引を除き、所謂、トレーディングの部分だけを見ると1日平均出来高は3.5兆ドルということになります。

独立調査会社の予想ではFXの1日平均出来高は2020年までに10兆ドルになると予想されています。

リテールFXとはネット証券のような個人投資家向けのサービスのことを指します。

インターネットを通じて、トレーディング・プラットフォーム(取引画面)を提供することで簡単に為替取引をできるようにするわけです。

リテールFXはその概念が導入されてから未だ15年しか経っていません。

しかし市場は2年ごとに2倍になっています。このような拡大ペースは今後も続くと予想されます。
fxcm2

現在の競争地図ですが、主要なプレーヤーは以下のグラフのようになっています。
fxcm1

このうちFXCMとゲイン・キャピタルは米系、CMCマーケッツ、IG、サクソバンクは英国・欧州系です。



これらの企業は米国でのリーマン・ショックや日本の株式市場の長期低迷などのあらゆるマーケット・サイクルに関係なく成長してきました。

リテールFXはアメリトレードやチャールズ・シュワッブなどの所謂、ディスカウント・ブローカーのビジネスに似ている面もありますが、ファンダメンタルズ面で根本的に異なる個所も多いです。

たとえば顧客の平均取引回数は米国のディスカウント・ブローカーの場合、月2回ですが、リテールFXでは一日2回以上です。

またFXは真にグローバルなマーケットであり、顧客資産が米国に偏っているということはありません。

顧客のライフスタイルという面も重要です。

つまりサラリーマンは株式市場が開いている時間は自分も会社に行っているのでトレードに専念できません。これは日本だけの現象ではなく、これは世界のどこでも共通する問題です。

実際、米国に本社を置くFXCMの出来高の66%は9時~5時の就業時間以外から来ています。

つまり「帰宅後トレーダー」は世界的な流行なのです。

流行といえば、所謂、マクロ・トレーディングの人気が米国でも爆発しています。

マクロ・トレーディングとは個別の企業をバイ&ホールドするのではなく、経済指標などを見ながらFXや株価指数をトレードすることを指します。

マクロ・トレーディングが人気化している背景にはETFに代表される新しい商品の登場で以前より「指数を買う」ということが格段にカンタンになったことが関係しています。

個別銘柄が悪い決算を出して急落したり、ある日突然、商い停止や上場廃止になるリスクも無いわけです。

さらにFXのリサーチは株式のように証券会社の引受のビジネス等の隠れた利害相反がそもそも存在しないため、バイアスがありません。これもマクロ・トレーディングの人気を高める原因となっています。

さらに相場環境が悪い時は「売り」からでも入れるという点は見逃せないメリットです。

FXCMは1999年に創業された、業界では古株に属する企業です。

現在の顧客口座数は17.4万口座です。
fxcm6


顧客は184カ国にちらばっています。
fxcm3


現在の預かり資産は6.1億ドルです。
fxcm7


FXCMの顧客は一日平均2.5回、トレードします。

同社は所謂、エージェンシー(取り次ぎ)モデルで、自らマーケット・メーキングをしません。

執行は常に他のマーケット・メーカーへ注文をつなぐことで行っています。このため16のマーケット・メーカーが使用している13の異なったバックエンド・テクノロジーとインターフェースする必要があります。

リテールFXの顧客の立場からすると、ベストの執行システムを提供する、技術力のある会社が口座を開設したい企業となるわけです。

言い換えればエクセキューション(=注文執行)の速度やスプレッドを競うことになるわけです。

同社の売上高は次のような推移を示しています。
fxcm4


2008年はリーマン・ショックでFX市場のボラティリティーが急増し、売上高が急増しました。

今年は韓国、米国、日本で規制強化があり、レバレッジが下がったので売上高が影響を受けました。

さらに2009年と2010年はFX市場のボラティリティーが下がったことも売上高にネガティブな影響を与えました。

また利益(EBITDA)は次のようになっています。
fxcm5


10年ほど前まではリテールXの市場はあまり規制の対象になっていませんでした。しかし最近は世界的に規制がどんどん厳しくなっています。

これは既に確固とした地位を築いている企業が有利になることを示唆しています。

実際、米国でのFX会社数は2007年に43社あったものが、現在では11社まで淘汰が進んでいます。

言い換えればマーケットのパイそのものは急成長している中で競合会社数は急減しているのです。つまりM&Aが極めて盛んだということです。

FXCMはODLを買収し欧州に進出中です。

欧州はFX取引の出来高の50%を占めており、重要な市場です。

財務的な面でもFXCMのビジネスは魅力あるビジネス・モデルだと言えます。

先ず同社の場合、マーケット・メーキングをしていないのでポジション・リスクがありません。

バランスシート上に負債はありません。

またポジションを取らないのでボラティリティー・リスクもありません。

顧客の注文の50%は新興国から来ています。

マージンは高く、業容の拡張にあたって固定費が余り増えない、所謂、スケーラブルなビジネス・モデルになっています。

これまでに外部資本の導入は一切ありませんでした。

これは同社のビジネス・モデルの高収益体質をあらわしていると言えます。